『アウトレイジ』『若おかみは小学生!』……鈴木慶一が手がける映画音楽の魅力
実験的な音作りと多彩なポップセンス。そして、アーティスティックな作家性と職人的な器用さを併せ持つ鈴木慶一。これまでエレクトロニックなサウンドが多かったが、最新作『若おかみは小学生!』(2018年)では生のストリングスを導入。鈴木らしいポップさも散りばめながら、叙情的な美しいメロディで物語を感動的に盛り上げている。泣かせる音楽も作れる引き出しの多さを見せて、ますます巨匠の風格が漂うなか、鈴木はロックミュージシャンとしても精力的に活動中。海外からの注目も高まるなか、新しい音楽に対して貪欲な鈴木が、これからどんな映画音楽を作り出していくのか楽しみだが、個人的にはデビッド・リンチとのコラボレートを妄想したりも。それは決してありえない話ではないだろう。巨匠にして未知数なのところも、鈴木の魅力なのだから。
■村尾泰郎(音楽/映画ライター)
1968年生まれ。音楽雑誌の編集者を経てフリーのライター/編集者に。音楽や映画に関する記事を中心に、雑誌、ライナーノーツ、映画のパンフレットなどに幅広く執筆している。