TEEN TOP、少女時代などのメンバーも ラッパー×アイドルのコラボ活発化するK-HIPHOPシーン

SoYou × Eluphant「심심할때만(退屈なときだけ)」

 続いては、2017年に惜しくも解散したガールズグループSISTARのメンバーSoYou(ソユ)と、ヒップホップ・デュオのEluphantによるコラボを紹介したい。2015年にリリースされた「심심할때만(退屈なときだけ)」という楽曲で、「退屈なときだけ、何もすることがないときだけ私に連絡するあなた」と切なげに歌うSoYouに対し、Eluphantは「君」のことが大好きで連絡をしている気持ちをラップするラブソングだ。

[[MV] ELUPHANT(이루펀트) _ SimSim(심심할때만) (Feat. SoYou(소유) of SISTAR(씨스타))

 SISTARの中では他のメンバーの個性に若干押され気味だったSoYouだが、ラッパーとの相性は抜群のようで、これまで彼女が参加したヒップホップソングはどれも成功を収めている。特にこのKebeeとMinosからなるEluphantは、ロマンチックで詩的な表現を得意とするチームで、SoYouのふわっとした柔らかな歌声とよく似合う。ハイテンポで強めのビートを基調としたSISTARの楽曲では、この彼女の魅力は引き出せなかっただろう。余談だが、実はKebeeは、先述のTEEN TOPのリーダーであるC.A.P(キャップ)にラップを教えた恩師でもある。

Suzy × DPR LIVE「HOLIDAY」

 大御所が2組続いたところで、旬のラッパーが参加したトラックを紹介したい。今年1月にリリースされたばかりのシングル「HOLIDAY」で人気アイドルSuzy(スジ)の客演役を射止めたのは、フューチャーベースが最高に似合うシンギングラップの名手、DPR LIVEだ。

SUZY (수지) 'HOLIDAY (Feat. DPR LIVE)' M/V

 Suzyはアイドルグループmiss Aのメンバーとしてデビューして以降、シンガー・女優・タレントとしてマルチに活躍している(グループはすでに解散)。“国民の初恋”と呼ばれるほどの美女っぷりで、アメリカの恒例企画「世界で最も美しい顔トップ100」では5年連続ランクインするという快挙も。そんな彼女の客演を務めた新鋭ラッパーのDPR LIVEは、DPRというビジュアル・プロダクション・クルーの一員として独自の活動スタイルを取る注目株だ。先般開催された『Korean Hiphop Awards 2018』では、見事「今年の新人アーティスト」を受賞。このようにトレンドの先端に立つふたりがタッグを組むなど、韓国では次世代のヒップホップ・ムーブメントも加速している。

CHOA × Primary「Don't Be Shy」

 最後にもう一曲、ラッパーではないが、ヒップホッププロデューサーとして長年トップの座に君臨するPrimaryによるトラックを紹介したい。これまでラップミュージックを中心に手がけていた彼だが、近年はシンガーを起用した歌モノをメインとしている。2015年にリリースされた「Don't Be Shy」は、ガールズグループAOAのメンバー、CHOA(チョア/2017年に脱退)を迎えたソフトレゲエナンバーだ。エレクトロ調の楽曲が多いAOAではなかなか見せることのできなかった、CHOAの独特なアンニュイさと高い歌唱力が存分に発揮されている。

[MV] PRIMARY(프라이머리) _ Don't Be Shy(아끼지마) (Feat. ChoA(초아) (AOA) , IRON(아이언))

 本記事では以上の5曲をご紹介したが、これ以外にもヒップホップアーティストとアイドルによるコラボはまだまだ多く存在する。双方にとって新たな側面を見せることができたり、活動領域を広げる契機となったりするため、その効果の大きさは計り知れない。分断されがちなこのふたつのシーンが、韓国ではうまく共存しているのは非常に興味深い点だ。今後もどのようなコラボレーションが登場するのか、韓国の音楽シーンから目が離せない。

■鳥居咲子
韓国ヒップホップ・キュレーター。ライブ主催、記事執筆、メディア出演、楽曲リリースのコーディネートなど韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。運営サイト「BLOOMINT MUSIC」 / Twitter

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