ハナレグミがハナレグミたるゆえんーーボーカリストとしての存在感示した『ツアー ど真ん中』千秋楽

ハナレグミ『ツアー ど真ん中』を見て

 サルサの「オアシス」では、マイケル・ジャクソンばりにシャウトをしてステップを踏んだかと思うと、間奏では小沢健二とスチャダラパーの「今夜はブギー・バック」のラップを入れはじめた。さらに「日本語じゃない言葉で交信しようぜ!」と、奇声のようなコールアンドレスポンスも。いっそサウンドをアフリカまで展開してほしくなったが、基本的にサウンドをひとつのトーンでまとめるのがハナレグミの美学なのだろう。

 本編の最後は、カントリーな「明日天気になれ」。フロアを埋めつくすファンは両腕を上げて振っていた。

 アンコールで永積が「あっという間にスナックになるから!」と言うと、杏里の「オリビアを聴きながら」をスカで演奏しはじめた。そしてファンに呼びかける。「社長にゴマ擦ってるように歌ってよ! これじゃ商談成立しないよ!」。スナックと化した新木場Studio Coastでは、「オリビアを聴きながら」が大合唱されることになった。これなら商談も成立したはずだ。

 語るように歌う「光と影」は、ハナレグミの魅力が光る歌モノ。そして、バンドメンバーがステージを去り、永積ひとりに。彼はアコースティックギターを抱えて「きみはぼくのともだち」を歌いだした。最後の最後は、SUPER BUTTER DOGの「サヨナラCOLOR」。

 ハナレグミは、ファンクは絶妙に避けながらアメリカ音楽の旅をする。カントリー、ソウル、ブルース、サルサ、そしてジャマイカに渡ってレゲエ、スカ。「サヨナラCOLOR」を筆頭とするフォーキーな要素も見逃せない。多彩な音楽的要素を吸収しながら、そこに日本的な感性を混ぜて歌いこなせるボーカリストが永積なのだ。ウェットになりすぎず、しかしドライにもなりすぎない。この絶妙なバランス感覚を操れるボーカリストは少ないだろう。それがハナレグミがハナレグミたるゆえんであると感じたライブが『ハナレグミ 2018 ツアー ど真ん中』千秋楽だった。

(写真=田中聖太郎)

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■セットリスト
01. ぼくはぼくでいるのが
02. ブルーベリーガム
03. My California
04. 無印良人
05. 大安
06. あいまいにあまい愛のまにまに
07. 音タイム
08. レター
09. 家族の風景
10. 旅に出ると
11. フリーダムライダー
12. 深呼吸
13. Spark
14. Primal Dancer 
15. 太陽の月
16. オアシス
17. 明日天気になれ
-Encore-
01. オリビアを聴きながら
02. 光と影
03. きみはぼくのと
04. サヨナラCOLOR

バンドメンバー
Key:YOSSY 、Ba:伊賀 航、Dr:菅沼雄太、Gt:石井マサユキ

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