>  > 岩里祐穂×森雪之丞対談レポ

『岩里祐穂 presents Ms.リリシスト〜トークセッション vol.4』

岩里祐穂 × 森雪之丞が語り合う、作詞家の醍醐味「“自分が音楽をいかに理解できるか”から始まる」

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BaBe「I Don’t Know!」

岩里祐穂

岩里:アイドル編は雪之丞さんの懐かしの1曲、BaBe「I Don’t Know!」を選びました。雪之丞さんといえば、浅香唯さんの「C-Girl」、斉藤由貴さんの「悲しみよこんにちは」やシブがき隊など、アイドル曲でもたくさんの名曲がありますが、これが特に好きで。

雪之丞:BaBeは「Give Me Up」がデビュー曲だけど、マイケル・フォーチュナティのカバー曲だったので、まったく歌詞は違うんですが訳詞扱いになっています。

岩里:あの頃は石井明美さんの「CHA-CHA-CHA」や森川由加里さんの「SHOW ME」、荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」といった洋楽カバーが盛んな時代でしたよね。BaBeは作曲が中崎英也さん。洋楽カバーのデビュー曲がヒットして、次はそれを超える楽曲を作らないというプレッシャーもある中、見事な曲だなと当時から思ってました。

雪之丞:これは1987年、バブルの雰囲気が飛び交っていた時代の曲。僕自身バブルで良いことも別になかったし、反逆の詩人としては、それを強く裏返してやろうと思って(笑)。バブルにはあまり良いイメージがないけれど、当時はキラキラと街中がファッションページのような景色で溢れていました。確かに夢はあるんだけど、誰か裏返すやつがいた方が良いかなと思ったんです。BaBeの2人が決してバブルに浮かれて踊るタイプの子たちじゃなかったということもありましたね。

岩里:時代に対する、アンチテーゼとしてのメッセージだったんですね。<ショーウインドウ><バーゲン><キャッシュ><ファッションページ>という言葉が散らしてあるのも印象的でした。だから、バブリーな気分を楽しみたい人が楽しめる楽曲にもなっていて。でも、このままじゃいけないんじゃないかというメッセージも自然と伝わってくる。

雪之丞:やっぱり、みんなどこかに不安はあるものじゃないですか。踊り狂ってても、終電の時間を気にしなきゃいけないみたいな。正体の知れないオジサンがいつまで晩御飯を奢ってくれるんだろう、みたいな(笑)。

岩里:「I Don’t Know!」の歌詞の登場人物の設定はどのようなものだったんですか? 私は彼でもありだし、女友達でもありだなと思っていたんですけど。

雪之丞:「Give Me Up」は彼だけど、これは性別は関係ないですね。女の子同士で当てはめていただいてもいいかと。

岩里:雪之丞さんは普通だったら「みんなに愛を配る天使がいるから大丈夫」と書くところを、<みんなに愛を配る 天使なんていないから>と書くんですよ。そこがやっぱりすごいなと。天使なんていないんだから自分で走り出しなさいという、そのメッセージが素晴らしいなと思いましたね。世に出回るほとんどの曲が「踊り明かそう」という内容で終始していた時代でしたから。

雪之丞:バブルは、いつかは崩壊する感じがありましたからね。この曲についてプロデューサー視点で言うと、アイドルが不遇な時代に入っていくちょっと前、BaBeという2人の女の子――身近にいるような女の子たちをどうキラキラさせるかについては考えましたね。僕もアイドル曲はこの後あまり書かなくなるから、最後に自分ができることは何かなと考えて書いた曲でもありました。

岩里:この曲は<I Don’t Know Lonliness 君の Lonliness>というサビの、<Lonliness>の繰り返しが気持ちいいんですけど、<I Don’t Know Lonliness>に当時は何となく違和感があったんです。「your」を<君の>にして日本語と英語を混ぜていたり。面白いサビですよね。日本純正の曲が洋楽の訳詞のように聴こえて。

雪之丞:「Give Me Up」からの流れで洋楽的なエッセンスを入れようと思っていたのと、僕自身も洋楽を聴いて生きてきたということがあって。そういったことを歌詞にも反映させた曲でしたね。

中川勝彦「Skinny」

森雪之丞

雪之丞:僕が岩里さんの2曲目に選んだのは、1985年の「Skinny」。しょこたん(中川翔子)のパパの曲ですね。中川勝彦さんはすごくかっこいいシンガーソングライターでもあり、ロックボーカリストですが、この曲は岩里さんが詞を書き始めて何年目くらいの時のものですか?

岩里:新人2年目でしたね。1985年の作品です。『Ms.リリシスト』はシンガーソングライターとしてのデビューから数えて35周年の作品だったのですが、作詞家としては私、堀ちえみさんの「さよならの物語」が本格的なデビューなんですよ。それが83年。

雪之丞:なるほど。実は、作詞家同士として、すごくよく分かる気持ちがあって。もちろん岩里さんは堀ちえみの作品で、堀ちえみの世界を作ったんだけれど、自分の中にはそれとは違う世界がある。でも作詞家はそれを描けるアーティストと出会えない限り、作品として発表することができない運命なんです。岩里さんが中川勝彦さんと出会った時に、2年目の岩里祐穂がアナザーサイドの自分で何を書こうとしたのかがこの曲から伝わってきました。岩里さんのすべての作品を知ってるわけではないので、セクシーなものを他にも書かれてるとは思うんだけどね。特に男からすると<Skinny>って言葉はあまり肉感的ではなくて。でもここに描かれている男と女のある夜の世界が、とても素敵なんです。

岩里:ありがとうございます。勝彦さんとの仕事は、深夜番組『オールナイトフジ』に出ている姿を見て「この人の曲が書きたい!」と思って、ディレクターのところに行ったのがきっかけでした。

雪之丞:そのディレクターのことは知っていたの?

岩里:知りませんでした。

雪之丞:書きたいと思って行動に移した。すごいね。

岩里:それから「何か書いておいで」とテストを受けて(笑)、アルバム用に数曲書かせてもらって。それは曲先だったんですけど、「祐穂ちゃん、次はシングル曲を詞先で書いておいで」と言われて、「え! 詞先ですか?! 私、詞先は……」みたいな感じで……。

雪之丞:これが生まれて初めての詞先だったの? 詞先、良いよ。

岩里:ありがとうございます。「Skinny」は、ディレクターからタイトルのお題をいただいて書いた曲でした。おそらく中川勝彦さんの透き通るようなビジュアルから出てきた言葉だと思うんですけど。

雪之丞:でも、<Skinny>を相手の女性を表現する言葉に使ったのはすごく良いよね。それによって、すごくセクシーさやピュアさを感じる。僕、昔、「アスピリン」って言葉を歌詞として発見したことがあって。その時とっても褒められたんだけど、この歌詞の中の<アスピリン>も褒められなかった?

岩里:それは……褒められなかったです(笑)。ムーンライダースの白井良明さんが曲をつけてくださったんですけど。でも詞先は、自分の書いた詞がこんなふうな曲になるんだって、贈り物をもらったみたいな気持ちになりました。

雪之丞:そうだね。詞先、結構好きですか?

岩里:いや……苦手なんです。

雪之丞:良い詞を書くのに…。でも難しいよね、詞先って。

岩里:何の情報もないところから書くのは、面白くもあり、難しい。もちろんそんなことは言ってられないですけどね。詞先、自信持ってやってみようかな。

雪之丞:<唇のラインきつくなぞって 聞き分けのない肌で 砂浜のオペレッタ>この流れもすごい好きです。彼の声にも合っているし、良い作品だと思いました。

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