TEAM GENESISのPATOが徹底分析:ジャスティン・ティンバーレイク、「スーパーボウル」ステージが成功した理由
一方で、あらゆる方面への深いリスペクトも感じられるパフォーマンスだったと、PATO氏は続ける。
「中盤では、NFLのロゴの上でパフォーマンスを披露して、しっかりとゲームを盛り上げていたのも印象的でした。さらに、ハーフタイムショーの伝統に倣って、鼓笛隊とともにパフォーマンスをしていたのもポイント。自身は、スタンドマイクが動くユニークなステージに乗って、対比的に見せていたのが上手かったです。
極め付けは、やはりプリンスとの共演でしょう。長年、プリンスのサポートを続けていたアーティストのシーラ・Eは、プリンスから生前に『僕がホログラム化されるようなことは防いでくれ』と言われていたそうで、ホログラムでの共演に反対していました。しかし、ジャスティン側はシーラ・Eと話し合いを行って和解し、結果としてホログラムを使わずにプリンスとの共演を果たしたのです。演出が変更となったのは直前だったにも関わらず、巨大な布製のスクリーンにプロジェクターで映像を投射するというアイデアは素晴らしく、布が風に揺れることさえ演出の一部として活かしていたのには感動しました。また、この共演に合わせて街が紫色の明かりで染まっていく演出は、プリンスの生まれ故郷であるミネソタ州ミネアポリスだからこそ実現したもので、プリンスが街の人々にリスペクトされていなければ成り立たなかったものだと思います。
テクノロジーの進化が、ライブ演出をさらに刺激的で面白いものにしていくのは間違いありません。しかし、大胆なアイデアや人を楽しませようという気持ちなどもまた、とても大切な要素であることを再確認しました」
日本でも、2019年にはラグビーワールドカップが、2020年には東京オリンピックが控えており、スタジアム規模でどんなショーが披露されるのか、期待が高まるところだ。
「1993年のマイケル・ジャクソン以降、『ハーフタイムショー』はシアター型のパフォーマンスとして洗練を重ねてきた歴史があり、テクノロジーの面でも費用の面でも、簡単に真似ができるものではありません。しかしながら、前述したようにアイデアや気持ち次第で、人を感動させるショーを作り上げることはできます。たとえば、僕が所属するLDHのライブでは、LEDによる照明技術とダンスを組み合わせた『SAMURIZE from EXILE TRIBE』のパフォーマンスが人気を博していますし、可動式のステージを人の手によって動かすことで、これまでにない有機的なステージ演出を実現してきました。いわば、テクノロジーと人力を組み合わせることで、新しい表現を生み出してきたのです。日本ではライブ演出に関する規制が厳しく、たとえば火炎放射器などを使用することは難しいのですが、それを“表現の規制”と捉えるのではなく、柔軟なアイデアであっと驚くものを生み出せれば、日本からでもきっと世界にも通用するショーを創造できるはずだと考えています」
(取材・文=編集部/写真=Christopher Polk/ゲッティ イメージズ)
■リリース情報
ジャスティン・ティンバーレイク『マン・オブ・ザ・ウッズ|Man Of The Woods』
発売中/配信中
国内盤CD:2500円+税
歌詞・対訳・解説付