『アイドル楽曲ディスクガイド』ライター陣が語る、約40年間のアイドル史を網羅した理由
dues新宿で1月31日、『ブクドル・ユニオン』の第4回が開催された。
同イベントは、ディスクユニオンが運営する書店・ブックユニオンによるライブ・トークイベントシリーズ。アイドル専門ライターの岡島紳士氏をディレクターに迎え、アイドルや音楽、本と関連した企画を展開している。今回は、『アイドル楽曲大賞』及び『ハロプロ楽曲大賞』を主催するピロスエ氏が企画・編集・選盤を手掛け、2014年2月に発売した『アイドル楽曲ディスクガイド』を題材にイベントが進行。ピロスエ氏、岡島氏に加え、『僕たちとアイドルの時代』『キャラの思考法』などの著者であるさやわか氏、歌謡曲のオフィシャルMIX CD『ヤバ歌謡』シリーズを手掛けるDJフクタケ氏の計4名が登壇した。
イベント冒頭、ピロスエ氏が『アイドル楽曲ディスクガイド』について「1971年から2013年までの中から選盤したシングル850枚、アルバム100枚の全950タイトルをライター20名が参加して制作しました」と説明。続けて「今の2010年代はアイドルブームと言われていますけど、アイドル文化というのはそのずっと前からあって。それを一冊にまとめるっていうこと自体が意義があって面白いんじゃないかというのがそもそもの発想でした」と、同著のコンセプトと制作の発端を明かした。
また、ピロスエ氏は「単純に、1971年から2013年までの約40年間のスパンを一冊にまとめるのは、他の人はあまりやろうとは思わないだろうし、途方もないし、面倒くさい。そこをあえてやるのが面白いと感じた」と語ると、岡島氏が「ピロスエさんはアイドルファンの中で『データ至上主義の権化』みたいなところがありますよね」と前置きし、続けて「『アイドル楽曲大賞』と『ハロプロアイドル楽曲大賞』の主催者でもあって、あの膨大なノミネートリストを全て一人で作ってる。『なんでそんなことが出来るんですか?』って聞いたら『やってればそのうち終わるよ』って言われた」と述べ、会場からは笑いが起こった。
同著は70年代前半、後半と各年代の10年間を5年間区切りで構成しているが、ピロスエ氏はその理由について「やはり過去を言及するときには、10年区切りのディケイドだったり、『○○年代前半』『後半』というふうに5年区切りで人は考える。そのように参照しやすくするための構成ですね。基本的にディスクレビュー本なので気になった盤だけ拾い読みすることも可能ですが、最初から通読していっても、行間というか、盤と盤の間から浮かび上がってくる文脈があるはずなので、そこも楽しんで欲しいです」と読み解くうえでのポイントを述べた。
また、ピロスエ氏は「レビューを書く上でライターさんに、『調べる手間を惜しまずに書いて欲しい』と頼んだ」とコメントし、続けて「スキルのあるライターさんなら手癖で書けちゃう人もいるけれど、そのようなレビューばかりというのは避けたかった。基本的なことを書いてもらうことで、それが集積していくと読み応えのある一冊になるんじゃないかなと」と、データを重視した編集方針で制作したことを話した。
ライターとして同著に携わったさやわか氏は「AKB48とか、ももクロ(ももいろクローバーZ)なんかについて書きました。あとWinkも書くのが楽しかったですよ。和製ユーロビートの流れとどう繋がっているのかが書けてよかった」と執筆当時を振り返りながら話し、続けて「そういうのは調べれば分かることなんだけど、最近はみんな調べないからアイドル史の点と点を繋げない。でも、それを繋げる楽しみがあった」とコメント。同じくライターとしてレビューに関わったDJフクタケ氏は、レビューしたアイドルについて「80年代のアイドル一部と本田美奈子とかおニャン子クラブ派生の一部、乙女塾の辺りを書いてますね。楽曲派といわれる人に向けて、音楽的な流れで楽しめるものにするという点は意識した」と明かした。