YOSHIKIの持つ“二つの色”が混ざり合い“紫”に染まった夜ーーHYDEも登場したクラシック公演2日目

『YOSHIKI CLASSICAL 2018』第2夜レポ

 休憩を挟んだ2部は「AMETHYST」からスタート。X JAPANの「TEARS」やYOSHIKIが敬愛するチャイコフスキーの「SWAN LAKE」といった往年のクラシックの名曲も披露しつつ、MCで現在上映中の映画『ボヘミアン・ラプソディ』の話の流れから予定にはなかったQUEENの「BOHEMIAN RHAPSODY」を即席で披露し会場を沸かせる場面も見られた。

 「新曲やってみようかな」とYOSHIKIが鍵盤を弾き、真っ赤に染まったステージの袖から登場したのはこの日のスペシャルゲストであるHYDE(L’Arc~en~Ciel)。ひと際大きな歓声に迎えられ、今年YOSHIKI feat. HYDEとしてコラボレーションした「RED SWAN」をHYDEの伸びやかな歌声と共に披露した。演奏後にはHYDEが「YOSHIKIさんを独り占めさせていただきました」と惚気る場面もありつつ、「YOSHIKIさんの優しいオーラがありつつも独特の緊張感があって、(この緊張感は)長い音楽人生でもなかなかいただけないので光栄です」と感想を述べた。また、「RED SWAN」の感想を聞かれ「歌詞からYOSHIKIさんの意志や夢が伝わってきて、歌えば歌うほど深みが増して感動して泣きそうになる」と語り、会場からは拍手が送られた。さらに、コンサートの前日に発表された年末の『NHK紅白歌合戦』への出場のニュースについて、それぞれX JAPANとL’Arc~en~Cielとして出場経験があるにもかかわらずYOSHIKI feat. HYDEとして“初出場”と報道されたことにも触れ、YOSHIKIは当日、度胆を抜くと宣言。「また紅白歌合戦で」と挨拶を交わしHYDEはステージを後にした。

 前述したようにYOSHIKIの人生は波乱万丈であった。しかし、その間もファンに支えられて現在もこうして音楽を続けられていることに感謝の言葉を述べつつ、まだその癒えることのない心の傷口と向き合いながらこれからも生きていくと決意を話した。「愛しいX JAPANのメンバー、HIDE、TAIJI、そして僕にピアノを与えてくれた父に捧げようと思います」と演奏された「WITHOUT YOU」ではYOSHIKIの想いのこもった美しいピアノの調べと、映し出される懐かしい映像に思わず目頭が熱くなり、演奏するYOSHIKI自身も込み上げる何かを堪えているような姿が印象的だった。

「人はいつまで闘えばいいだろう、この闘いに終わりはあるのかと考えることがあります。そんなときにいつもファンのみんなが背中を押してくれる。自分に限らずみんなも常に日々いろんなことと闘っているんだと思う。たぶんきっと自分の使命を探すための旅が人生で、僕はその最期の瞬間まできっと闘い続けるんだと思います」

 ロサンゼルスに移住してから25年あまり、YOSHIKIは未だに闘いの毎日と語る。そしてこれからも癒えない心の傷と向き合いながら生きていくのだ。その彼の生き様はファンに勇気や希望を与えている。そして、この言葉はさらにこのように続く。

「みんなの夢を背負っている以上、みんなにもらった第二の人生、恩返しできるようにこれからも闘っていくので、そんな僕をこれからも応援してください」

 彼もまたファンに支えられ、生かされ第二の人生を生きている。YOSHIKIの恩返しとはそのもらった命を大切に、愛する人たちに寄り添い、その傷を癒し、生きる力を与えることなのではないかと感じた。また、命の大切さを身を以て知っているYOSHIKIだからこそ「昔は破滅の美学だったけど、今は継続の美学を貫きたいと思います」という言葉が自然と出たのだと納得した。

 そんな中、会場から「お誕生日おめでとう!」の声があがり、恥ずかしそうにしながらも「じゃあ弾いちゃおっか」と自らが「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」を弾き、会場の全員で歌うという場面も見られ、そんな一足早い誕生日プレゼントに対して「愛するみんなに感謝の気持ちを込めて」と贈られたのはラストナンバー「ENDLESS RAIN」。最後はYOSHIKIのピアノに合わせて大合唱が巻き起こり、大歓声の中コンサートは幕を閉じた。それでも鳴り止まない拍手とYOSHIKIを呼ぶ声に応えてカーテンコールではHYDEら出演者と登場し、お決まりの「We Are X!」の掛け声で会場を一つにした。

 ロックは人生の中で常に寄り添ってくれたもの、クラシックは身体に染み付いているもの――。これは冒頭の映像のインタビューでYOSHIKIが語っていた言葉である。ロックの持つ激しさの赤、クラシックの持つ静けさの青、その極端な二つの色を持ち合わせる彼の創る音楽はいつだって私たちの心に寄り添ってくれるものであると感じた。それはもちろんYOSHIKI本人の純粋で無垢な人間性と、様々な困難を乗り越えてきた彼だからこそ、痛みを知り、その傷ついた心に寄り添うことができるのだと筆者は思う。そのYOSHIKIの終わらない闘いを、使命を探すための人生という名の旅を、私たちは見守り、支え、共に生きていきたい。そう思えた、赤と青が混ざり合う紫に染まった夜だった。

■オザキケイト
平成元年生まれの音楽ライター。ヴィジュアル系を中心にライブレポートやコラムを執筆している。「Real Sound」や「ウレぴあ総研」、その他バンドのプレスリリースにも寄稿。
ツイッターアカウント:@lellarap__

■セットリスト
『YOSHIKI CLASSICAL 2018 ~紫に染まった夜~ YOSHIKI with Philharmonic Orchestra』
11月15日(木)東京国際フォーラム ホールA

ACT1
01.I’LL BE YOUR LOVE
02.THE LAST SONG
03.GOLDEN GLOBE THEME
04.HERO
05.LA VENUS
06.KISS THE SKY
07.FOREVER LOVE
08.MOONLIGHT SONATA
09.ANNIVERSARY

ACT2
01.AMETHYST
02.TEARS
03.MIRACLE
04.SWAN LAKE
05.BOHEMIAN RHAPSODY
06.RED SWAN
07.RIVER OH THE LIGHT
08.WITHOUT YOU
09.KURENAI
10.TRANSITION
11.ART OF LIFE
12.ENDLESS RAIN

YOSHIKI オフィシャルサイト

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