Mrs. GREEN APPLE、キャッチーなだけではない魅力 全曲に通ずる“寂しさ”に注目

 一方「日々と君」「愛情と矛先」のような楽曲では、救われようのない気持ちを抱えた人が救いを求め、救ってくれる人が現れるまでが描かれている。主人公と同じく“救われたい”という気持ちを抱えるリスナーは、これらの楽曲を聴くことで一瞬救われるような気持ちになるだろう。また、「鯨の唄」では決して人は一人ではない、〈誰かがきっと見ているから〉と主人公に希望を与える。この3曲は救う/救われるのどちら側にも立った視点から歌詞が交互に綴られていることで共通している。

 そして、ある人を励ますような言葉が並ぶ「光のうた」。大森が中学3年時に作った楽曲ということだが、〈辛くなってもいいの/そのまま歩けばいいの〉というサビからもわかるように、全てを俯瞰しているような歌詞が綴られており、楽曲が完成した時点の年齢を考えると大森の底知れない懐の深さが窺える。

 こうした楽曲以外にも、実は代表曲である「Speaking」「StaRt」などにも“寂しさ”が散りばめられている。例えば「Speaking」の主人公は“寂しさ”を抱えている内気な人物。「StaRt」に関しても、サビに〈独りじゃないと否定出来るように僕は探すんだ 〉といったフレーズがあるように、主人公はあくまで独り=寂しいと感じている人物だ。どちらの楽曲にも、主人公の“寂しさ”が読み取れる。また、一見シニカルな楽曲も元を正せば、他人と自分を比較してしまう己の弱さという“寂しさ”から生まれたものであるといえる。楽曲に“寂しさ”が含まれることで哀愁が漂い、より奥深いメッセージを届けるものになっているのだろう。

 大森は中学時代から世の中の動きには人より敏感で、人と人とのやり取りが機械的になっていく世の中に違和感を覚え、とても寂しい思いをしていたという。そんな寂しさを身を持って経験しているからこそ、大森の楽曲にもそれが自然と表れているのだろう。大森は「寂しさのことを歌ってるのは全曲に共通してる」と語っており、作品の一貫したテーマが恋愛や友情ではなく“寂しさ”であることは実に興味深い。Mr.s GREEN APPLEは今後も寂しさを歌うことで、多くのリスナーの共感を呼ぶ“人懐っこい”音楽を生み出していくだろう。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライ
ター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real
Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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