新しい地図の原動力とは? 『NSTまつり2018』で語った1周年への思いとNAKAMAへの感謝

新しい地図『NSTまつり2018』に登場

「どんなきっかけでもいい!」2020年に向けて

 稲垣と草なぎが再びステージに戻ると、スペシャルゲストとしてパラリンピックのレジェンド、山本篤選手が登場。北京、リオパラリンピック走り幅跳び銀メダリスト、さらに平昌冬季パラリンピックにもスノーボードなど3種目出場を果たした山本選手は、プロのパラアスリートの道を開拓し続けている。道なき道を突き進むという意味では同じフロンティア精神を持つ3人と、息の合ったトークを展開。

 特に、朝日新聞パラリンピックスペシャルナビゲーターとして、平昌冬季パラリンピックを体験した香取は「自分もそんなふうに思ってなかったはずなのに……」と、パラスポーツに対してどこか過保護に見ていたところがあったようだと語る。世界では健常者のアスリートと変わらない厳しい目でパラアスリートも評価されている。そのなかで、素晴らしいプレーをした選手に大声援が贈られているのだと、経験を通じて得た新しい視点を披露した。

 さらに、「どんなきっかけでもいいからパラスポーツに興味を持ってもらって、そのうえで2020年を迎えてもらいたい」と熱弁。山本選手も「イケメンだったり、カワイイ選手だったり、義手や車いすなどを含めてファッションがオシャレだったり、そういうところからでもいいです。体験して“楽しかったな、じゃあどんな選手がいるのかな“って調べてもらってもいいですし、せっかく今日こういうふうに来ていただいたので、山本篤っていう選手を応援していただければ(笑)」と、ユーモアを交えて盛り上げた。

 そんなトークの直後に行なった香取と山本選手のボッチャ対決は、まさに対等な真剣勝負。“的となる白いボールに自分のチームカラーのボールを近づける”というシンプルなルールのボッチャは、「このセットを買いたい」と言うほど、すっかり香取のお気に入りスポーツだ。イキイキとプレーする香取に、パラスポーツが決して遠いものではないことを感じさせる。3人が架け橋となることでパラスポーツがどんどん身近になっていく。いつか障がいの有無に関わらず、みんながこのスポーツを楽しむ日が……そんな未来が着実に近づいているのを感じさせる一幕だった。

 また、2020年に向けてさらなる“OEN(おーえん)“プロジェクトもスタート。今後、パラサポが全国各地で実施するイベント会場で、東京パラリンピックを目指す選手に応援の気持ちを届ける寄せ書きフラッグを作成していくという。さっそく草なぎが“一緒にジャンプ!!“と書き込むと、続いてペンを取った稲垣に「ごろさん、左利きだっけ」とまさかのツッコみ。「今さら何を! 左利きの稲垣吾郎です」と、おどける微笑ましいシーンも。そんな稲垣が書いたメッセージは“心一つに頑張ろう!!”。そして、香取が“Arigato! OEN!!”と書き込み、さらにSNSで広まるように#oen2020も添えた。

 そして、最後に聞こえてきたのはパラスポーツ応援ソング「雨あがりのステップ」だ。雨がちらつく中、手を広げて伸びやかに歌う3人。途中からパラスポーツ選手たちもステージに上がり、最後はみんなで大合唱。雨足が強くなってきたにも関わらず「雨も上がってきたんじゃないですか? そんなことないですか?」とニヤリ。客席から雨雲を吹き飛ばすような声援の中、イベントは幕を下ろした。

増えるNAKAMA、広がる新しい地図

 終演後、囲み取材に応じた3人。「お祭りみたいで楽しかった」と、稲垣と草なぎが笑顔で語る中、香取が「あのー、草なぎは最後まで晴れるって言ってたんですけど、最後に雨がちょっときて……」と、少し不満げな顔で訴える。「その件について今聞いたら、“あの雨がロマンチックだった”って。ロマンチックってよくわからないんですけど!」という香取に、「レインボータワーのたぶん嬉し泣きじゃないですか?」とひょうひょうと答える草なぎ。稲垣には通じたらしく「なるほどね。雨がやんだ後、虹が出てくるかもしれないからね」とフォローを入れると「そうそうそうそう」と、草なぎ。だが、香取は「いや、僕は納得しない!」という絶妙なやりとりで取材陣を笑わせた。

