E-girls振付師が語る、11人それぞれのダンサーとしての個性 「鷲尾伶菜は妥協なく踊りきった」

E-girls振付師が語る、11人の個性

 E-girlsのダンスパフォーマンスが、劇的な進化を遂げている。5月23日にリリースされた『E.G. 11』のリード曲「Show Time」は、E-girls史上“もっとも激しく踊った”楽曲で、一人ひとりのメンバーの圧倒的なダンススキルに驚かされる仕上がりだ。6月2日から開催される全国アリーナツアー『E-girls LIVE TOUR 2018 ~E.G. 11~』では、同曲のパフォーマンスが目玉のひとつになるに違いない。

 このパフォーマンスのクリエイティブを行ったのは、代表曲「Follow Me」の振り付けも担当したコレオグラファーのAKIKO氏。これまで多くの女性アーティストの振り付けを手がけてきた彼女は、11人体制となったE-girlsのパフォーマンスにどんな仕掛けを行ったのか。話を聞くと、メンバーそれぞれのダンサーとしての特徴から、彼女たちの現在地、目指すアーティスト像までもが鮮明に浮かび上がってきた。(編集部)

ダンスをやっている人にこそ興味を

ーーAKIKOさんは、E-girlsの初期の代表曲のひとつである「Follow Me」の振り付けを手がけています。手がけたきっかけと、その時に意識したことを教えてください。

AKIKO:EXPGの代表のPATOさんにお声がけいただき、Flowerの「forget-me-not ~ワスレナグサ~」(2012年)の振り付けを担当させていただいたことがきっかけで、「Follow Me」も手がけることになりました。E-girlsにとっては三枚目のシングル曲で、まずはリスナーの方に「E-girls=本格的なダンスを踊るグループ」との印象を持って欲しかったので、簡単すぎないダンスで、なおかつ人の目に映った時に残りやすいキャッチーな振り付けを意識しました。特にサビのダンスは、グループのイメージとその動きを紐付けて覚えてもらえるように、色々と工夫をしました。

E-Girls / Follow Me ~Short Version~

ーー振り付けを行う際のプロセスを教えてください。

AKIKO:まずは楽曲が先にあって、E-girlsがそれをアウトプットしていくと考えたときに、どんなセットの中でどんな衣装を着て、どんなダンスの方向性にするのか、全体的なコンセプトを固めていきます。例えば「Follow Me」であれば、ポップな衣装でメンバーたちは常に笑顔で、適度に高度かつキャッチーなダンスにしようと決めて、そこから具体的な振り付けに落とし込んでいく感じです。サビ頭の振り付けから作り始めて、そこを引き立たせるために逆算してAメロやBメロの振り付けを考えていくことが多いです。

ーー当時と現在では、E-girlsの振り付けにどんな違いがありますか?

AKIKO:私は現在、パフォーマンス全般のクリエイティブに関わらせて頂いていて、楽曲に合わせて様々なコレオグラファーに振り付けを依頼しているのですが、それぞれ得意ジャンルを持った方にお願いすることによって、当時よりさらに高度で各ジャンルの色が濃く出たダンスになっています。E-girlsのメンバー自身も以前よりスキルが磨かれているので、それに見合った振り付けにして、ダンスをやっている人にこそ興味を持ってもらえる仕上がりを目指していますね。

今のE-girlsなら必ず踊りこなせる

ーー11人体制になってからの振り付けについて、具体的な狙いも教えてください。

AKIKO:11人体制になってからのリリース楽曲は、さらに一曲ごとのコンセプトが際立っているので、それに合わせてダンスの表現も濃密になっています。まず、11人体制で初のシングル曲となる「Love ☆ Queen」では、メンバーそれぞれの個性をしっかりと見せることに注力しました。MVでは、一人ひとりの得意なことに沿った見せ場を作って、生まれ変わったE-girlsを強く印象付けられるように工夫しました。

E-girls / Love ☆ Queen (Music Video) ~歌詞有り~

 次の「北風と太陽」は、人生の教訓を描くような歌詞が印象的で、メンバーの年齢的に、まだ表現するのが難しい楽曲でした。そのため、彼女たちがリスナーに対して、「人生とはこういうものなんだよ」と諭すのではなく、もがきながらも精一杯に踊るような表現にすることによって、彼女たちの同世代の方が自ずと共感できるものを目指しました。

E-girls / 北風と太陽 (Music Video) ~歌詞有り~

 「あいしてると言ってよかった」は、E-girlsとして初のバラードシングルということで、見せ方に苦慮しました。ダンスで繊細な感情を伝えるような表現は、Flowerでやっていたので、それとはまた異なる表現にするために、この曲では11人というグループで見せていくことを意識しています。引き絵で見たときに、11人のダンスによって楽曲の持つストーリーや感情を表現できるように、構成や緩急の付け方にはこだわりました。

E-girls / あいしてると言ってよかった (Music Video) ~歌詞有り~

 「Pain, pain」は、複雑な感情が込められたラブソングなので、その複雑さや繊細さを表現するために、ダンスも難解なものにして、それを激しく踊ってもらいました。一緒に楽しんだり、振り付けを真似してもらうというより、完全に“見せる”ことに徹したダンスです。

E-girls / Pain, pain (Music Video) ~歌詞有り~

ーー新しいE-girlsの楽曲は、キャッチーさもありながら、より玄人受けしそうなハイセンスな仕上がりになってきていると感じています。アルバム『E.G. 11』のリード曲「Show Time」は、その極みといって良いもので、ダンスの高度さはこれまでのJ-POPでは類を見ないものかもしれません。

