Juice=Juiceはハロプロ世界戦略の試金石となるか? ワールドツアーなど海外展開から読み解く
ハロー!プロジェクト所属のグループJuice=Juiceは今年、『Juice=Juice LIVE AROUND 2017~World Tour~』と題したワールドツアーを行っている。9月8日のメキシコ公演を皮切りに、イギリス、フランス、ドイツ、マレーシア、インドネシア、台湾の7カ国でライブを敢行し、12月にはペルー、チリ、ブラジル2都市と南米を回る公演の追加を発表。このJuice=Juiceによるワールドツアーは、ハロー!プロジェクトによる今後の海外戦略における試金石となるだろう。
もともと、ハロー!プロジェクトは海外にも熱心なファンベースを持っていた。その海外ファンの存在を所属事務所のアップフロントが明確に意識し始めたのは、2013年のこと。2月に、各グループの近況やライブパフォーマンスが世界中どこからでも見られる週一配信のYouTube番組「ハロ!ステ」がスタート。同年4月にリリースされたモーニング娘。の53rdシングル『ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない』以降、YouTubeにアップされたMVには日本語歌詞と共に英語字幕がつくようになった。また、その頃から海外でのライブ展開にも積極的になり、Berryz工房によるタイ公演、℃-uteによるパリ・台北・メキシコでの公演、モーニング娘。によるニューヨーク・ヒューストン・韓国での公演と、2013年以降、毎年必ずハロプロ所属グループによる海外公演が開催されている。
ハロプロ所属グループによる海外公演はこれまでにも何度も開催されてきたものの、短期間で10カ国を回るワールドツアーとなると、Juice=Juiceが初めてだ。この試みにJuice=Juiceが選ばれた理由は、まず何と言ってもパフォーマンススキルの高さにあるだろう。メジャーデビューした2013年から今年6月まで、宮崎由加・金澤朋子・高木紗友希・宮本佳林・植村あかりの5人で活動してきた彼女たちは、2015年から2016年にかけて、日本全国で220公演の単独ライブを行うことを目標としたツアー『Juice=Juice LIVE MISSION 220』を開催。実際には全225公演の単独ライブを行い、2016年11月には初の日本武道館公演も成功させている。このライブ経験で培われたスキルは、特に歌唱面においてハロプロ内でも最高峰の呼び声が高い。
現在は段原瑠々と梁川奈々美(カントリーガールズと兼任)が新メンバーとして加わった7人体制となっているが、段原瑠々は研修生時代から「我が軍の歌姫」と評されるほどの歌唱力の持ち主で、梁川奈々美も研修生歴7カ月でカントリーガールズに選ばれた逸材。この2人が加入することで、メンバー間の関係性にも変化が生まれ、マンネリ状態に陥ることなく新鮮さを保つことができている。また、新メンバーも含めて全員が高校生以上の年齢でハロプロ内では小所帯の7人と、他のグループに比べると小回りが利く点も、初めてワールドツアーを行うグループとしてはうってつけだったと言えるかもしれない。
加えて、彼女たちのディスコグラフィに多国籍なテイストの楽曲が少なくないことも理由の一つとして挙げられる。つんく♂自ら「ラテンEDM」と評した、フラメンコを取り入れた3rdシングル曲「裸の裸の裸のKISS」。タンゴ調の4thシングル曲「ブラック・バタフライ」。フレンチポップが意識され、歌詞にもフランス語が登場する6thシングル曲「Ça va ? Ça va ?」。今年4月にリリースとなったシングルの「地団駄ダンス」は、コミカルなノベルティソング的楽曲だが、祭りの衣装に身を包んだメンバーが楽しげに踊るMVも含めて、日本的な意匠を強く押し出した一曲。目下の最新曲である配信限定シングル「Fiesta! Fiesta!」は、明確にワールドツアーを視野に入れた、スペイン語歌詞ありのラテン系の楽曲で、カップリングには「Ça va ? Ça va ?」と両A面扱いのシングル「Wonderful World」英語バージョンも収録されている。これらの楽曲すべてがJuice=Juiceの将来的な海外展開を見据えて用意されたもの、というわけではないだろうが、今後の海外戦略における重要なファクターの一つになっていることは確かだ。