DÉ DÉ MOUSE×80KIDZが考える、クラウドファンディングとインディペンデント活動

DÉ DÉ MOUSE×80KIDZ対談

 80KIDZが、2018年春にデビュー10周年を迎えたことを契機に、クラウドファンディングプラットフォーム・CAMPFIREでベストアルバム制作のためのプロジェクトをスタートさせた。数日で100%を達成したプロジェクトの結果からは、シーンにおける2人の支持の厚さを改めて感じることができた。

 リアルサウンドでは今回、80KIDZのALI&とJUNに、近々同じCAMPFIREでプロジェクトを立ち上げる(詳細は月末あたりで発表予定。続報は当サイトでも紹介)DÉ DÉ MOUSEを加えた三者による対談を企画。2組の出会いから、お互いのプロジェクトへの思い、それぞれが考えるクラウドファンディングについての価値観など、話は多岐にわたった。(編集部)

「80KIDZは何でも過程が好き」(ALI&)

DÉ DÉ MOUSE(奥)、80KIDZのALI&(手前左)とJUN(手前右)

ーー2組のそれぞれの出会いはいつ頃になるのでしょうか?

JUN:たぶん、話すようになったきっかけは、10年くらい前にあった日本人アーティストによるUKツアーで。(『SMASH and Strummerville presents 100% GENKI!』)10日間くらいで4都市5公演を敢行したんですけど、移動もずっと一緒でした。

ALI&:あれはキツかったな〜(笑)。

JUN:最初はちょっと距離がありましたよね。僕らは一緒にツアーを回ってたriddim saunterのメンバーとばかりツルんでしまい、一方でデデさんにはレーベルのスタッフさんもついて来ていて。「大人だ」みたいな(笑)。

DÉ DÉ MOUSE:仲のいいグループの中にひとりで入っていく、みたいな感じはあったよね(笑)。

ーーでは、その後のお互いの活動に対しては、どのような印象を持っていますか?

DÉ DÉ MOUSE:僕はやっぱり、80KIDZに対して「イケてる」というイメージをずっと持っていて。ストリート感だったり、ファッショナブルな点だったり。そういう部分はいつも勉強させてもらいたいなって思っています。

JUN:DÉ DÉ MOUSEと80KIDZって、何かとイベントで一緒になることも多いんですよね。

ALI&:Spotifyの関連アーティストでもお互い最初に出てくるよね(笑)。DEDEさんは常にトレンドの音とかを意識しつつ、それをしっかりと噛み砕いて自分の音にしてる音楽家だと思っています。

JUN:作品毎のコンセプトの立て方も明確で、勉強になりますね。

ALI&:あと、デデさんのライブパフォーマンス時のプロ意識というか、ステージに立つ人間としてのスタンスというか。そういうところからもめちゃくちゃ刺激を受けています。

DÉ DÉ MOUSE:ありがとう。めっちゃ褒めてくれるね(笑)。

ーー2組とも、エレクトロニックミュージック、クラブミュージックを基盤としていながら、ライブパフォーマンスに対する意識はとても高いですよね。

ALI&:バンド編成でやり始めたのも、同じくらいの時期でしたっけ?

DÉ DÉ MOUSE:うん。たぶん2008年頃だったと思う。バンドでやりたいっていうか、とにかくドラムを入れたかったんだよね。80KIDZって、最初はドラムいなかったよね?

ALI&:いなかったですね。

DÉ DÉ MOUSE:ビートはダンスミュージックで、その上にロック的ウワモノを乗っけるというか。だから、僕らって一見同じ方向に見えるんだけど、実はそのアプローチは逆なんだよね。僕は最初、フュージョン的なものがやりたくて。昔、一時期は挾間美帆さんにピアノを弾いてもらっていたんです。

ALI&:今ではすごい方になられましたよね。

DÉ DÉ MOUSE:そう。「私、NYに行くんです」っておっしゃられて(笑)。80KIDZって、その時々で結構編成が変わるよね。一時期からギターを弾かなくなったりして、「あ、今はこういうスタイルでやってるんだな」って参考にさせてもらったりしています。

JUN:DJもやってるんで、常に新しい音楽をインプットしてるんですよ。そうすると、自分たちでのサウンドにも取り入れたくなっちゃうし、どんどん色々なことを試したくなっちゃうんですよね。

DÉ DÉ MOUSE:たぶん、お互い飽き性なんだよね。

JUN:間違いないですね。ALI&くんなんて、曲作る時のデモが、制作し始めた時と、完成した時で全く違う感じになっていることが多々あって(笑)。

ALI&:振れ幅がヤバい時あるよね(笑)。

DÉ DÉ MOUSE:あと、元々僕はアニメとかゲームが好きだったっていうことが起因していると思うんですけど、割と足し算的なアプローチが多くて。手数を増やしたり、照明もやたらとプログラミングされた、過剰な演出が好きなんです。でも、80KIDZは逆に風通しがいいというか、機能美の光る表現方法が多い気がするんですよね。洗練されてる。

ALI&:でも、そのアニメとかのカルチャーともリンクできるっていうのは、逆にすごく羨ましいなって思います。アニメとかゲームって、今やサブカルチャーの枠を大きくはみ出してますし。

DÉ DÉ MOUSE:でも、FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)とかは好きなんでしょ? ゲーミングPC組み立てたり。

ALI&:ゲームはやるんですけど、すぐ飽きちゃうんですよね。これって80KIDZのやること全般に言えるんですけど、何でも過程が好きなんですよ(笑)。PCのグラフィックボードを買って、組み込んでる時が一番楽しいもん(笑)。

JUN:組み込んだら一段落しちゃうよね(笑)。僕も自転車のフレームを組んでる時が一番好きです。

DÉ DÉ MOUSE:そういう男の子感みたいな部分は80KIDZっぽいよね。

ALI&:だって、「キッズ」ですもん(笑)。

ーーなるほど(笑)。今、「工程が好きだ」という話が出ましたが、それで言うと現在80KIDZが行われているクラウドファンディングも、それに当たるのではないでしょうか?

