新生コーネリアスの公開ゲネプロを見たーー大野由美子の加入でパフォーマンスはどう変化?

新生コーネリアス、公開ゲネプロを見た

 実はコーネリアスのゲネプロを見学したのは今回が初めてではない。最初に見たのは『POINT』のツアー"from Nakameguro to Everywhere" の時(2002年)で、場所は今はなき新宿リキッドルームだった(当時のレポ=http://onojima.txt-nifty.com/articles/2007/03/cornerious_from_2290.html)。その時は映像と音楽の完璧なシンクロと、よく練られ構成されたメニューによって作り上げられたファンタジックでドリーミーな世界観の素晴らしさに大感激したものだが、今回のゲネプロでは視覚演出が後景化した分、音楽そのもの、バンド・サウンドそのものの力強さを確認できた。音楽が圧倒的に逞しさと輝きとエネルギーを増して屹立していたのである。と同時に、歳月を経ても古びることのない楽曲の強度も確認できた。

 コーネリアスの複雑に構成された凝りに凝った楽曲は演奏する側にとっても極度の緊張と疲労を強いるものらしく、それは演奏からも伝わってきた。あらきゆうこは「やっと少し慣れてきたけどまだまだ」ともらし、大野由美子は「まだまだ練習しないとダメだわ」と語っている。小山田は「これはリハビリだよ」と笑っていたが、『攻殻機動隊』のサントラ制作、salyu x salyuのプロデュースやライヴ参加、YMOへの客演やMETAFIVEへの参加などコンスタントに活動してきたものの、コーネリアスとしてのライブは久しぶりなだけに、「リハビリ」という言葉は本音であったに違いない。そして彼自身にとっても、自分のバンドで思いきり音を鳴らすことができる喜びと手応えを、緊張感とともに感じたのではないだろうか。

 大野は「あれだけ一杯練習したのに6公演じゃ少ないよね」と漏らしていたが、それは私たちも同じ思いだ。前述のように<CORNELIUS PERFORMS FANTASMA>ツアーの日本での開催予定はないが、これを機にコーネリアスとしての本格活動再開、そして現在制作中のはずの『SENSUOUS』以来のニュー・アルバムを激しく期待したい。

(写真=伊藤まゆみ)

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

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