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aikoの楽曲はなぜミュージシャンを虜にするのか 楽曲の“仕掛け”を分析

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 前作『泡のような愛だった』からおよそ2年ぶりとなる、aikoの通算12枚目のオリジナル・アルバム『May Dream』がリリースされた。ドラマ『素敵な選TAXI』の主題歌「あたしの向こう」や、2015年のツアーで初披露された「夢見る隙間」、深田恭子、ディーン・フジオカ主演のドラマ『ダメな私に恋してください』の主題歌で話題となり、配信チャートで軒並み1位を獲得した「もっと」など、4枚のシングルを収録した本作は、これまでの彼女の作品と同様に、生楽器を主軸としたサウンド・プロダクションが特徴だ。ジャクソン5を彷彿とさせる「冷凍便」や、どことなく80年代MTVポップスを思わせる「信号」、歌謡ロック(?)な「夢見る隙間」など、アレンジも幅広く聴き手を飽きさせない。そして、何より変わらぬ「aiko節」がぎっしりと詰まっている。

 では、その「aiko節」とは何か。今作はもちろん、過去の代表曲からも幾つかピックアップしながらその秘密を探っていきたい。

  aikoの楽曲における最大の魅力といえば、以前から多くのミュージシャンから絶賛されるように、何と言ってもその卓越したソングライティングにある。その特徴は、主にジャズから影響を受けたコードワークと、浮遊感たっぷりのテンションノート、そしてブルースノートを効果的に使用したメロディラインである。
 

 まずは、彼女の通算4枚目のシングルで、桑田佳祐や奥田民生もカヴァーした名曲中の名曲「カブトムシ」を見てみよう。キーはD#で、Aメロのコード進行は、前半が<D#-A#-Cm7/A#m7・D#7-G#Maj7>、後半が<Gm7-C7/Gm7-G#maj7-G#m7/A#7>。まず、歌い出しの1音目、「悩んでる体が熱くて」の「や」(厳密には「な」が1音目だが、これは前の小節、つまりイントロの最後の小節にひっかかっている)は、トニックコードD#に対して9thノートにあたるファである。コードの構成音から外れた音を、あえて使い浮遊感を出しているのだ。3小節目後半のA#m7は、奥田民生《http://realsound.jp/2015/10/post-4787.html》やいきものがかり《http://realsound.jp/2016/03/post-6682.html》(アレンジャーが島田昌典という共通点がある)も、好んで使うマイナードミナント。後半の2小節目は、通常CmのところをC7にしていて(同主調への転調)、直前のGm7とペアでツーファイブを形成している。サビのコードは、前半が<D#/Fm7- Gm7- G7- Cm/Cm7 – G#maj7/G#m6- Gm7/F#6- Fm7 – Fm7onA#>。5小節目からの半音進行が、この曲のヤマ場だが、特にG#m6とF#6の、6thのテンションノートがメロディになっていて、ジャジーな雰囲気を醸している。

 さらに後半、歌詞でいうと「生涯わすれることはないでしょう」のところが最大のクライマックス。コード進行は<Am7/G#6-Gm7/F#6-Fm7-Cm7/A#m7・D#7>。この、最初のAm7は、ダイアトニックから大きく逸脱したコードであり、非常にインパクトがある。ちょっとボサノヴァっぽい響きだが、ビートルズの隠れた初期の名曲「If I Fell」の、歌い出しの奇妙なコード進行にもよく似ている。他にも、2回目のサビの、「琥珀の弓張月」と歌う部分では、ブルージーなフェイク(コブシ)を効かせていて、何度聞いてもハッとさせられる。「カブトムシ」は他にも随所に仕掛けがほどこされており、「ミュージシャン殺し」の1曲であるのは深く頷ける。ちなみにこのブルージーな節回し、24枚目のシングル「KissHug」(2008年)のBメロ、「あなたが好きだったの」の部分などでも聞くことができる。

      

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