kōkuaは「プロ集団」の枠を越え「有機的なバンド」となった 柴那典のツアー最終公演レポート

kōkuaは有機的なバンドになった

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屋敷豪太

 続いてはカバー曲を披露するパートだ。屋敷豪太がかつて在籍したSimply Redのヒット曲「Stars」では、スガが作詞した日本語詞を原曲のメロディに忠実な歌い回しで歌う。続いてはダリル・ホール&ジョン・オーツ「Every Time You Go Away」を披露、ブルー・アイド・ソウルの名曲で落ち着いたムードを作り上げる。

 さらには、楽屋に花が届いていたという井上陽水の70年代の名曲「青空、ひとりきり」をカバー。ソウル歌謡な演奏に乗せてスガがセクシーな歌声を響かせる。そして圧巻だったのは岡林信康「私たちの望むものは」。アカペラから始まり5人の音が折り重ねっていく展開で、最後には壮大で感動的な空気を生み出していた。

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小倉博和

 終盤はFM802に提供した「Music Train ~春の魔術師~」から再びアッパーな楽曲を続けて披露、本編ラストはアルバム『Progress』のラストトラックでもあった「夢のゴール」へ。

 アンコールを求める歓声に呼ばれて登場したスガは、「このバンドでは『夢』というものを、そして『未来』というものをテーマのひとつにしている」と語る。自分の人生の未来だけじゃなく、子供世代や孫世代にとっての「未来」、逆に両親や祖父母の世代から見た「未来」、そういうものも含めて書いた曲だと、「砂時計」を披露する。そしてラストは、バックに映し出された歌詞と共にもう一度披露した「Progress」だ。

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 5人がステージが去り、客電がつき、スタッフによる退場の誘導が始まった後も、ダブルアンコールを求める拍手と歓声はしばらく止まなかった。そのことも、とても印象的だった。

 9月からはスガ シカオの最新アルバム『THE LAST』の全国ツアーも始まる。「大人のロック」としての円熟味を見せたkōkuaとは対照的に、こちらは「むき出しのスガ シカオ」を見せるエネルギッシュなものになるだろう。

 スガ シカオの、そしてkōkuaの「次」がいよいよ楽しみになるような一夜だった。

(文=柴 那典/写真=岸田哲平)

■kōkua special website
http://www.jvcmusic.co.jp/kokua/

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