aikoの「ストロー」は新たな代表曲に? クセになるフレーズが生み出す効果を考える

 〈君にいいことがあるように 今日は赤いストローさしてあげる/君にいいことがあるように あるように あるように〉……一度聞いたら耳から離れない印象的なフレーズが曲中に5回、〈君にいいことがあるように〉に至っては10回も登場するaikoの「ストロー」。『王様のブランチ』(TBS系)のテーマソングとして4月放送からオンエアを開始しており、休日の一コマを彩る楽曲としてお茶の間に浸透しつつある。同曲は6月6日発売の最新アルバム『湿った夏の始まり』に収録。今夜6月1日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)、6月2日放送の『CDTV』(TBS系)、『SONGS』(NHK総合)とテレビパフォーマンスも続く。

 日常のなにげない風景が浮かんでくるような「ストロー」は、aikoが家でジュースを飲む時に、いろいろな色のストローからおみくじのように引いた赤色のストローに感じた喜びから着想を得たのだという。aikoが「『小さいけどなんか前向きになれる事が好きな人にたくさん起こったらいいな』と思って作りました」とリリース時にコメントを寄せていたように、大切な人の日々の幸せを身近な視点で願うような心温まる言葉が並んでいる。

 MVでは歌詞の内容になぞらえ、aikoと“彼”がパジャマ姿で朝食を共に食べるシーンなど同棲生活を思わせるシーンが登場。また、映像に映し出される小物類はaikoの私物とのことで、歌詞の世界観が一層リアルに入り込んでくる仕掛けだ。合間に挟まれるライブシーンも含め、aikoのONとOFFを覗いているような斬新な演出である。

aiko『ストロー』music video short version

 しかし、同曲における最大のポイントは、なんといっても冒頭でもふれたクセになるフレーズだ。〈君にいいことがあるように〉の繰り返しは、aiko節ともいえる弾けるようなポップサウンドもあいまって、聞き続けているとaikoから“元気になるおまじない”をかけられているような不思議な感覚になる。楽しい休日に聞くことはもちろん、ポジティブなパワーをもらうことができる、日々の生活のBGMとしてもおすすめしたい。

 過去にLUNA SEAの河村隆一が、小室哲哉がMCを務める『TK MUSIC CLAMP』という音楽番組に出演した際、リフレイン(繰り返し)が多いという両者の歌詞に関するトークの中で、「自分でも聞いてて『この言葉が聞きたいな』っていう言葉が書けた時には、けっこうリフレインすることが多いかもしれないね」と語っていた。この見方を借りるのであれば、まさに「ストロー」でもリスナーが「聞きたい言葉」が繰り返されている。普遍的に愛されるJ-POPの条件の一つである「誰でも簡単に覚えられる/口ずさめることができるサビ」に加え、「聞きたい言葉」が繰り返される「ストロー」は、7月でデビュー20周年を迎えるaikoの新たな代表曲として長く愛され続ける予感がする。

(文=久蔵千恵)

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