菅田将暉は今、最も気になるシンガーだ 『トドメの接吻』主題歌からその魅力を紐解く

菅田将暉は今、最も気になるシンガーだ

 今、菅田将暉が、俳優としてだけでなくシンガーとしても注目を集めている。2016年に映画『何者』でバンドサークルに所属する青年役を演じ、菅田が劇中で歌うライブシーンが話題になったのは記憶に新しい。翌年には映画『キセキ ーあの日のソビトー』の劇中で、俳優・横浜流星、成田凌、杉野遥亮と共に組んだボーカルグループ“グリーンボーイズ”で、実際にCDデビュー。その後ソロ歌手としてもデビューを果たした。そんな菅田は現在出演中のドラマ『トドメの接吻』(日本テレビ系)で、主題歌「さよならエレジー」も担当している。

 本日3月11日に最終回を迎える『トドメの接吻』は、愛が歪んだクズなナンバーワンホスト・堂島旺太郎(山崎賢人)が、個人資産100億円とも言われるホテル王・並樹グループの社長令嬢・美尊(新木優子)を手に入れるため、何度も“死”と“時間”を繰り返す模様を描く。第1話では“邪道ラブストーリー”ではなく、“一風変わったホラー”なのでは? と思っていたが、回を重ねるごとに、多角関係が発展していき、歪んだ愛と純粋な愛、そしてそれぞれの思惑が絡み合い、面白さが加速していった。

 物語が進むにつれ登場人物の隠されていた本音と過去が浮き彫りになる中で、最後の最後まで正体が明かされていないのが、謎のストリートミュージシャン・春海一徳(菅田将暉)である。“キス女”こと佐藤宰子(門脇麦)の正体を並樹尊氏(新田真剣佑)にほのめかしたり、「何度も同じ時間を繰り返していると、もとの出来事が反発して自分に降りかかってくる」などと意味深な発言をしたり、宰子と“普通のキス”ができたりと謎が多い。まるで彼だけは、すべての登場人物の過去・現在・未来を知っているかのようだ。

 また劇中では、<おらは死んじまっただ>から始まり<おらは生きかえっただ>で終わる楽曲「帰って来たヨッパライ」や「はじめてのチュウ」など、物語と関連する歌を歌うことでも話題になっている。そんな春海のとらえどころのないキャラクターを、より一層味わい深くしているのは、彼の全身から漂うミステリアスな雰囲気。それは菅田自身の役者としての才はもちろんのこと、彼の“歌声”も要因の一つではないだろうか。

 菅田の歌声は、芝居同様に“独特な色気”を感じさせる。無邪気な少年らしさと優雅な大人らしさ、熱さと冷静さ、力強さと繊細さ、その対極にあるもの同士が絶妙に混ざり合う。カメレオンのように曲調に合わせて変化し、何色にも染まることができる。だが、彼にしか出せない色を作り出す。菅田将暉らしい歌、というよりも菅田将暉にしか表現できない歌なのだ。

 たとえば、2月21日にシングルリリースされた主題歌「さよならエレジー」は、孤独の中で見出す愛情のカタチについてもがいてる様を真っすぐにぶつけたロックナンバー。『トドメの接吻』の脚本をもとに菅田がアイデアを出し、石崎ひゅーいが作詞作曲を務めた。通常バージョンのほかに、アコースティックバージョンもあるのだが、アコースティックバージョンの方がより艶っぽく、悲哀に満ちている。もちろん曲調やテンポの違いもあるが、それ以上に印象を変えているのは、菅田の歌い方の違いだ。サビの<舞い上がって行け/いつか夜の向こう側>の<側>の部分の歌い方が、アコースティックバージョンでは、「が」と「わ」の間に小さい「ん」が入っている。この「ん」からの語尾の伸びが、耳に余韻を残す。

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