三代目JSB、ソロ作が示す“未来” CRAZYBOY、RYUJI IMAICHI、HIROOMI TOSAKA、それぞれの音楽性

三代目JSBソロ作を分析

 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(以下、三代目JSB)にとって、この2年はトップアーティストとして走り続けながらも、メンバーそれぞれが新たな道を模索し、それを形にする時期だったのだろう。

 2014年、春夏秋冬を題材として、四季ごとにリリースしたコンセプチュアルなシングル作品『S.A.K.U.R.A.』、『R.Y.U.S.E.I.』、『C.O.S.M.O.S. ~秋桜~』、『O.R.I.O.N.』は、いずれも好セールスを記録し、中でも「R.Y.U.S.E.I.」は三代目JSBの名を日本中に轟かせるほどの国民的ヒット曲に。これらの楽曲を収録した2015年のオリジナルアルバム『PLANET SEVEN』はミリオンセラーを獲得し、三代目JSBは名実ともにトップアーティストとなった。

 その翌年にリリースした『THE JSB LEGACY』には、ELLYが初めてラッパー・CRAZYBOY名義で制作に携わった「Feel So Alive」や、オランダの世界的DJであるAfrojackを迎えた「Summer Madness feat. Afrojack」、今市隆二のソロ曲「Over & Over」などの楽曲が収録され、三代目JSBの次のモードが伺える作風だった。

 そして、6月6日にリリースされる約2年ぶりのオリジナルアルバム『FUTURE』は、7人のメンバーそれぞれの役割と個性がさらに明確になり、音楽的にも大きな進化を遂げた作品となった。『FUTURE』は三代目JSBとしてのアルバムのほかに、ボーカルを務める今市隆二と登坂広臣、それぞれのソロアルバムを収録した三枚組で、三代目JSBの魅力を多面的に描いている。この作品を読み解くために、本稿ではソロアーティストとして活躍する3名、ELLYことCRAZYBOY、今市隆二ことRYUJI IMAICHI、登坂広臣ことHIROOMI TOSAKA、それぞれの音楽性を分析してみたい。

CRAZYBOY

 三代目JSBのメンバーの中でもいち早くソロ活動を開始したCRAZYBOYは、最新のストレート・ヒップホップに真正面から挑戦したことで、J-POPのシーンのみならず、アンダーグラウンドのヒップホップシーンからも一目置かれる存在となった。

 2014年、先んじてソロデビューしていたEXILE / EXILE THE SECONDのSHOKICHIの楽曲「THE ANTHEM feat. DOBERMAN INC,SWAY,ELLY」でラッパーとしてのキャリアをスタートしたCRAZYBOYは、2017年2月に待望のデビューシングル『NEOTOKYO EP』をリリースする。

 WHITE JAMのラップ担当で、フリースタイルの名手としても知られるGASHIMA、湘南乃風や東方神起のヒット曲も手がけるトラックメイカーのDJ firstを迎えて制作した表題曲「NEOTOKYO」では、攻撃的なシンセサウンドとトラップの上で、オートチューンを絶妙に効かせた先鋭的なラップを披露。近未来の東京をド派手なビジュアルで表現したMVもさることながら、三代目JSBのメンバーでしか歌えない覚悟の決まったリリックや、ダンスと連動したマイクさばきにも注目が集まった。まさに、メジャーシーンのど真ん中で活躍するアーティストが表現する“SWAG”と言えるもので、ヒップホップシーンでも彼のスタイルに賛同するものは少なくなかった。

 NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのMC・DABO、過酷な生い立ちを鋭いリリックで歌い上げるANARCHY、2000年代のジャジーヒップホップ・ムーブメントを牽引したトラックメイカー・KERO ONE、Matt CabとTOMAによるプロデュースユニット・THE BACKCOURTなどが制作陣に名を連ねているのは、そのプロップスの現れである。

 ラッパーのダースレイダーは、CRAZYBOYの活動を「彼みたいな人が真ん中にドーンといることで、ほかのヒップホップ・アーティストの選択肢も増えるんですよ。(中略)いろんなスタイルが出てくることが、シーンの活性化であり、ヒップホップというカルチャーを盛り上げることに繋がるんです」と評している(参照:CRAZYBOYはヒップホップをどう変える? DARTHREIDER の『NEOTOKYO WORLD』評)。メジャーとアンダーグラウンドの架け橋としても、CRAZYBOYの活動には期待が寄せられているのだ。

 そんなCRAZYBOYは、7月4日に早くもベストアルバム『NEOTOKYO FOREVER』をリリースすることが決定している。このスピード感もまたラッパーらしく、頼もしい限り。

RYUJI IMAICHI

 CRAZYBOYがヒップホップアーティストとして活躍する一方、RYUJI IMAICHIは世界基準のR&Bに挑戦している。2018年1月にリリースされた初のソロ名義シングル『ONE DAY』は、アーバンかつコンテンポラリーな仕上がりの洗練されたR&B楽曲で、その音楽的方向性は一作目にして極めて明確に示された。自身の俯いた肖像をモノクロで表現したシンプルなアートワークも、現行の海外のR&Bのモードを的確に反映させたものである。

 続く『Angel』は、日本のR&B界のヒットメイカーであるT.Kura、LL BROTHERSのTAKANORIとともに、RYUJI IMAICHIが作詞作曲を手がけた作品で、ファンキーなディスコチューンの上で爽快な美メロを聴かせる一曲に。軽やかさの中に色気を漂わせる歌い回しに、R&Bシンガーとしてのバランス感の良さが感じられる。

 そして、三作目からは海外の巨匠たちとともに、日本のR&Bの新機軸となる作品を模索し始める。RYUJI IMAICHIはなんと、フェイバリット・アーティストの一人であり、米R&B界でもトップクラスの美メロの達人であるBrian McKnightの自宅に2カ月間ホームステイして制作を行ったのだ。そうして完成したシングル『Thank you』は、Brian McKnight譲りの琴線に触れる繊細なメロディに、RYUJI IMAICHIの温かく優しい人柄を織り込んだスピリチュアルな作品となった。なお、ふたりの制作の模様は『FUTURE』付録の長編ドキュメンタリー『SEVEN/7』で観ることができる。

 さらに驚くべきことに、4作目『Alter Ego』は、いまもっとも注目すべき世界的R&Bシンガーのひとり、The Weekendのプロデューサー&エンジニアを務めるIllangeloが制作。昨今のモードであるアンビエントR&Bに取り組んだ同曲は、RYUJI IMAICHIの声の処理にもリバーブがかかり、空間的な奥行きを感じさせるメロウネスなサウンドに仕上がった。Alter Ego=別人格というタイトル通り、自身の抱える葛藤を描いた内省的な歌詞もまた、RYUJI IMAICHIの新境地といえよう。こうした作品を日本語で楽しめることに、ボーダーレスになりつつある昨今の音楽シーンの面白さと可能性を感じることができた。

 今回、『FUTURE』に収録されるRYUJI IMAICHIのアルバムには、さらにNe-Yoとの共作や、Brian McKnightとのデュエット曲も収録される。日本のR&B史においても、エポックとなる一枚といえそうだ。

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