元キマグレン・ISEKIが語る、“経営者とアーティスト”双方の視点から見た音楽業界の現在

元キマグレン・ISEKIインタビュー

「音楽を続けられなくなったアーティストにもチャンスが巡ってきた」

ーーいまのISEKIさんは、いわゆる大手の事務所やレーベルに所属せず、インディペンデントな活動ではあるし、これまで自身で企画・マネジメントをしてきたことで、音楽業界を少し引いた目線から見ることができると思うんですが、どうでしょう?

ISEKI:そうですね。僕はいま、前線にいる方々とは少し違った立ち位置から見させてもらっているのかもしれません。その上でお話すると、「音楽を続けられなくなった、続けられなくなっていたかもしれなかったアーティストにとっては、チャンスが巡ってきている」と思います。メジャーに一度上がっても、そこから離れたり、マネジメントも自分たちや少人数でやるようになっている人たちはどんどん増えてきているのに、それぞれが予算はあまりない状態だったりするわけで。僕の場合は15年もの間、イベンター・企画・制作会社をやってきたので、なんとか音楽を続けることのできる環境は作ることができています。だからこそ、僕みたいな、ある程度売れたことのあるアーティストが、次のチャンスをものにしていくことで、いろんなアーティストに「俺もできるんじゃないか?」「ISEKIができたなら俺にもできる」と思ってほしいですね。

ーー自主的に活動している人たちの希望になりたいと。

ISEKI:はい。企画やイベントをやっていると、否応無くアーティストの浮き沈みを見ることになってしまうんです。でも、仕事をしながら音楽をすることはできるし、それはなにも音楽に限ったことではない。そういう人たちにとって、クラウドファンディングはチャンスを与えてくれる新しい希望だと思うんです。実際にサイトを見てみると、音楽だけではなくて様々なジャンルのプロジェクトがあるじゃないですか。

ーーいろんな事情や環境で、やりたいことを諦めざるを得なかった人たちにとっては、「諦めなくてもよくなる」サービスでもある。

ISEKI:災害支援のような社会貢献にも、地域の町おこしにも役立てることはできるはず。まだまだ色んなものとつながって大きくなるはずですし、小規模な投資としての機能はまだまだこれから発展していくのかなという見方をしています。エンタメ業界においても、もっと芸能の分野、たとえばテレビ業界に入っていくことだってあるかもしれない。すごくワクワクするシステムだなと改めておもいますね。

ーーISEKIさんはここまで、経営者としてはイベントの企画・制作・プロデュースを手掛けてきているわけですが、『OTODAMA』から始まって、それらを自分の会社のメイン事業としてまわしていくことになったのは、どういった経緯があったのでしょうか。

ISEKI:それは至ってシンプルな話で。僕、1回音楽を諦めたことがあるんです。でも、そこから何か音楽に携われる仕事はないか模索して、自分たちでイベントを作ろう、というところから『OTODAMA』はスタートしていて。要するに、イベントに出れないなら自分たちでイベントを立ち上げて出ればいいんだ、という発想だったんです。そのスタンスが自分のなかで大きな指針になり続けているんですよ。

ーーあくまで自分たちの出る場を作る、という目的だったんですね。

ISEKI:はい。だって、大きいフェスに出るのって、よほど売れてないとできないですよね? だったら、自分で作って大きくすれば良いと(笑)。まあ、経営となるといろんな収支の問題や別の考え方も必要にはなってくるんですけど、それらは全て、自分たちが音楽を長く続けていくための環境を作りたいという一つの目的を達成するためにやっていることなんです。そんななかで「ISEKI、これ手伝ってくれよ」と、今まで助けてくれた方たちに頼ってもらったりもして、恩返しの機会も生まれたりしています。

ーーとはいえ表舞台に出てらっしゃる方でもあるじゃないですか。そのビジネスマンの顔との使い分けはやはり難しかったり?

ISEKI:確かに、キマグレンをやっていたころはその使い分けにまだ慣れていなくて、苦しんでいた時期もありました。企画に時間を割きすぎて、曲を作る側のテンションに戻れなかったり、曲作りに集中していると、企画のほうに戻れなかったりして。

ーー自分の中に2つ人格があって、それをうまく使い分けられないみたいな?

ISEKI:そんな感じです。でもそれは時間が経つにつれて慣れてきました。環境に適応していくというか、2つの自分がだんだん融合していくんです。それが丸い球体みたいになって。陰陽に分かれて混ざり合って共存しているというか。最近はそれがバチっとハマっている感じで、イベントを作ることと、アーティストとして活動することが、良いサイクルで共存している。最近はそれがカチッてはまってる感じです。イベントを作ってる頭も、「このアーティストとこのアーティストを組み合わせたら面白そう」というはめ方はどこか曲作りに似ているなと思うようになって。閃く回路は同じようなものなのかもしれません。

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