NGT48はAKB48グループにおける特異点? デビュー作の特典映像全メンバー分から紐解く
Type-B
NGT48 佐藤杏樹 × 永野義弘
佐藤杏樹の乗るバスが着いたのは、果てのない荒野。彷徨い歩く彼女は、自問自答を繰り返す。「今、私はどこにいるんだろう」「今、私は常に前進している、はず」、そう言い聞かせ、彼女は自分の速度を確かめる。「そろそろまとめに入ります」と宣言し、絶壁に立った彼女は「叫ぶと思った?」とメタ発言を飛ばす。劇場公演では、センターやMCを務めることも多い佐藤。「どうする? 15歳」と自身に問いかけるシーンがあるが、彼女はこの春で高校生になった。少女の物語は始まったばかりだ。
NGT48 菅原りこ × 中島 望
「はじめまして。本日、転校してきた菅原りこです」。転校先の控え室で、同級生への初めの自己紹介をひたすら脳内プレイしていく。自己紹介を無難に終わらせたい彼女は、第一声のための咳払いのタイミング、手の甲に書いた部活動の「バドミントン」について如何に触れるか、と自意識過剰な心配、妄想が爆発する。実際の彼女は、MCではホームランを打つほどの不思議キャラだ。先生に呼ばれた彼女は、上手く教室で挨拶ができたのか。余白を残し終わる映像の続きは、実際の彼女へと投影できる。
NGT48 清司麗菜 ×宮川慶大
AKB48「会いたかった」のリズムで、<せいじれいな>と歌い、自己紹介をしていく清司麗菜の個人映像。表現力に富む歌好き少女が、どのような人物かが一発で分かる映像だ。変顔、アクロバティック、体育、音楽が得意、ペットボトルを空にする。驚くべきは、替え歌ながら原曲からの韻の踏み方が絶妙なところだ。<誤魔化さず/素直になろう>は<ごま団子/トマト/アボガド>、<隙あらば隙を突いてこう/センターに私出そうよ>。<なんてこった/パンナコッタ/なんてこった/もう/れいにゃ>に至っては、普通に読んだだけでもどこの歌詞か分かるはず。
NGT48 高倉萌香 ×高橋栄樹
新潟市にある重要文化財、旧笹川家住宅にて撮影された高倉萌香の個人映像は、監督をAKB48グループのMVや映画作品を多く手がける高橋栄樹が担当。北原白秋の詩「曼珠沙華(ひがんばな)」が元となっている。彼女の特徴的なおかっぱ頭と童顔に着物、古い家屋と不気味な鈴の音が合わさると、身の毛もよだつ恐怖を覚える。「1歳の時の誕生日のことも覚えてて」と語り出す、高倉本人と「曼珠沙華」が少しずつリンクを見せ、物語が母の胎内で見た夢であることが告げられる。ドラマ『ひぐらしのなく頃に』(BSスカパー!)では、謎の少女を演じていた高倉だが、とらえどころのない彼女の不思議なオーラが、如何なく発揮された映像と言えよう。
NGT48 太野彩香 ×及川勝仁
突如目覚めた太野彩香は、叫び声と共に再び過去へと戻る運命を繰り返すことになる。コンティニューを繰り返し、幾度も同じ場面をループする彼女。何度目かの平行世界で、彼女はカニの被り物を被った自身と対峙する。彼女が差し出した手紙に書かれていたのは、「がんばれ!」の文字。ミステリアスな世界観に、太野のニックネーム「アヤカニ」を上手く織り交ぜた映像作品だ。やがて、ループは終わり、彼女の運命は「STAGE2」へと歩みを進める。
NGT48 髙橋真生 × 関山雄太
「mau」と名付けられた髙橋真生の個人映像は、メランコリックなサウンドに乗せ、モノクロの彼女を収めた作品だ。時折、羽が手のひらから舞うのは彼女の名前とかけたものだろう。映像を手がけたのは、ミツメやLUCKY TAPESといった気鋭バンドのMV、TOKYO ACOUSTIC SESSIONをはじめとした、映像制作・MV制作のディレクションにも携わる関山雄太。映像では、キャッチフレーズの“おしゃれ番長”と呼ばれる髙橋の、中学生離れしたスタイルとファッションセンス、大人びた顔つきが目立つ。モノクロで世界を表現することを貫き通しながら、画面越しに見える彼女の色彩までも想像させるのが見事だ。
NGT48 中井りか × 中村太洸
「私、中井りかは恋に落ちています」。アイドルらしからぬ発言で始まる、グループのセンターを務める中井の個人映像は、一目惚れした彼への思いを巡る脳内裁判が舞台となる。裁判官、検察官、被告人、全ての登場人物が、中井りか。裁判が続き、彼との可能性が見え始めたある日、女性と一緒に歩く彼を目撃してしまう。脳内裁判での判決は失恋に。失恋懲役期間をもらい、当分はアイドルとして頑張っていくことを志した中井であったが……次の新しい彼を見つけるところで物語は終わりを迎える。SHOWROOMのランキングで1位を獲得し、“新潟の釣り師”の異名を持つ彼女が、いとも簡単に釣られるという、パロディー的作品であるが、映像の最後に見せる人懐っこい笑顔は、多くのファンの心を射止めてきた破壊力を持ち合わせている。
NGT48 中村歩加 × 森 翔太
キャッチフレーズに「あゆたろうの笑顔は世界を救う」を持つ、中村歩加の個人映像は「クイズ あゆたろう」。東京別視点ガイド代表の松澤と共に、東京の珍スポットを巡っていく。画面の隅にガイドとして現れるのが、副音声的役割を務める新潟米のコメ次郎、コメ代。特大サイズの飲み物が出てくるカフェ、ピンクに塗りたくられた朝倉画廊、鳥のカフェ。四択形式のクイズを挟みながら、ラストは東京の裏工作サークルへ。アバンギャルドな工作が並ぶ中、締めの一言に中村は「笑顔で世界を救える気がします」とコメントする。しかし、最後の最後でなぜか地球が爆発。とことん、アバンギャルドな映像作品だ。