オルタナティブR&Bからパワーポップバンドまで 高橋芳朗が気になる新鋭女性アーティスト5選
次は昨年に来日公演も行なったオーストラリアのインディーポップバンドBabaganoujのボーカル/ベースを務めるHarriette Pilbeamのソロプロジェクト、HatchieのデビューEP『Sugar & Spice』。これがもろに80年代後半~90年代前半のドリームポップへの憧憬にあふれた内容で、Cocteau TwinsやThe Sundays、初期のThe Cranberriesあたりが好きな向きは悶絶必至。リードトラックの「Sure」などはまさにCocteau Twins「Heaven or Las Vegas」とThe Cranberries「Dreams」を足して割ったような曲ですが、さらにこのリミックス(本作には未収録)をCocteau TwinsのRobin Guturieに依頼しているという徹底ぶりが微笑ましいです。イギリスの老舗Heavenly Recordingsからのリリース。
最後は紅一点のボーカル/ギター担当Elizabeth Stokesを軸とするニュージーランドのパワーポップバンド、The Bethsの8月リリース予定のデビューフルアルバム『Future Me Hates Me』より先行で公開された「Happy Unhappy」を。淡いノスタルジーを湛えたキラーチューン揃いのデビューEP『Warm Blood』(2016年)と比較すると良くも悪くも洗練されてきたところはありますが、Best Coast(こちらもまもなく新作『Best Kids』をリリース予定)にも通じるオールディーズポップ調の甘酸っぱいメロディとハーモニーは引き続き健在。あとは前作の「Lying in the Sun」に匹敵するような名曲が生まれれば、夏の終わりのサウンドトラックとして完璧な一枚になりそうです。Toro Y MoiやCloud Nothngsが所属するCarpark Recordsからのリリース。
■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。