>  >  > 藤田麻衣子『惚れ歌』で表現した“深み”

藤田麻衣子が初のカバーアルバムで表現した、アーティストとしての深みと次なる一歩

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 シンガーソングライターとして活躍する藤田麻衣子が、キャリア12年目にして初のカバーアルバム『惚れ歌』をリリースする。彼女はインディーズ時代に発売され、現在は結婚式の定番ソングとして知られる「手紙 ~愛するあなたへ~」に代表されるように、ストーリー性のある楽曲作りに定評があるが、今回はあくまでもボーカリストに徹したアルバムになった。

 選ばれた楽曲のオリジナルは、1989年発表の竹内まりや「シングル・アゲイン」がもっとも古く、2003年発表の中島美嘉「雪の華」がもっとも新しい。その他は主に、90年代前半に発表されたものがメインとなっている。藤田自身のバイオグラフィに重ねると、物心ついたときから学生時代までのヒット曲であり、なかでも幼少期に流れていた名曲を中心にセレクトしたことになる。いわば、彼女の原体験を作り上げてきた歌が選ばれているといってもいいだろう。リアルタイムではなく、後に知った楽曲もあるようだが、アーティストデビューする前に影響を受けてきた歌とあらためて対面したカバーアルバムであり、そういった意味においても非常に自然な流れで作られたといえる。

 そして、どの楽曲も丁寧に歌いこまれているのが印象に残る。例えば、今井美樹「PIECE OF MY WISH」や沢田知可子「会いたい」は、テレビのカラオケバトル番組に出演した際のレパートリーでもあるが、派手に歌い上げるというよりも、歌詞の世界をしっかりと伝わることに重点が置かれているように感じるのだ。そして、歌の巧さをひけらかすようなフェイクをすることは一切なく、ストレートにメロディを大切にしており、楽曲の良さを引き立てている。

 こういった歌い込み方は、男性目線のラブソングでも同様。同作冒頭収録のCHAGE & ASKA「SAY YES」、先行で発表された槇原敬之「もう恋なんてしない」のほか、山崎まさよし「One more time, One more chance」、ポルノグラフィティ「サウダージ」と、11曲中4曲が男性アーティストの楽曲だ。通常であれば、女性が歌うと少し違和感を感じることも多いが、彼女の歌の巧さにおいては、まったくそういったことを感じることなく、素直に聴くことができる。これもまた、ボーカリストとしての表現力を十分に持ち合わせている証拠だといえる。

藤田麻衣子 「もう恋なんてしない」Music Video(Short ver.)

 本作のアレンジを担当したのは、藤田麻衣子が念願だったという音楽プロデューサーやピアニストとしても知られる作編曲家の羽毛田丈史である。彼は、鬼束ちひろ、柴田淳、遊佐未森といった女性ボーカリストのプロデュースに定評があり、今回の相性も本作を聴く限りではピッタリといってもいいだろう。羽毛田自身のピアノを中心としたミニマムなアンサンブルは、とにかく声と歌詞とメロディを浮き立たせるようなアレンジが施されている。本作でもっともアップテンポのZARD「揺れる想い」やボサノヴァ風の「シングル・アゲイン」といったバンドサウンドもあるとはいえ、大半はピアノにアコースティックギターやストリングスがかぶさるシンプルなスタイルが多く、しかも原曲のイメージを壊すことなくまとめてあるのも好感度が高い。

      

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