奥田民生、レキシ、クリープハイプ……イメージを更新し続けるアーティストの新作

クリープハイプ『泣きたくなるほど嬉しい日々に』(通常盤)

 これまでのバンドのキャリア、そのなかで感じた葛藤と苦悩をむかし話みたいに描いた「今今ここに君とあたし」、恋人とのお別れのシーンを淡々と映し出した「お引っ越し」、妬みとか不安が溢れる日常を送りながら、“急に良くなることなんてないから、とりあえず進もうよ”と語りかけるような「ゆっくり行こう」。映画『帝一の國』主題歌「イト」、『NHK みんなのうた』で放映された「おばけでいいからはやくきて」などを収録したクリープハイプの5thアルバム『泣きたくなるほど嬉しい日々に』で尾崎世界観は、怒りをぶちまけることも自己に対する不満に沈むこともなく、前向きな諦念とでも呼ぶべき心情を表現してみせた。どんな人間でも自分を受け入れることは簡単ではないが、それをやらない限り、充足は得られない。そう、彼はこのアルバムによって、ようやく自分を認めはじめたのではないだろうか。

クリープハイプ5th AL『泣きたくなるほど嬉しい日々に』全曲トレーラー

iKON『RETURN』

 現在、2年連続のドーム公演(京セラドーム大阪)を含む全国ツアーを行っているiKONから、2ndフルアルバム『RETURN』が到着。韓国、日本を中心に大ヒットを記録したシングル「LOVE SCENARIO」、現在進行形のヒップホップと韓国語のシャープなフロウが完璧にリンクした「ONE AND ONLY -KR Ver.- / B.I」、友達と恋人の間で揺れ動く心情を描いたポップナンバー「BEST FRIEND」、繊細なピアノを中心にしたアレンジと感情豊かなボーカルが混じり合う哀切なバラード「DON’ T FORGET」などを収めた本作は、コアなヒップホップのリスナーから普通のJ-POPユーザーまで幅広い層を取り込めるクオリティを実現している。その中心は、全曲の制作に参加しているB.I。カリスマ性と音楽的なセンスを併せ持った彼の存在はこのアルバムによって、さらに大きな注目を集めることになりそうだ。

iKON「LOVE SCENARIO」MV(JP Ver.)

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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