石井恵梨子の「ライブを見る、読む、考える」 第6回:Klan Aileen
死に向かうサイケデリック? 新鋭・Klan Aileenの”轟音の意味”を石井恵梨子が読む
終演後に少し話を聞いたのだが、驚くべきことに、彼らは「ニューウェイヴもポスト・パンクもほとんど通っていない」という。私が比較対象としていくつか挙げたバンド名も「スワンズだけ、合っている」そうで、ソニック・ユースなどまったく通ってこなかったという。松山は「スワンズとかブラック・サバスみたいな、重くて間延びした音楽が好きでした。普通にサイケって言われると思ってたから……ポスト・パンクって言われると的外れですよね」と笑う。心底びっくりした。
高校時代にロックンロールやパンクを聴いていた二人が、初めてサイケという単語に出会ったのはゆらゆら帝国の作品がきっかけだった。「日本語の響きを活かした、日本独自のロック」にこだわっていたゆらゆら帝国に影響を受けた若手は多数いるが、その中のひとつであり、突然変異のような存在がKlan Aileenなのだろう。松山の言葉がとても印象的だった。
「坂本慎太郎さんも言ってましたけど、カラフルな壁がグニャグニャしていく=サイケ、ではないんですよ。もっと砂漠っぽい感じ。誰もいない感じ……死に向かってる感じ、なんです。僕のサイケは」
酩酊感のない、ひりついたサイケ。不気味で不機嫌で殺伐とした2016年のサイケデリック。いや、松山が言っているだけで「サイケ」という分類が合っているのかどうかは正直わからない。ただ、Klan Aileenというまったく新しいバンドの存在が、次世代のロックリスナーに与える衝撃は、想像以上に大きいものとなるだろう。
(ライブ写真=古渓一道)
■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。
■リリース情報
『Klan Aileen』
発売:2016年10月19日
価格:¥2,500(税抜)
〈収録曲〉
01. 離れて
02. Fog
03. Nightseeing
04. Adrift
05. 死の集まり
06. Selfie
07. 静かに思われる
08. Happy Memories
09. 女の脳裏に
10. Fascism