音楽フェスの新たな方向性を示した『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』レポート

 7月30日〜31日と29日の前夜祭を含む3日間、宮城県石巻港雲雀野(ひばりの)地区で『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』が開催された。小林武史、櫻井和寿をはじめとするミュージシャン47組、アーティスト9組、フード関連(シェフ・サービスメンバー39名、出店者40組)が参加し、約4万人の観客を動員したこのフェスは、2017年夏に行われる本祭『Reborn-Art Festival 2017』のプレイベントと位置付けられていた。

 『Reborn-Art Festival』とは、東日本大震災から5年が経ち、復興に向けて進んできた現地の人々の“生きる力”“生きる術”に共感したアーティストが、東北の自然や食材、歴史、文化を舞台にしながら、そこに暮らす人々と共に繰り広げる総合祭。今回のイベントにも、本祭に向けた取り組みが数多く展示されていた。

 

 会場に入って最初に目に入るのが、人をかたどった全長33mの巨大な作品「空気の人」(鈴木康広/制作は武蔵野美術大学空間演出デザイン学科の有志メンバー)。さらに“目が覚めると過去の記憶をすべて失っていた男の経験”をテーマにしたインスタレーション「three tables for amnesia(a part of“figment”)」(さわひらき)など、石巻/牡鹿半島を舞台に行われる本祭『Reborn-Art Festival 2017』の参加アーティストや予定されている内容を紹介するコーナーも。また、メインステージの装飾には、フランス生まれのアーティスト・JRによる作品「INSIDE OUT」が用いられていた(牡鹿半島、石巻の市街地を巡りながら撮影された地元の人たちのポートレイト写真もステージデザインの一部に使用)。会場内にもポートレイト撮影用のトラックが置かれ、このアートに参加したい観客が列を作っていた。また、メインステージのビジョンに石巻の海の映像を同時中継したり、各アーティストのプロフィールを映し出すなど、このイベントのコンセプトに沿った演出も印象的だった。

 

 フードエリアも充実。三陸・雄勝産の帆立や牡蠣など、その日水揚げされた新鮮な魚介類を漁師さん自らが焼いてくれる屋台エリア「ハマ マルシェ」、地元の飲食店が鹿、ホヤ、鯨などの名物料理を提供する「ハーバー横丁」などで東北の食文化を楽しむことができた。また、会場内に設置されたレストラン「Reborn−Art DINING」では日本各地から集まったトップシェフたちが、やはり地元食材を使ったスペシャルメニューを提供。ランチは2800円、ディナーは6000円と“フェスごはん”としてはかなり高価だが、3日間を通してすべて満席。メインステージから聴こえてくる多彩な音楽を聴きながら、質の高いランチ、ディナーを堪能できるこのダイニングは、フェスの新しい楽しみ方を提示していた。

 

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