小野島大の新譜キュレーション 第6回
ニコラス・ジャー、オヴァル、ROVO……小野島大が選ぶ“音質”にこだわって聴きたい新譜8枚
ニューヨーク生まれ、チリ育ちのニコラス・ジャー(Nicolas Jaar)。ロック・バンド、ダークサイドでも活躍する弱冠26歳の鬼才による5年ぶりのソロ2作目が『Sirens(セイレーンズ)』(Other People/Beat Records)です。繊細で美しいダウンテンポ・エレクトロニカですが、ロカビリーやR&B、ドゥー・ワップ、レゲエ、ジャズ、現代音楽など幅広い音楽性を、奥深く官能的でエモーショナルなダブ・アンビエント音響で処理した才能は驚くべきものです。ボン・イヴェールやフランク・オーシャンの新作に比肩すべき傑作と言えるでしょう。
オヴァル(Oval)ことマーカス・ポップの6年ぶり新作が『popp』(UOVOOO / Headz)。アカデミックで理論が先行した実験音楽家という印象の強かった人ですが、ギターやドラムなどを彼自身が演奏したという前作『O』あたりからオーガニックで人間味溢れる作風に変化、本作ではその路線をさらに押し進めたとびきりポップでカラフルなエレクトロニカが聴けます。オヴァル流クラブ・サウンドを目指したという触れ込みですが、むしろファック・バトンズあたりに近いファンキーなシューゲイズ・エレクトロニカという感じで、個人的にはかなりツボでした。CDでもいいですが、OTOTOYでリリースしている24bit/44.1kHzのハイレゾで聴くことをお勧めします。
神奈川のポスト・ロック3人組miaouの新作『Drops EP』はボーナス・トラックも含めた5曲入りカセット(MP3ダウンロードコード付き)でのリリース。ドリーミーでメロディアスで浮遊するようなエレクトロニカを展開しています。愛らしくて優しくて温かみのある箱庭的なサウンド・プロダクションがとても素敵です。Bandcampでデータのみでも入手可能。
ミニマル・ダブの鬼才モノレイク(Monolake)ことロベルト・ヘンケの4年ぶり9作目『VLSI』(MONOLAKE/IMBALANCE)。ダブ・テクノ、ダブステップ、グリッヂなどをネクスト・レベルに引き上げるような圧倒的に切れ込みの鋭い、硬質で強靭で荘厳で深遠な音響アート作品に仕上がっています。できるだけいいオーディオで、大きな音で聴きたい作品。タイトルの『VLSI』は超大規模集積回路(Very Large Scale Integration)という意味だそうです。