小野島大の新譜キュレーション 第8回
UK、日本、シリア、US……小野島大が選ぶ、世界各地の刺激的なソロアーティストによる新譜
UKのエレクトロニカ系の才人、ボノボ(Bonobo)ことサイモン・グリーンの4年ぶり6作目『Migration』(Ninja Tune/Beat Records)。エレガントで優雅でメランコリックでノスタルジックな、白昼夢のように美しいダウンテンポ・エレクトロニカ〜ディープ・ハウスとして良質な仕上がりです。生楽器と電子音を緩やかに行き来しながら、幻のように儚く夢のように優しい光景を紡ぎ出していきます。しかしイノウ・グナワの参加したアフロ・中近東なトライバル・ハウスや、チェット・フェイカーことニック・マーフィーが歌う官能的なハウス・トラックなどが印象に残りますが、なんといってもライが参加した「Break Apart」が素晴らしい。ミュージックビデオの出来映えも秀逸です。
アメリカのベテラン、ジョン・ベルトラン(John Beltran)の、通算13作目にあたるニュー・アルバムが『Everything at Once』(Delsin Records)。ドリーミーでメロディアスなミニマル・テック・ハウス〜アンビエント。手練れの技とでも言うべき美しくファンタジックなエレクトロニカを展開します。寒い冬の夜長に暖かくして聴きましょう。
先頃来日公演を行ったばかりのティコ(Tycho)ことスコット・ハンセンのソロ・プロジェクト5作目が『Epoch』(Ghostly International/Hostess)。従来のドリーミーでスペイシーでアンビエントなポスト・ロック〜エレクトロニカ〜チル・ウエイヴという路線を踏襲しつつ、もう少しバンド的なグルーヴ感を強調した感じ。ファンなら期待を裏切られることはないでしょう。
デトロイト出身、弱冠25歳というジェイ・ダニエル(Jay Daniel)のファースト・アルバム『Broken Knowz』(Technicolour/Ninja Tune/Beat Records)。生楽器を導入したフィジカルで無骨なグルーヴがセオ・パリッシュを彷彿とさせるアフロ・トライバルなディープ・ハウスを展開。なお母親はカール・クレイグ作品でお馴染みのシンガー、ナオミ・ダニエルだとか。