音楽フェスの新たな方向性を示した『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』レポート

『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』レポ

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オープニング (c)Reborn-Art Festival

 東北との関わりの中で、多様な音楽、芸術を発信するという『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』のコンセプトは、もちろん音楽にも色濃く反映されていた。それを象徴していたのが、オープニングのステージ。このイベントのホストバンドであるBank Band(小林武史/Key、櫻井和寿/G&V、小倉博和/G、亀田誠治/Ba、河村“カースケ”智康/Dr、山本拓夫/Sax、西村浩二/Trumpet、四家卯大/Cello、沖祥子/Violon、イシイモモコ/Cho、小田原ODY友洋/Cho)、SUGIZO(G)、ATSUSHI(Dragon Ash)に加え、地元の和太鼓奏者「渡波獅子風流塾」、石巻市立桜坂高校、石巻好文館高校の合唱団、さらに石巻を中心に活動している男性コーラスグループ石巻メンネルコール、女性コンテンポラリーダンサーなどもステージに上がり、音楽ジャンル、地域性、年齢、性別などを超えたセッションを繰り広げたのだ。このセッションのプロデュースとアレンジメントはもちろん小林。名プロデューサーとして知られる小林の敏腕ぶりを改めて実感できるオープニングだったと思う。

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小林武史(Bank Band) (c)Reborn-Art Festival

 ライブは基本的に“Bank Band+ゲスト・ボーカル”とバンド、ソロアーティストなどのステージが交互に行われる構成。2日目(31日)のゲスト・ボーカルにはSalyu、佐藤千亜妃(きのこ帝国)、安藤裕子、ナオト・インティライミ、ハナレグミ、MISIA、櫻井和寿が登場。なかでも印象的だったのがMISIAのアクト。震災のことに直接触れ、死者への祈りを捧げ、“みんなが笑顔になれるのが本当の復興”というメッセージを伝えた後で歌われた「明日へ」は、このイベントを石巻で行うことの意味を伴い、大きな感動を生み出していた。また櫻井和寿は「スローバラード」(RCサクセション)「ロストマン」(BUMP OF CHICKEN)などの貴重なカバーを披露。「この曲を歌うためにここに来たようなもの」とまで言い切った新曲「こだま、ことだま。」(Bank Band)における深い祈りにも似た歌声も、このイベントを象徴するシーンのひとつだった。

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櫻井和寿、MISIA (c)Reborn-Art Festival

 さらに赤い公園、ストレイテナー、Mr.Children、YEN TOWN BAND、GAKU-MCなどが個性あふれるステージを展開した。Mr.Childrenはまだ日差しの強い14時50分からのスタート。「名もなき詩」「Tomorrow never knows」「HANABI」「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」「innocent world」「足音 〜Be Strong」といったヒット曲を惜しげもなく披露した構成によって、最高の盛り上がりを演出してみせた。生々しいバンド感を前面に押し出したパフォーマンスもインパクト十分。また、イベント中盤の時間帯に出演したことからは“ミスチルもこのイベントの一部に過ぎない”という意図が感じられた。静岡県・つま恋の野外広場で行われていた過去のap bank fesでは常にヘッドライナーをつとめていたことを考えると、そのポジションの違いは明らかだろう。

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Mr.Children (c)Reborn-Art Festival

 三宅洋平率いる(仮)ALBATRUS、先鋭的なポップミュージックを追求するAPOGEE、日本のダブミュージックの新たな担い手“あらかじめ決められた恋人たち”など、オルタナティブな手触りを持つバンドが参加したことも、このフェスの多彩ぶりにつながっていたと思う。イベントのラストを飾ったOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのステージでは、小林、櫻井とのセッションも実現。TOSHI-LOWと櫻井が同じステ—ジで「蘇生」(Mr.Children)を歌う場面は、最後まで会場に残ったオーディエンスの胸に強く刻まれたはずだ。

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OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND、櫻井和寿、小林武史 (c)Reborn-Art Festival

 震災から5年の節目の時期に開催された 『Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016』は、前述の通り、来年夏の本祭『Reborn-Art Festival 2017』へとつながる。東北の風土、文化、に根差しながら、音楽、食、アートを融合させるこの壮大なプロジェクトは、音楽フェスの新たな方向性を示唆するとともに、この国のアートの意義にも一石を投じることになりそうだ。

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(文=森朋之)

 <ライブ写真>
Photography:YOSHIHARU OTA / TAKEHIRO GOTO / TETSUYA YAMAKAWA
 <フェス会場写真>
Photography:YUKIHIDE NAKANO / TOYOKO IWAHASHI / SHOUICHI SUZUKI

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