嗣永桃子はプロフェッショナル・アイドルだった 後輩に“未来”託したラストステージ

ボーカリスト・嗣永桃子

 6月28日にリリースされた『嗣永桃子 アイドル15周年記念アルバム ありがとう おとももち』の中で、特筆すべきはこれまでの楽曲を1人で歌い直したカバーの秀逸さだ。現在の嗣永の歌によって新たな息吹がもたらされた珠玉の名曲たち。澄んだ歌声と丁寧な歌唱によって再確認できるメロディと浮かび上がっていく楽曲の新たな姿。良くも悪くも“つんく歌唱”とも言われ、一聴してわかるハロプロっぽさのある個性派歌唱のメンバーが多い中、こんなにも素直でまっすぐな歌唱スタイルのボーカリストは少ない。

 そんなボーカリスト・嗣永桃子が、観る者の心をさらに惹き込んでいったのは、陽も落ち始めた中盤、ピアノ伴奏による2曲だった。〈ステキな女性になりたくて〉、そう歌いながらビジョンに映し出される嗣永の横顔の美しさにドキッとする。ちょうど10年前、当時中学生だったBerryz工房には少し大人びたように思えた「VERY BEAUTY(Berryz工房)」だったが、いつしかすっかり楽曲に見合う女性になっていた。つづく、「I NEED YOU(Buono!)」は4月にラグジュアリーなライブ形式で行われた『嗣永桃子 HAPPY DINNER TIME~ももにさちあれ!~』や先日の『Buono!ライブ2017 ~Pienezza!~』でもアコースティックスタイルで披露され、こみ上げてくる想いが多々あった楽曲だが(参考記事:Buono!は満員の横浜アリーナで“最高のラスト”を迎えたーーロックアイドルとしての10年間の歩み)、この日はまた違う様相を呈していた。

〈夕陽がやけに眩しかった 泣きたい気持ち堪えてた 君のいない世界は ねぇどんな世界〉

 そう静かに歌い始める嗣永と、雲の隙間から差し込む夕陽。ステージの後ろを走るゆりかもめ、遠くに望む観覧車……、その景色が思い出に溶け込み、歌声とピアノの旋律とともに忘れることのできない情景を作り出していった。

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