伊藤美来、“映画監督”としての優れた手腕を発揮 オリジナル曲のみで遂げた東京国際フォーラム公演

伊藤美来、“映画監督”としての優れた手腕

 伊藤美来が9月30日、東京国際フォーラム ホールCにて『伊藤美来 4th Live Miku's Adventures 2018 〜Live is Movie〜』を開催した。

 彼女は8月15日、4thシングル『恋はMovie』をリリースした。同作を携えた今回のライブコンセプトは、副題として掲げた「〜Live is Movie〜」のとおり、伊藤が“映画監督”としてステージを盛り上げるというものだ。そのセットリストはソロ活動史上初めて、彼女のオリジナル楽曲のみで構成。ライブ中盤のMCで語ったように、かねての願いをようやく叶える機会となった。また、昨年10月に開催した3rdライブにおいて主軸となった1stアルバム『水彩 ~aquaveil~』を解体/再構築し、パフォーマンスを通じて各楽曲に新たな解釈を付け加えるという意味でも、今回のステージは彼女にとって様々な挑戦に満ち溢れていた。

伊藤美来
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 ライブは、最新曲「恋はMovie」で幕を開けた。同楽曲のMVをレトロな色調にアレンジしたオープニング映像にあわせて、伊藤は“映画監督”をイメージしたという、ビビッドイエローのワンピースで登場。ステージ中央の監督椅子に座る彼女の姿は、可愛らしくもどこか貫禄がある。その光景の裏で、高らかに響くホーンも聴き心地よく、自然と表情を緩められた。

 MCでは、先述のライブコンセプトを明かしたのち、「それでは次の映画の世界へ……」と前フリ。かと思えば、「次の映画の前にやることがありました!」と、忘れかけていたことに気づく。すると、衣装アシスタントとメイクスタッフがステージに登場し、伊藤の衣装をその場で着せ替えていく。「映画がコンセプトじゃなかったら、こんな姿は見られないんだからね!」という彼女の言葉どおり、監督と女優を兼任しているからこそ、“舞台裏”の模様さえも覗かせてくれたのだろう。そんなファンを意識した振る舞いに、ただただ頭が下がるばかりだ。

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 白を基調とした衣装に一新し、まずは軽快なギターポップ「泡とベルベーヌ」を演奏。伊藤の歌声に、歌詞と同様のピュアネスを感じていると、「No Color」では少し大人な一面を見せる。そこから「守りたいもののために」では、愛する人を包む壮大な温もりを演出した。「泡とベルベーヌ」からここまで、次第に愛情が膨らむ様子を声優として表現したほか、「No Color」からはシティポップ調の楽曲を続けて披露。歌詞、サウンド、彼女の演技力を一連の流れで完璧なまでに提示したのは、今回のセットリストでも特に驚かされた部分だ。

 そこから披露したのは「あお信号」。彼女のソロ活動における想いを、初の作詞で表現した大切な楽曲だけに、まさかこんな序盤で聴けるとは思わなかった。「あお信号」には、楽曲の進行につれて、信号機の色が赤→黄→青と変化していく物語性があるためか、今回のステージでは、伊藤が下手から上手にゆっくりと一周。その途中にあるベンチに腰掛けたり、かすかな光の灯る街灯に寄りかかるなど、“映画的なワンシーン”を作り出していく。彼女のソロ活動への想いに焦点を当てつつも、ライブのコンセプトに合わせて楽曲の見せ方をアレンジしていたことに、その成長を伺うことができた。

 続いて、落ち着いたサウンドの「あの日の夢」と「Moonlight」を歌い終えたところで、ガーリーなエレクトロとシティポップ調のR&Bが調和を見せる「ルージュバック」を歌唱。そして、ブラスファンクのフロアアンセム「Shocking Blue」では、タイトなブルーの衣装を纏ってステージに。“キメ”の多いトラックで、客席の熱量を意のままに操る伊藤の姿は爽快の一言に尽きる。最後は力強いシャウトも響かせ、この日一番の盛り上がりを叩き出した。

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