星野源「アイデア」とBTS「IDOL」MV分析 両者が映像で表現した“ルーツ”と“アイデンティティー”

星野源『アイデア』

 公開直後から話題となっている星野源の「アイデア」。“恋ダンス”で日本中を席巻したことも記憶に新しく、星野源旋風は今もなお衰えていないことを示している。一方、公開されるやいなやYouTube史上最速で再生回数1億回を突破したBTS(防弾少年団)の「IDOL」。この曲が収録されたアルバム『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』は米国ビルボードチャートで自身通算2度目となる1位を獲得し驚異的な人気を見せている。

 「アイデア」と「IDOL」。まったく異なる文脈から生まれたこの2つのMVだが、あえてそこに共通点を見出すとすれば、どちらも先鋭的なビートを取り入れているという点、そして自身のルーツやアイデンティティーといったテーマを取り入れているという点だ。現在YouTubeチャートの急上昇ランキングでも上位をマークしている2つのMVから、この「自身のルーツやアイデンティティー」というテーマに着目して、いま話題となるミュージックビデオがどういった性質を持っているのかに迫ってみたい。

星野源「アイデア」

星野源 – アイデア【Music Video】/ Gen Hoshino – IDEA

 まずこのMVは星野源がマリンバを叩く俯瞰映像から始まる。中央に「HOSHINO GEN」「IDEA」と文字が出る。一見何の変哲もない始まりだが、長年のファンであればまず彼が所属していたインストバンドSAKEROCKの「Emerald Music」のMVを思い起こしたはずだ。まさに彼の原点というべきこのスタートがあることで、続いて繰り出されるAメロの歌詞〈湯気には生活のメロディ〉の”湯気”から、単に朝ご飯(朝ドラ主題歌なので)から立ちのぼる湯気という意味だけでなく、SAKEROCK時代にソロで出演していたイベント「風呂ロック」を思い起こさずにはいられない。NHKの特番『おげんさんといっしょ』でも大きな富士山の絵をバックに銭湯を模したスタジオで演奏していたことから、この曲にはどうやら彼のルーツとも言うべきSAKEROCK時代の活動を思い出させる意図が込められているようだ。

 さらにMVでは、すかさず場所を移動して2015年のアルバム『YELLOW DANCER』を彷彿とさせる赤→2016年のシングル『恋』の黄色→2017年のシングル『Family Song』のピンク→今年のシングル『ドラえもん』の青……とイントロから最初のサビに至るまでに背景の色がここ数年の彼の活動を振り返るような流れを見せる。速めのテンポなことも相まって、過去の活動に囚われている雰囲気はなく、むしろこのワンコーラスで今までの活動にサクッとひと区切りをつけているような前向きな「集大成」感がある。いわば「星野源とは何者なのか」がここに端的に表現されているのだ。

 そして2番以降ではリズムが急変し先鋭的なダンスビートを見せ、三浦大知が初めて他人に振り付けしたというダンスで16人のダンサーが踊るシーンがあり、Dメロで生演奏の弾き語りを披露。最後は大きな銅鑼を叩いて終わる。素早く変化していく映像の中で星野源は黒スーツできわめて冷静に、そしてどこかその変化を楽しむように歌っている。各シーンのひとつひとつから意味を考察できるという点でも様々に楽しめる仕掛けがあり、そして自身の活動を振り返るというテーマがしっかりと作品に込められていることで、ファンにとって思い入れの強い作品になっているだろう。

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