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柴那典「フェス文化論」 第12回

「山フェス」と「海フェス」どう発展してきた? レジャー文化と音楽カルチャーの関係を読む

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 フェスの現場から音楽シーンの潮流を読み解いていく「フェス文化論」連載。今回は、レジャー文化と音楽カルチャーとの関係性を紐解いていこうと思う。

野外フェスが「行楽」を「アウトドア」にアップデートした

 今の日本の「フェス文化」の起源は『FUJI ROCK FESTIVAL』にある。そのことは間違いないだろう。97年の初開催から20年。それは、日本に数多くの野外フェスが生まれ、拡大し、各地に根付いていく歩みと重なっている。

 筆者がライター、編集者として音楽メディアで仕事をしてきたのも、だいたいそれくらいの期間になる。なのでこれは実感を持って言えることなのだが、一方でこの20年は、何度も何度も繰り返し「フェスバブルは弾ける」「フェスブームは終わる」と言われ続けてきた期間でもあった。

 00年代は特に、興行的な失敗となってしまったフェスを槍玉に挙げてそう語られることが多かった。その代表が、開催から10年が経った今も語り継がれる、ある意味伝説的なフェスとなった『UDO MUSIC FESTIVAL(2006年)』だろう。筆者はその場に居合わせていたので、ネットの片隅に今も残るその情報がどこまで誇張でどこまで真実かも、そこには書かれていない現場の空気感も、よく覚えている。

 「大人の夏フェス」をコンセプトに、サンタナとキッスをヘッドライナーに迎え、ジェフ・ベックやポール・ロジャースなどの大物を揃えて開催された『UDO MUSIC FESTIVAL』。今思えば、そこにあったのは、日本における野外フェス文化の「断層」だった。

 オーディエンスの中心となった世代は当時の40代だ。青春を過ごしたのは80年代後半から90年代中盤。『FUJI ROCK FESTIVAL』が開催される前のことである。

 現場で目についたのは、レジャーシートによる場所取り。ステージ前方のエリアでもシートを敷いてその上に座り、盛り上がろうと前方に集まる若いオーディエンスに眉をひそめる中高年のグループがいた。今の野外フェスの常識からすると信じられない光景だろう。そして、印象的だったのは使われているのがブルーシート中心だったこと。昔ながらの赤・青・黄の柄のシートも多かったし、ゴザを敷いている人もいた。コンクリートの上にスポーツ新聞を敷いて、サランラップに巻いたおにぎりを食べていた中高年もいた。それは、野外フェスというよりも花見に近いムードだった。

 そして、ちょうど同じ頃、『FUJI ROCK FESTIVAL』の風景も徐々に変わりつつあった。宇野常寛氏が主宰するウェブメディア「PLANETS」に興味深い記事がある。雑誌『Outdoor』(山と渓谷社)を経て数多くのアウトドアメディアに関わってきた滝沢守生氏へのインタビューで、00年代のフジロックとアウトドア業界との関わりが語られている(参考:https://note.mu/wakusei2nd/n/n426451751172)。

 初年度には台風による中止となり、苗場に定着した後も突然の豪雨に見舞われることが珍しくなかった『FUJI ROCK FESTIVAL』では、参加者の準備意識を高めるために、主催者側からアウトドア業界への働きかけがあった。一方、アウトドア業界もそこにマーケットを見出し、2004年頃からメーカーが本格的に動き出したという。

 結果、お洒落で高機能なレインウェアや小型で軽量なテントなど、進化したグッズやギアがフェスの参加者に行き渡るようになった。装備が揃えば、フェスだけに飽き足らずキャンプやBBQのような野外アクティビティを楽しむ人も増える。00年代後半以降、野外フェスが呼び水になってアウトドア市場が広がっていったと滝沢氏は見ている。

 先日は「最近の小学校の運動会はフェス化してきてびびる」と写真を投稿したお笑い芸人ザ・ギース尾関高文のツイート(https://twitter.com/geeseojeck/status/733819975866056705?ref_src=twsrc%5Etfw)が話題を呼んだ。

 これも、こうした状況の変化を示す一例だ。

 だが、正確に言うと「運動会がフェス化してきた」わけではない。むしろ逆で、フェス文化とアウトドア市場の拡大が音楽ファン以外にも浸透し、運動会のような場所においても「野外での過ごし方」の常識が変わってきた、ということをこのツイートは示している。重ねて言うと、今の小学生の親世代、つまり30代後半から40代前半は、まさに“フジロック以降の時代”に20代を過ごしてきた世代にあたる。

 こうした2006年と2016年の状況を重ねあわせて見えてくるのは、いわば、野外フェスが日本のレジャー文化を「行楽」から「アウトドア」へとアップデートしていったこの10年間の変化なのである。

      

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