JUN:そうですね。実はメインロゴとかテイクアウト用のカップとかも僕がデザインしていて。

ALI&:80KIDZはマネージャーも含めて3人とも、そういう物作りをしている時が一番好きな人間なんですよ。

ーーまだ募集は続いていますが、すでに目標設定金額を上回っていますよね。ファンの方からの反響などはいかがでしたか?

JUN:最初はどういう反応がくるのかわからなかったですし、それこそ値段設定もどれくらいにするべきか結構悩んで。でも、最初「誰も支援してくれないかもな」って思ってたギター付きのコースとかも、すぐに支援してくれる方が現れて。

ALI&:80KIDZの初期の頃って、CDのプラケースから中のデザインやステッカーまで、全部自分たちで選んで、デザインして、ということをやっていたんです。なので、この10周年というタイミングで、改めてもう一度そういうDIYなことをやって、新しいファンの方々にも知ってもらいたいなと思ったんです。

JUN:今って音楽にお金を使わない人が増えてるっていう話もよくあるじゃないですか。でも、実際クラウドファンディングをやってみて、「そうでもないな」っていうことが実感できたんです。ちゃんとその人にとって価値のある物、形を提示できれば、ちゃんと買ってくれる。応援してくれるんだなと。

DÉ DÉ MOUSE:ただ、これは結構世代の話でもあると思っていて。僕や80KIDZのファンの方って、おそらくまだCDを買っていた層がメインのような気がするんです。でも、これからはおそらく中学生、高校生の頃とかに、CDを買ったり、ダウンロード購入などを全くしたことのない新しい世代が多数になってくるはずですよね。ストリーミングサービスも使わずに、音楽を聴こうと思ったらまず動画配信サイトとかを開いちゃうのが当たり前になっているじゃないですか。

ALI&:「動画配信サイトにUPされている曲なんてほんの一部なんだよ」って教えてあげたいですね。僕、毎日Spotifyを使ってますからね。あんな便利で素晴らしいものはないぞ、と(笑)。

ーークラウドファンディングをやってみて、改めてファンの方の熱量だったり、想いや気持ちを再認識することができたのではないでしょうか?

JUN:失礼な話なんですけど、普通に活動しているだけだと、普段からファンの方にサポートしてもらっているというか、支持されているっていうことが、直接的には伝わってき辛いんですよね。それがクラウドファンディングでは、ダイレクトに伝わってくる。あと、いつもは僕らからの矢印で、一方通行のような感じでアウトプットしている形だと思うんです。それがクラウドファンディングでは、双方向になる感じがあるというか。それは新鮮なことでしたね。

ALI&:僕らは今回ベストアルバムのリリースに際するプロジェクトを立ち上げたんですけど、そもそも「ベストアルバムって必要なのか?」という話し合いを、この2〜3年間でずっとやっていて。その結論も二転三転していたんです。その中で、「クラウドファンディング限定という企画としてだったら、出してもいいんじゃないかな」ということになって。たぶん、クラウドファンディングがなかったらベスト盤は出していなかったと思います。

JUN:僕ら、すぐに「ベストアルバムとかダサくない?」ということを言いがちで(笑)。クラウドファンディングを使って、特別なグッズなどと一緒に届けることができるのなら、ベストアルバムもありだろうという考えに至ったんですよね。

ーーDÉ DÉ MOUSEさんは、2015年に盆踊り企画(『BDM 2015 青山盆踊り』)の開催に際して、クラウドファンディングを行っています。

DÉ DÉ MOUSE:そうですね。あの時、実はプロジェクトの達成まで結構時間がかかりました。それもあって、今回の80KIDZのスピード感はすごいなと。

ALI&:まぁ時代も違いますからね。今は結構浸透してきていますし。あと、クレジットカードとか電子マネーの浸透具合が、クラウドファンディングにも関係しているような気がしていて。

DÉ DÉ MOUSE:確かに。日本にいると、よくも悪くも現金の信頼度の高さっていうのを感じるよね。ただ、それも今後は変わっていくのかなって思うけど。

ーーDÉ DÉ MOUSEさんはクラウドファンディングに対して、最初はちょっと疑問というか、抵抗のようなものもありましたか?

DÉ DÉ MOUSE:正直に言うと、少しあったと思います。すごい悪い言い方をすると、「お金ちょうだい」みたいな形に見えがちじゃないですか。特に、当時はまだそういった部分を揶揄する人もいたような記憶があります。でも、新しいことって何でも最初は拒否反応を起こす人が出てきますからね。

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