メトロノームがいよいよ復活! テクノへのこだわりとV系的世界観でメジャーシーンに挑む
ゼロ年代初頭、90年代に一世を風靡したヴィジュアル系が世間的には〈オワコン〉の極みだった頃、インディーズでは様々なバンドたちが胎動し、当時のヴィジュアル系シーンはある意味「豊か」だったように思う。
市川哲史氏との対談でも言及したように、(参考:LUNA SEAの“ROSIER”はまさに〈VISUAL SHOCK〉だった 市川哲史×藤谷千明〈V系〉対談)、ヴィジュアル系ブーム後のインディーズシーンはかなり雑多な「ヴィジュアル系」バンドが群雄割拠していた。
その中でもとびぬけて〈異質〉であったのがメトロノームだ。
98年、高校の同級生だったシャラクとフクスケによって結成され、01年にリウ(TALBO-2)、ユウイチロー(DRUM)が加入したあたりから、 V系シーンで頭角を表してくるようになる。
『不機嫌なアンドロイド(02年)』『1メトロノーム(03年)』で注目を集め、『UNKNOWN (04年)』はNARASAKI氏(COALTAR OF THE DEEPERS・特撮他)プロデュースということでも話題を呼んだ。
07年にユウイチローからシンタロウへ、ドラマーの交代はありつつも、リリースや動員は右肩上がりで、10周年は今はなきSHIBUYA-AX、09年に「現時点では新しいものを生み出すことが出来ない(※公式サイトより)」という理由で無期限の活動休止を宣言し、渋谷C.C.Lemonホール(現・渋谷公会堂)のワンマン公演で活動を一旦停止させた。その時のツアータイトルは『Please Push Pause』、そして9月19日に東京・Zepp Tokyoで行われる復活ライブのタイトルは『Please Push Play』。
当初「21世紀型宗教音楽 メトロノーム」と名乗っており、〈05年から来た〉という「いかにも」な設定を掲げ、メンバー表記は「VOICECORDER(シャラク)」「TALBO-1(フクスケ)」「TALBO-2(リウ)」。先述の活休ライブと再始動ライブのタイトルをみてもわかるように、P-MODELや有頂天に影響を受け、世が世なら〈ナゴム系〉の範疇に入りそうなテクノポップ・ニューウェーブサウンドとV系的な切ないメロディも垣間みえ、そこにボーカルのシャラクの気の抜けたボーカルと、後ろ向きな歌詞が乗る。
テクノへのこだわりとV系的世界観の両立がメトロノームの面白さなのだ。
テクノ馬鹿と馬鹿テクで構成されたバンドが何故かヴィジュアル系シーン(ちなみに初ライブはヴィジュアル系の老舗ライブハウス、池袋サイバーである)で10年以上活動していたというのも今考えると不思議な話なのだが、〈異質〉ではあったけれど、決して〈異端〉ではなかったし、『フールズ・メイト』や『SHOXX』といったヴィジュアル系専門誌に出て、ヴィジュアル系イベントにも普通に出演していた(そして結構人気があった)。それがゼロ年代ヴィジュアル系シーンの「豊かさ」の象徴だったように思える。
だが、しかし、あの時代のヴィジュアル系シーンはある種の〈箱庭〉であり、その面白さがV系村の「外部」に響くことは少なかった(これを閉鎖的ととるむきもあるが、箱庭だったからこそ育った文化もあるので私は一概に悪だとは思わないけれど)。
活動休止後、シャラクと解散時のドラム、シンタロウ(当時の表記・新太郎)はパンクバンドGalapagosSとして「ヴィジュアル系シーン」から距離を置いた活動をしていたのも、〈箱庭〉の外に出たかったのかもしれない。