AKIKO:「Show Time」は自信作です! 新生E-girlsでは、楽曲の世界観をいかにダンスで表現するかに力を注いできましたが、「Show Time」ではサウンドが放つ感情のままに、とにかく激しく全力で踊って欲しいと考えて、その欲求に忠実に作りました。彼女たちのダンススキルを、ここで一気に爆発させたくて、いま彼女たちができる動きの全てを詰め込んでいます。かなり難易度の高いダンスですが、今のE-girlsなら必ず踊りこなせると信じていましたし、実際に彼女たちは想像を超えるパフォーマンスを発揮しています。

メンバーそれぞれのダンスの特徴

ーーダンサーの目線から見た、メンバーそれぞれのダンスの魅力を詳細に教えてください。

AKIKO:E-girlsのメンバーは、経験を重ねることでどんどんスキルに磨きをかけて、今ではメンバーそれぞれの得意ジャンルがかなり明確化してきました。

 まず、リーダーの佐藤晴美さんはもともとジャズダンスの基礎がしっかりしているので、動きに繊細な美しさがあります。彼女のジャズダンスの美しさを活かせるような振り付けは、いつも意識していますね。加えて、最近ではトレーニングの中で、ヒップホップの闘志がふつふつと目覚めている感じもあります。彼女の踊りにヒップホップのワイルドさが加わったら、さらにメンバーを引っ張っていけるダンサーになると思います。

 ヒップホップというジャンルの中では、やはりYURINOさんが輝いています。音に対する体の反応がすごく良くて、ヒップホップならではのタメのあるグルーヴやビート感を誰よりも気持ち良く体現しています。ちょっとルーズな感じを出したりするのも上手で、彼女自身が本当にヒップホップが好きだからこそ、その格好良さをよく理解しているのだと思います。

 YURINOさんとともにフロントに立つことが多いSAYAKAさんは、誰よりも多ジャンルに精通したダンサーなのですが、中でも彼女がもっとも輝くのは、女性ならではの艶のあるムーヴを見せてくれるときです。最近のE-girlsでは大人の女性の魅力を打ち出した振り付けも増えていて、彼女はその中で抜群に良い動きをします。真正面からヒップホップを踊っても迫力があって、マルチなダンサーとしての実力を感じます。

 須田アンナさんは、少しマニアックな見方になるのですが、すごく良い筋肉を持っていて、身体をAポイントからBポイントまで動かすのが圧倒的に早いです。Aポイントでどんなに引っ張って、一番最後に動き出したとしても、ちゃんと拍通りにBポイントに行ける。そのため、より音にフィットしたダンスをすることができます。「Show Time」MVの間奏部分の最初の須田さんの動きは本当にすごいので、ぜひしっかりと観てください。「ドン!」で瞬時に目指した形に辿り着くダンスの面白さが堪能できます。

 楓さんのダンスは、もっとも人柄がにじみ出たダンスで、その表情も含めて、見る人を幸せにするパワーがあります。「Love ☆ Queen」のMVの中盤で、彼女がフロントに立っているシーンに象徴的ですが、E-girlsの中の“Happiness”な部分を表現する上で、彼女のダンスは欠かせません。明るいエネルギーに満ち溢れています。

 坂東希さんのダンスは、純粋で清らかな空気を生み出すことができます。“ビューティー”を表現させたら右に出るものはいません。繊細な心境を表現したり、雅やかな絵を作るのは、彼女の得意とするところです。例えば「Love ☆ Queen」では、あえて振りをつけずに、和傘を持って自由に動いてもらったところ、とても鮮やかな映像になりました。

 石井杏奈さんは、女優としても活躍しているように、表現者としての才能があります。楽曲の世界観にすっと染まって、自分なりの解釈でアウトプットすることができるのが彼女の強みで、演劇的な表現もとても上手です。楽曲ごとにガラリと違う雰囲気を出しているので、その変化を楽しんでみて欲しいです。

 山口乃々華さんは、今もっとも変化の時期にあるダンサーかもしれません。「Follow Me」の時はあどけなさが目立った彼女ですが、最近はグッと大人っぽくなってきていて、ふとした瞬間に「こんなに女性的な動きができるようになったんだ」と驚かせられることもしばしばです。今まではダイナミックに踊ることで、元気でキューティーなイメージを出していたけれど、最近は溜める、込める、止めるといった動きや、その滑らかさで新しい魅力を表現できるようになってきました。その成長をぜひ見て欲しいです。

E-girls / Show Time (Music Video) ~歌詞有り~

ーー「Show Time」では、ボーカルの三人も激しくダンスしていますね。

AKIKO:そうですね。ダンスボーカルとしてのそれぞれの強みを説明すると、まず武部柚那さんはどこまで激しく踊っても歌うことができる稀有な身体能力の持ち主です。子どもの頃から歌って踊る訓練を続けてきた彼女だからこそできることで、動きをカットする必要がありません。彼女のこのすごさは、今後は魅力の一つとして打ち出せていけたらと考えています。

 藤井夏恋さんは、とにかく自分の見せ方が上手なダンサーですね。ダンスの表現だけではなく、どんな表情をしてどう振る舞えば魅力的に見えるのかを、徹底的に研究しています。ダンサーであり、ボーカルであり、しかも演者でもあるというところが、彼女のすごさでしょう。

 鷲尾伶菜さんは、こういうと本人は恥ずかしがるかもしれないけれど、本当に努力の人で、諦めるということを知りません。今回の「Show Time」では、一切ダンスを削ることなく、パフォーマーと同等に動いていてくれたのが、個人的には一番嬉しかったですね。MVの2サビの鷲尾さんのダンスは、ぜひじっくりと観てほしいです。リードボーカルがあそこまで妥協なく踊りきるMVは、他にないと思いますし、本当に格好良いです。

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