元キマグレン・ISEKIが語る、“経営者とアーティスト”双方の視点から見た音楽業界の現在

元キマグレン・ISEKIインタビュー

 元キマグレンのISEKIが、音楽活動10周年を迎えたことを記念し、初のソロ名義でのオリジナルアルバム制作プロジェクトをCAMPFIREにてスタートさせ、見事サクセスとなった。

 同プロジェクトは、ISEKIがアーティストとして活動してきた10周年の感謝の気持ちを詰め込んだプレミアムアルバムと、キマグレン時代からの盟友・園田俊郎監督と最新MVを制作する企画だ。リアルサウンドでは、プロジェクトの話を中心に、キマグレン解散後、ISEKIがどのように音楽と向かい合い、ミュージシャンとイベント制作・プロデュース会社社長としての顔を使い分けてきたのか。彼のキャリアが始まった場所・逗子で、じっくりと話を聞いた。(編集部)

「今の音楽業界は、このままの状態で絶対にいられない」

ーーISEKIさんはキマグレンを解散後、ソロシンガーとして約3年間活動を続けていますね。

ISEKI:昨年はAORのカバーアルバムを3枚、<徳間ジャパン>さんから出させてもらいましたね。いまは基本的にマネージメントも含め、全て自分でやっているという状況なんです。まあ、ユニットをやってるときから、基本的にはイベント企画やマネージメントに関して分けてはいたんですけど、自分たちで会社を作って、企画して活動していくというスタイルに関してはデビュー以来ずっと変わってなくて。今はより、プロデューサー的な立ち位置も自分がやるようになったりとか。

ーーユニットのときからそうだった、ということですが、そもそもマネージメントを自分たちでやろうと思った理由とは?

ISEKI:もともと一緒にやってたプロデューサーの意向が大きいですね。先にイベント(『OTODAMA』)を作るところからスタートしたのがキマグレンだったので、そのあたりも面白く見えたんだと思います。「自分たちでイベント企画をベースにしながら活動してるアーティストはあまりいないだろう」と。その頃からアーティスト主導のフェスも各地で増えてきましたよね。他にも色んなところでその動きはあったと思うんですけど、一応先駆けのひとつにはなれたんじゃないかなという自負はあります。

ーーアーティストフェスの先駆けとして『OTODAMA』があったと。

ISEKI:はい。今は自分で『毎日がクリスマス』っていうイベントを主催・企画したり、5年前から『Yamaha Acoustic Mind』というイベントの企画と制作プロデュースに関わっています。ほかにもいろいろ実はやってるんですけど、会社としてはそういうキャスティング・企画を軸に置いた状態で、それら全てをアーティスト活動に還元していく、というのが今の僕のやり方です。

ーー“アーティスト活動に還元していく”という一点においては、お一人になってからのほうがよりストレートに反映されているように見えます。

ISEKI:そうですね。自分自身が会社をやってる、というのも大きいんですけど、キマグレンのときには無かった新しい出会いもあるし、そこにずっと培ってきた縁が絡み合って、点が線になって、チームISEKIとしていいものを作って世に出していくことができる空気感が徐々にできていて、今はそのムードが最高の状態にあるといえます。

ーーそんななかでクラウドファンディングに挑戦することになったきっかけは?

ISEKI:CAMPFIREさんに出会ったことがきっかけですね。昨年、3枚カバーアルバムを出したことで「次は僕に何ができるだろう」と考え始めて。待ってくれてるファンの皆へ「CD出しました、配信しました」という形ではなく、「やっぱISEKIは面白いことをやるな」と感じてもらいたかったんです。正直にお話すると、現状の僕がCDを普通に出して全国流通させることになったとして、ちゃんと展開してもらえるか、という不安もあったりして。ソロとして初のオリジナルアルバムを出すからには、ちゃんとその辺りも考えないと、と思い、いろんな人に会って意見を聞いたりして、数カ月間模索したんです。いろんなレコード会社や、インディーズレーベルの社長にも会いました。そんななか、ある仲間から「こういうのはどう?」って紹介してもらったのがCAMPFIREで、別の仲間からもほとんど同じタイミングでCAMPFIREの名前が出てきたんです。しかも、別々の方向から4人くらい(笑)。みんなが口々に「良いサービスだ」とか「担当の方が優秀で」という話をしてくれるので、アポイントを取らせてもらいました。

ーーでは、実際に会ってからプロジェクトがスタートするまでにもそこまで時間が掛からなかった。

ISEKI:そうですね。実際にお会いしてみたら、人としての部分だけではなく、仕事にかける想いや面白いことをやりたいという前向きな気持ちがすごく伝わってきて。その中で僕らが今やろうとしていることともしっかりリンクしたんです。ものづくりの基本だとは思うんですけど、掛け合わせが合致しないと本当に良いものはできないと思っていて。でも、今回は上手く噛み合ったし、化学変化を起こすことができています。

ーー手応えも実際に感じていると。

ISEKI:まだプロジェクトも始まったばかりで、結果が出ているわけではないんですが、このタイミングで生まれた繋がりは、5年10年経ったときに、僕が音楽を続けていくうえでターニングポイントだったと振り返れる瞬間かもしれないという予感があります。今の音楽業界は、このままの状態で絶対にいられないという局面に差し掛かっていますし、今まで当たり前じゃなかったものが、5年、10年後に「普通だよ、そんなの」という話になるのかもしれません。そのひとつは確実にCAMPFIREでしょうし、メジャーなシーンで当たり前に選ばれる選択肢になると思っています。

ーーISEKIさんがそう感じる要因とは?

ISEKI:実際に、自分がプロジェクトを始めることになって、周りの仲間に話していたら「紹介してくれない?」とインディー・メジャー関係なく相談されたんですよ。敏感な人はちゃんとその仕組みも瞬間的に理解してくれたりして。

ーーちなみにCAMPFIREを紹介してもらったことでクラウドファンディングのプロジェクトをスタートさせた、ということですが、ISEKIさん自身はこれまでクラウドファンディングについて、どういった見方をしていたのでしょうか。

ISEKI:正直にお話しすると「名前だけは知ってた」という状態でしたね。2年前くらいに、元バンドマンだったうちの税理士が「ISEKIさん、クラウドファンディングってご存知ですか?」と提案してくれたんですけど、当時はあまりわからなくてスルーしちゃったんですよね。今思い返して「あそこでスルーしなきゃよかったな」と後悔しています(笑)。あと、ファンの方々のなかにはいろんな考えの方もいらっしゃって、今回のプロジェクトに対して「よくわからない」だったり、疑問に思われる方もいるのかもしれません。でも、僕らが最高のチームで作った音を聴いてもらえば、納得していただけるんじゃないかなと思っています。

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