コブクロ、フレデリック、ミセス、Anly、菊地成孔ガンダムOST…6月15日発売新譜の注目作は?

Anly『EMERGENCY』(SG)

 沖縄の離島・伊江島出身の19歳のシンガーソングライター、Anlyのメジャー3rdシングル。Superfly、GLIM SPANKYなど、60〜70年代のオールドロックをルーツに持つアーティストは自らの音楽的志向とJ-POPとして成立させることのバランスを考えざるを得ないわけだが、ここまでオーセンティックなロックに振り切ったシングルの表題曲は稀ではないだろうか。サウンドの軸になっているのは藤井謙二(The Birthday)のギター。楽曲の背骨となるギターリフ、昨今のJ-POPではあり得ないほど長尺のソロ(2分18秒から約30秒間続く)を含め、本格的なハードロックとしてのテイストを全面に押し出しているのだ。ビンテージ感に溢れたサウンドを背負いながら、ソウルフル&ダイナミックな声を響かせるAnlyのボーカルも、これまで以上に個性を発揮。歌の上手さをアピールするのではなく、楽曲自体のテイストを増幅させるような表現力の高さは、3曲目に収録された「STAIRWAY TO HEAVEN」のアコースティック・カバーからも十分に感じられる。

Anly「EMERGENCY」

オリジナル・サウンドトラック『機動戦士ガンダム サンダーボルト』/菊地成孔(AL)

 メジャーのJ-POPアーティストが当コラムの基準であり、アニメのサントラは枠外なのだが、このアルバムは2016年におけるもっとも重要な作品のひとつだと思うのでぜひ取り上げたいと思う。菊地成孔による『機動戦士ガンダム サンダーボルト』OST。“仇敵同士の主人公のひとりが戦闘中にジャズを聴いている”という設定に合わせ、アルバム前半は完膚なきまでにフリージャズ。エリック・ドルフィー、ジョージ・ラッセルを想起させる楽曲を梅津和時(クラリネット)、坪口昌恭(Key)などの凄腕ジャズミュージシャンが演奏しているのだが、これが緊張感と残虐性に満ちたアニメの戦闘シーンに驚くほどハマっている。菊地プロデュースのアルバム『Tea Times』でカムバックを果たすピアニスト、大西順子が全面的に参加していることにも注目してほしい。

 もうひとりの主人公は往年のアメリカンポップス好きということで、アルバムの後半にはオールディーズ風のナンバーがずらりと並ぶ(そう、本作はフリージャズとオールディーズのハーフ&ハーフなんです)。メディアではほとんど語られていないが、じつは菊地はオールディーズ・マニアであり、市川愛、坂本愛江といったシンガーをフィーチャーした楽曲には、1950年代のアメリカのポップミュージックへの造詣と愛が溢れまくっている。菊地によるオールディーズがまとめて堪能できる作品は、おそらくこれが最初で最後だろう。

「機動戦士ガンダム サンダーボルト」第1話PV

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる