Mrs. GREEN APPLE、キャッチーなだけではない魅力 全曲に通ずる“寂しさ”に注目

 いまやティーンのみならず、世間一般においても着実に“キャッチーなポップバンド”として存在を浸透させつつあるMrs. GREEN APPLE。昨今では、ジャズやビッグバンドスタイル、EDMといったジャンルに捉われないエンターテインメント性をフィーチャーすることで、曲調の振り幅も大きいバンドに成長した。

Mrs. GREEN APPLE『青と夏』(通常盤)

 Mrs. GREEN APPLEは作詞・作曲・編曲全てを手掛ける大森元貴(Vo/Gt)含む5名により2013年に結成され、2015年7月8日に『Variety』でメジャーデビューを果たし、今年でメジャーデビュー3年目を迎えたばかり。2018年8月30日にリリースした5thシングル『WanteD! WanteD!』表題曲はフジテレビ系ドラマ『僕たちがやりました』のオープニング曲に起用され、瞬く間に知名度を広げることとなった。その後の楽曲作りにおいては「WanteD! WanteD!」の延長線上にあるようなテイストだけではなく、あえて様々なバンドサウンドを奏でることで、揺るがない人気を博している。

 そんな彼らの作品における魅力は、キャッチーで明るい楽曲だけではなく、“寂しさ”も描いているところにあるように思う。そこで本稿では、“キャッチーなポップバンド”だけではないMrs.GREEN APPLEの楽曲の魅力について改めて考えていきたい。

 直近では8月1日公開の映画『青夏 きみに恋した30日』の主題歌、挿入歌として同日リリースの7thシングル『青と夏』の表題曲とカップリング曲であるバラードナンバー「点描の唄(feat.井上苑子)」が起用されたMrs.GREEN APPLE。どちらも映画に合わせて書き下ろされた楽曲であり、主題歌の「青と夏」について、大森は「この曲は人間味溢れる曲だし、ただハッピーなだけではなく寂しかったりする部分も描いているので、人間らしい部分にフォーカスしたいと思った」とコメントしている。

 “キャッチーなポップバンド”として彼らを燦然と輝かせるのは、ポップとは相対する“寂しさ”をテーマにした楽曲が寄与する部分が大きい。個人的に“寂しさ”が顕著に表れている楽曲だと思うのは「Hug」「私」「L.P」だ。「Hug」のAメロは、〈寂しくなった〉という率直な7文字の言葉で始まる。また、「私」は“私”が“貴方”なしでは生きられない、という“貴方”を想う繊細な感情を表現している。「L.P」では、度が過ぎると歪んだ形にもなりかねない愛を、愛してほしい側の気持ちになって歌うのだが、最後には報われない主人公の運命を畳みかけるようなフレーズが積み重なり、メッセージ性の強い楽曲となっている。大森は“陽”を表現するには、対となる“陰”も必要だと語っており(参考:Mrs. GREEN APPLEの挑戦。“陽”という感情をどこまで潜って表現できるのか?/M-ON!MUSIC)、寂しさのことを歌いながらも、「それが『人懐っこさ』に繋がっている」と発言していた(参考:大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)にとっての「至福なオフ」ー休みの日になに聴いてる?/KKBOX)。これら3曲においても、歌詞に"陰"の表現を使い、奥行きを持たせることで、楽曲を味のあるものとしているのだ。

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