己龍、BugLug、RoyzらV系シーン担うバンドが集結 レーベル合同ツアー『シバきあい!!』の意義

レーベル合同ツアー『シバきあい!!』の意義

 大トリを務めたのは<BPR>所属の己龍。武道館ワンマンライブを2度も成し遂げた、若手ヴィジュアル系バンドの中の代表格といえる存在だ。登場を待ちわびたオーディエンスの声はこの日一番の轟きをみせた。ライブ定番曲である「天照」や最新曲「無垢」など、オーディエンスを休ませない激しいセットリストでライブを展開。ラストには出演者全員がステージ上に現れ、己龍の「心中歌」を演奏した。バンドやレーベル関係なく、ステージには笑い合う者、からかい合う者、その様子を眺める者、それぞれがその場を楽しむ自由な空間に。最後にはオーディエンスをバックに記念写真が撮影され、和やかなムードでイベントは幕を閉じた。全体として、どのバンドもワンマンを終えたかのような清々しさでステージを後にしたのが印象的なイベントであった。

 このツアーは先にも述べたように、若手ヴィジュアル系バンドの中でも人気のあるバンド揃いだ。会場となったZepp Tokyoでも、それぞれのバンドがワンマン公演を行うことは無理な話ではない。では、なぜこのような合同ツアーが行われたのか。

 その理由の一つとして、まずZepp規模の会場でのライブ経験を積むためと考えられる。Zepp規模のワンマン公演が可能なバンドの集まりとはいえ、そのようなワンマンはツアーファイナルなど、年に1度あるかないか、という頻度なのが現状だ。特に地方ではキャパ300〜500人ほどのライブハウスでワンマンが行われることが多いため、どうしても大きめの会場でのライブ経験値が溜まりにくい。そのような状況を打破するために、地方も含め1000人規模の会場でのツアーを敢行したのではないだろうか。

 もうひとつ考えられる理由として、新たなファンの獲得が考えられる。この目的自体は他のイベントと大差ないが、同ツアーの特徴としてあげられるのは「あくまで目当てのバンドのファンのまま、その他のバンドも好きになってもらう」というスタンスであったことだ。

 Blu-BiLLioNやRoyzは、オーディエンスが持つ扇子やライトを自分達のバンドのグッズではないにも関わらずライブ中に使うことを推奨した。BugLugの一聖はMCで「自分の好きなバンドを追いかけろ」と明言した。DOG inTheパラレルワールドオーケストラでは、各バンドから応援メンバーが幕開けに花を添えた。彼らにとって、ファンは“奪い合う”ものではないのだ。

 ヴィジュアル系バンドは、試行錯誤しながらシーンを盛り上げようと日々切磋琢磨している。今後もこのような公演が行なわれる限り、その未来はきっと明るいはずだ。

■白乃神奈
フリーライター。ヴィジュアル系など、音楽ジャンルに囚われない音楽が好き。趣味はライブ、ダンス、キャラクターグッズ集め。座右の銘は「鶏口となるも牛後となるなかれ」。
Twitterアカウントは@flugzeug255

(写真=上溝恭香)

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