伊藤美来、“映画監督”としての優れた手腕を発揮 オリジナル曲のみで遂げた東京国際フォーラム公演

伊藤美来、“映画監督”としての優れた手腕

 ライブ終盤には、ともに“未来”を歌う王道アイドルポップ「ミラクル」と、爽快なギターポップ「Morning Coffee」で、クライマックスへと弾みをつける。そして、前回のライブを経て、楽曲的文脈が一段と育まれた「ワタシイロ」を歌唱。“私色”を見つけたまっすぐな歌声からは、彼女に芽生えたシンガーとしての自覚と自信を感じられた(参考:伊藤美来、ソロ活動で築き上げた自分らしさ “私色”に染まったバースデー公演)。

 『水彩 ~aquaveil~』以後、伊藤は『恋はMovie』を含む2枚のシングルを発表してきた。過去のリリーススパンを鑑みるに、アーティストにとって“勝負の一枚”といわれる、2作目のアルバムリリースもそろそろ気になりはじめる頃合いだ。この日の「ワタシイロ」は、そんな次なる作品も意識されたためか、そこに至るまでの“中間報告”のようにも受け取ることができた。

 ラストナンバーに選ばれたのは、二度目の作詞に挑戦した「all yours」。その直前には、「私はずっとソロ(活動)といえば一人だと思っていたんですけど、本当にたくさんの方と一緒に、ここまで来れたんだなと。今日、本当は来たかったけど来れなかった方がいるんだろうなと思います。でも、私はいつまでもずっと、みんなの隣にいますから……」と力強いコメントを残した。この日は大型台風の影響により、やむなく参加を見合わせたファンもいたと聞く。伊藤の言葉は、そんなファンを優しく気に掛けると同時に、次のライブに向けて気を引き締める、彼女の強い意志を表明するようだった。

 映画をコンセプトに掲げた今回のライブだが、終盤は普段通りの彼女“らしさ”溢れるステージに切り替わっていた印象だ。最終パートにはどのような映画的な演出が設けられていたのかを考えていると、この日を締めくくるエンドロールが流れはじめる。ライブを支えたスタッフロールが流れたところで、映像の最後に映し出された文字は、「監督 伊藤美来」。ここで思い返されたのが、終盤に見た「ワタシイロ」だ。同楽曲では、ファンが色とりどりのサイリウムを照らし、伊藤は満面の笑みで応答。その光景は「〜Live is Movie〜」のタイトルにふさわしい、映画のワンシーンのようなものだった。もしこれが、彼女の意図した構図だとすれば、その手腕には脱帽せざるを得ない。そんな伊藤美来が次なる“アクション”を掛ける日が、心の底から待ち遠しい。

(取材・文=青木皓太)

■セットリスト
M1.恋はMovie
M2.七色Cookie
M3.泡とベルベーヌ
M4.No Color
M5.守りたいもののために
M6.あお信号
M7.あの日の夢
M8.Moonlight
M9.ルージュバック
M10.Shocking Blue
M11.ミラクル
M12.Morning Coffee
M13.ワタシイロ
M14.all yours

■関連リンク
伊藤美来 オフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる