追悼チェスター・ベニントンーー彼とLinkin Parkが音楽シーンにもたらしたもの

 Linkin Parkのチェスター・ベニントンが7月20日の現地時間9時前、カリフォルニア州ロサンゼルスにある自宅で死亡しているのが発見された。

 バンドは5月に新作『One More Light』をリリースしたばかり。チェスターもまだ41歳の若さということもあり、世界中のメディアやミュージシャンから突然の死に対する悲しみの言葉が次々と寄せられている。

Linkin Park『One More Light』

 今回の訃報は、音楽シーンにとってどれだけ大きなショックを与えたものだったのか。デビュー前の『Hybrid Theory』からバンドを知るライターの西廣智一氏は、チェスターの死を悔やみつつ、彼らがシーンに与えた影響についてこう語る。

「アルバムをリリースして、ライブで新旧の曲を混ぜたときにどうなるかをアメリカや日本をまわるツアーで提示していくはずでしたし、バンドとしてはこれから、という時期でした。『One More Light』は久々にメンバーと会って、チェスターの調子が良くないことを考慮して作られた作品ということだったので、その予兆が無かったわけではないですが、とても悔やまれます。30歳前後のロックバンドは必ずと言っていいほど通っているバンドですし、チェスターの歌声を参考にしたボーカリストも多いと思います。日本のバンドだと、11月に共演予定だったONE OK ROCKをはじめ、CrossfaithやColdrainといった世代に強い影響を与えていますね」

 テン年代以降のバンドに大きな影響を与えたチェスターのボーカリストとしての才能は、どのようなものだったのか。同氏はバンド内における彼の重要性について、こう解説してくれた。

「Kornなどが起こしたヘヴィロックのムーブメントが一段落したところに登場した彼らは、ニューメタルと揶揄されながらもポップスとしての強度を持ち合わせ、稀有なバランス感覚で商業的にも大成功を収めました。その前後にはPapa Roach、Trapt、P.O.Dなど彼らに似た音楽性のバンドも多く登場しましたが、いずれもLinkin Parkのようにはなれなかった。それはやはり、チェスターの圧倒的な歌唱力に敵うものがいなかったということでもあります。これまでバンドにおける大半の楽曲を手掛けるマイク・シノダによるラップもバンドの特徴でしたが、3rdアルバム『Minutes to Midnight』以降、彼はラップの比率を抑えてプロデュースに専念しました。これもやはり歌を軸にやっていく決意表明であり、音楽性が変化してもチェスターの歌があればバンドのアイデンティティは守られるという決断だったと思われます」

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