 パラスポーツ体験の感想を聞かれると、車いすバスケットボールでなんとか生放送中にゴールを決めた稲垣が「一度3人でやったことがあって、剛がすごい上手で、今日途中で何度も代わってもらおうと思った」と、内心ドキドキだったことを吐露。「僕は、そういうの器用なんで!」と自信をのぞかせる草なぎは、60キロのパワーリフティングを成功できなかったのが相当悔しかった様子。

 「自分の体重を目標にしてるところでもあるんですよ、実は。いつも60キロで上がるか上がらないかくらいなんで。僕63キロか4キロくらいだから、あと4キロ足すと上がらないんで。2020年までに自分の体重を上げるっていう。そうすると、自分の中のいろんなパフォーマンスも上がるんじゃないかと思ってー。でも、いつも妥協しちゃうんですよね。ああ、やっぱり自分の体重はいいやみたいなー」とノンストップで話しまくる。見かねた香取が「もう、いいんじゃないかな? なんか、急にスポーツ選手かのように(笑)」とツッコミを入れるも「どうしようかなって、ちゃんと鍛えないと上がらないからー」と、まだまだ止まらない。「もうその話、載らないと思うよ」という香取の言葉に耳を貸さないどころか、「ウエイトを落として、57、8キロにすれば上がるんじゃないかな……」と、さらに加速。最後は「もうジムで勝手にやってください!」と、打ち切られてしまい「すみません、こだわりが(笑)」と、相変わらずなしんつよっぷりを披露していた。

 そんなほのぼのとした3人も、話題が新しい地図1周年を迎えたことに移ると、キリッと表情を引き締め、「まさかここまで充実した時間と、こんな愛に包まれた状況が信じられない。幸せいっぱいですね」(稲垣)、「本当に幸せな環境でお仕事できてるな、と。目の前にあることを必死に一つひとつ重ねての1年だったのかなって思うので、いろんな場所にこれからもNAKAMAのみんなと一緒にいきたいな」(草なぎ)、「1周年をパリで迎えまして。食事に行ったりして、まさか1年前、パリで“1年だね”って乾杯できる日が来るなんて。本当に想定外もいいところで。そうありたいという想いで突き進んできたんですけど、それ以上のことが起きるくらい幸せ」(香取)と、多くのNAKAMAへの感謝の言葉を紡ぐ。

 先日もWarner Music Groupへのjoinが発表されたばかり。だが、これからの予定は新しい地図らしく、まだ真っ白のようだ。「新しい地図を広げていくNAKAMAが増えたのかな。joinの説明はツヨポンが……」(香取)、「えっとー、joinさせていただけることになって、と、とても、光栄です……詳細は吾郎さんが」(草なぎ)、「あのー……なんでしょうかね。音楽にとどまらず、いろんなことにjoinさせてもらって(笑)」(稲垣)と、トークのバトンを渡し合う姿も微笑ましい。

 また3人は、毎日SNSに寄せられるコメントをチェックしており、さらにそこから新しい活動のヒントにもなっているという。香取は、本当にアイデアとして参考にしたものは“いいね!”をせず、黙って使わせてもらうのだと笑う。実際に、“個展の作品タイトルが曲がってる”というコメントを見つけて、パリに連絡して直してもらった、というエピソードも飛び出した。さらに、「SNSを通じてファン一人ひとりの人生を知れるようになったのは大きい」と話す稲垣。香取は「コメントから飛んで飛んで飛んで、その人の今までのインスタとか全部見ることも。そしたらすごい真面目に“頑張ってください”ってコメントしてくれた人が、夏に大胆な水着で映ってて、こんな子だったんだって、驚くことも(笑)」とも。

 「見られてますよ〜」と、稲垣がはやし立てるが、それほど彼らにとってNAKAMAひとり一人の存在が、一つひとつの言葉が、今まで以上に彼らのパワーであり、新しい地図というプロジェクトの原動力なのだ。“新しい地図は皆さんと一緒につくる集いの場所です!”そうオフィシャルサイトに掲げられた言葉の通り、見えない明日にワクワクしながら、彼らと一緒に冒険を楽しもうではないか。決まっていないということは、可能性に限りがないということ。広がり続ける新しい地図の先に、もっと楽しい未来が待っていると信じて。

(取材・文・写真=佐藤結衣)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる