THE COLLECTORSはいつだって“今”がいちばんカッコイイーー怒髪天との武道館前哨戦を観た

コレクターズ×怒髪天、“武道館前哨戦”レポ

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 「覚えておいてください。しゃべりのうまいミュージシャンは増子くんだけじゃない」饒舌MC合戦、ではなく、怒髪天先輩からの激励ステージを受けてのTHE COLLECTORS。素人には着れない(増子・談)ド派手な全身“BUDOKAN”ラッピング広告風スーツ姿の加藤とは正反対に、白シャツにジーンズ姿のシンプルで涼やかにキメた古市コータロー(Gt.)が真っ赤なES-335から繰り出す男前なリフで幕を開けた。

 武道館に向けてインフルエンザの予防接種を2回受けたという加藤。主治医(?)から気をつけるように言われたのは“突然死”……、と相変わらずのMCで飛ばしていくが、絶好調なのはもちろんしゃべりだけではない。突き抜ける高音、鳴り止まない美声を場内目一杯に響かせる。30年記念BOX SET『MUCH TOO ROMANTIC!』やベストアルバム『Request Hits』など、最近は過去の音源をあらためて聴くことも多いのだが、加藤は今のほうが断然声が出ているし、バンドのコンディションも絶好調。クールにストロークをキメながら熱い音をかき鳴らす古市は言わずもがな、寡黙に激しいグルーヴを生み出す山森 JEFF 正之(Ba.)も旧知の間柄だったとはいえ、加入してまだ2年とは思えないほど阿吽の呼吸を見せ、ともに30年間同じバンドとして活動してきたように見えた。

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 そして何より、今年1月に正式メンバーになったばかりの古沢 'cozi' 岳之(Dr.)だ。昨年、30周年〜武道館発表からの阿部耕作の脱退はいろいろなところで大きく波紋を呼んだ。ファンはさまざまな想いが駆け巡っただろうし、正直不安を抱いた人も少なくはなかったはず。しかし、アルバム『Roll Up The Collectors』、ツアー『On The Million Crossroads Rock2』を経た今、阿部とはまったくタイプの異なるcoziの野性的でドライブするビートが、THE COLLECTORSに新たな息吹をもたらしていることは目にも明らかだった。JEFF加入もバンドサウンドに大きな変化をもたらしたが、ドラムが変わると印象はより大きく変わるものだ。JEFFとcoziという攻戦的なリズム隊が生み出す猛然たるグルーヴにより、音圧・シャープさ・小気味良さ、と言ったTHE COLLECTORSのロックバンドとしての素養はここに来てさらなるアップデートを遂げたのかもしれない。

 新たな息吹といえば、この日も披露された今話題の「悪の天使と正義の悪魔」である。TVアニメ『ドラゴンボール超』(フジテレビ系)のエンディングテーマに起用されたことにより、ロックファンのみならずアニメファンにもその存在を知らしめた。評判も良く、YouTubeにアップされているミュージックビデオには、英語やスペイン語……、さまざまな国からのコメントが溢れかえっている。その生き様から“THE COLLECTORSはロック界の亀仙人だ”などと評され、世界にもその名を轟かしているのである。

 25周年のときも、昨年の野音でも感じたことだが、THE COLLECTORSはいつだって“今”がいちばんカッコイイのだ。
 
 アンコールでは、“ザ・コレクターズ”Tシャツを着た怒髪天のメンバーがステージに呼び込まれる。増子が昔から好きでカラオケでもよく歌うという曲のセッション。本人と歌うのにうろ覚えではまずいと歌詞のカンペを用意するも、歳で目が悪くなったため文字が見えない増子。「ロックじゃない」と譜面台を事前に断ったがために、結局手に持って歌うことに。「一番最悪なパターンだ、フォークジャンボリーみたいだ」と笑いを誘いつつ、「このワードが俺の口から出るとは。ではいってみましょう『夢見る君と僕』」と意外な選曲に歓声が巻き起こった。加藤の甘い歌声とシブめに枯れた増子の歌声、対照的な2人の歌声に両ファンとも酔いしれる。清水泰次(Ba.)はタンブリン、坂詰克彦(Dr.)はマラカス、上原子に至っては何も持たず、古市の横でずっと手拍子しているというレアな共演だった。こうして、愛と男気にあふれ、両バンドとも演奏している以外の時間は終始爆笑の渦に包まれた第一夜は終幕した。

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 THE COLLECTORSと怒髪天。親交も深く、イベントで一緒になることも多い2バンドだが、こうしてガチの2マンで見ると、音楽性も方向性もまったく違うはずなのに、一周まわってなぜか似ているところも多いという、不思議な関係性を感じた。次回の相手は自他ともに認めるTHE COLLECTORSの大ファンであり、一番弟子を自負する山中さわお率いるthe pillowsだ。

「今日、これ言っても仕方ないけど、山中にモッズ教えたの俺だからね!」(増子)

 ずーっとメジャーで走り続けてきたTHE COLLECTORS。愛され続けて30年。同級生はBUCK-TICKとJRと『世界の車窓から』。いろんなミュージシャン仲間が30周年と日本武道館公演を祝福している。怒髪天やフラワーカンパニーズのときもそうだった。他のバンドの喜びを我が身のようにみんなで喜ぶ、この人間味あふれた情に厚いシーンが素晴らしい。

「フレー、フレー、ザコレ! フレー、フレー、ザコレ!」

 終演後、場内に響き渡る怒髪天からの応援歌を耳にして、あらためてそう思った。後輩バンドたちが、満を持しての先輩の晴れ姿を今から楽しみにしているのだ。

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「怒髪天、the pillows、フラカン、みんな40代で武道館経験してますけど、コータローくん52歳、俺56歳、JEFF53歳という……。火葬場に送られるような心境で。あとは灰になるだけ、という気持ちで頑張りたいと思ってます!」(加藤)

 年齢を度々ネタにするが、実際は歳を重ねることにそれほど興味がなさそうなのが最高だ。言い方を変えれば、ファンと一緒に老いていくことを楽しんでるくらいの度量が彼らにはある。3月1日は心のベスパを叩き起こして一番上等のスーツを着て、日本武道館に向かおう。

(写真=柴田恵理)

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログtwitter

■ライブ情報
『THE COLLECTORS “MARCH OF THE MODS” 30th Anniversary』
日程:2017年3月1日(水) 開場 17:30/開演 18:30
会場:日本武道館

THE COLLECTORSオフィシャルサイト

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