GRAPEVINEが明かす、楽曲制作の現場で起きていること「良いメロを普通に仕上げるやり方は求めていない」

GRAPEVINEが求めるバンドサウンド

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「自分色しかないのが、いいと思えない」(田中和将)

ーーGRAPEVINEは歌ものの音楽って意識はあるんですか?

西川:う〜〜〜〜ん…

田中:こだわってはいないですけどね、もはや。でもインストをやろうってわけでもないですね。

ーー田中さんの歌が中心にあることが前提で曲を作ってるわけではない?

田中:前提は前提じゃないですか?自分たちが好んで聞いているものもそうだと思うので。

西川:でもこだわりはもう、そんなにないかもしれない。ずっとインストで、最後にちょっと歌が出てくるような曲でも大丈夫かもしれない。

田中:うん。

ーー「大丈夫」って?

西川:「こんなの曲じゃない」とは言わないと思うんですね、誰も。4分間インストで最後の1分だけ歌った曲でも、GRAPEVINEの音楽として成り立つと思う、もはや。

田中:うんうん。

西川:そういう意味で「歌もの」ではないかもしれない。

田中:もちろん良いメロの良い曲は大好きですから、いわゆる歌ものもやるし。

ーーセッションで作った曲のメロディってどうやってつけるんですか?

田中:僕がジャム・セッション内でなんとなく歌ったものを、あとでちゃんとしていく感じですかね。

亀井:このフレーズは良かったな、みたいな感じで拾って。

田中:歌も同じですよ。その拾ったフレーズを元に広げていって、ちゃんと歌っぽくしていくという。

ーーじゃあよくあるような、ギターを弾き語りしながら作っていくような作り方ではまったくない。

田中:してないですねえ。

西川:断片的なものを拾っていってますね。

田中:むしろ断片と断片をつなぎ合わせて面白いと思えないと、なかなか先に進まないですね。

ーーポスト・ロック系のバンドみたいな作り方ですね。

田中:やり方は完全にポスト・ロックなんじゃないですかね。

ーーシンガー・ソングライター的な作り方ではない。

田中:もちろんシンガー・ソングライター的なものも大好きなんですけどね。でも、ヴォーカリストがそんな感じで曲を作ってこないですからね(笑)。

ーーなぜそういう作り方をしなくなっちゃったんですか?

田中:なんかね、自分色しかないのが、いいと思えないんですよね。面白いと思えない。

ーー自分色に染めたいと思う人も一杯いるでしょうけど。

田中:むしろ多いでしょうね。ワンマン・バンド的な。でも僕はそういうのじゃあんま面白くないんですよ。

ーーいつごろからですか?

田中:近年はずっとそういう感じです。自分の中でいろいろ矛盾があるんですよね。歌ものも大好きだし、良いメロの良い曲ももちろん大好きなんですけど、それを普通に仕上げるやり方は求めていない。

ーーつまり音楽の形態というより、作り方にこだわりがあるってことですかね。

田中:そうかもしれません。

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「こういうスタンスの作り方で一石を投じられればいい」(田中和将)

ーーご自分の強みってなんだと思いますか。

田中:なんでしょうねえ。それなりにいろんな音楽を聞いてきて、それなりにいろいろ対応できる感じとか、ですかね。

ーーGRAPEVINEの強みってなんでしょう。

西川:うーん…いくつかあると思うんですけど…悪ノリを楽しめるとこだと思うんですよね。その…あまりこんな感じで(視野が狭い仕草)音楽に向かってないというか。もっと面白がって悪ノリを楽しめる。そういう盛り上がりをするレコーディングが多い。

ーー決めごとにとらわれない。

西川:うん。あまり熱いことを言う人もいなくて。「そんなのダメだよ」って(頭から否定するようなことを)言う人もいない。禁じ手みたいなものがなくて、なんでも面白がってやっていける。それが強みじゃないですかね。たぶん一人のシンガー・ソングライターの人が中心にいるような現場は、そういう風にはならないんじゃないかな。その人のイメージがはっきりしてて、それをみんなで探し求めていく、みたいな。ちょっと窮屈そうな気がする。

ーーGRAPEVINEみたいな歌もののバンドは、歌がどっしり中心にあって、ほかのメンバーはそれをバックアップする、という意識でやってるバンドが多いと思いますけど。

田中:そうですね。

西川:歌が真ん中にあるのが前提ですけど、すべてをバックアップしてるかっていうと、そんなことは全然ないですね。相当歌いにくいだろうなと思って作ってる場合もあるし。

田中:今回のアルバムもそういう部分あるしね。

西川:こんなことやったら、たぶん普通のヴォーカリストだったら怒るだろうなって思うようなことも。あとで歌をずらしたりとかね。「こっちの方が気持ち悪いから」って。自分のタイム感じゃないところに歌をずらされて、普通なら怒ると思うけど。うちのバンドだから許されるのかなと。

ーー気持ち悪くなるようにずらす?

西川:その場合は、気持ち悪いのが欲しかったから。もっと気持ち悪くしたいから、歌をずらす。

田中:そのずらすタイミングを探して。

西川:ちょっとじゃなく、16分音符とか8分音符のタイミングでずらすわけです。全然素っ頓狂なタイム感で歌い出すような形にしたいと。延々気持ち悪いところを探すんですよ。普通怒りますよね、そんなことしたら。

ーーライブが大変そうですね。

田中:大変ですねえ。どうしたらいいのか…迷ってますけど。

ーーでもそういうのが面白いわけでしょ。

田中:面白いですねえ!

ーー(笑)そういうのを面白がれる性格。

田中:それはあるでしょうね。あとはそういう音楽の聴き方をしてきたから。

ーーそうして曲を仕上げていって。歌詞は一番最後ですか?

田中:そうですね。基本的には曲を作りながら自分が頭に思い浮かべるストーリーや映像みたいなものをとっかかりにします。できあがって結果的には共通する気分みたいなものはあるなと思いますけど、書いてる時は、できるだけ手癖にならないようにと思いながらやってましたね。

ーー歌詞を拝見すると、いわゆる手垢にまみれたような定型表現がほとんどないですね。それはいつものことですが、すごく吟味された歌詞という印象です。

田中:お決まりの文句はたまにしか使わない方が、お決まりの文句が強力になるんですよね。

ーー歌詞はどの段階でメンバーに見せるんですか。

田中:完成してからですね。歌入れの日に初めて披露する。

ーーこういう歌詞がつくなら、こういう風にプレイすれば良かった、みたいに思うことはありませんか。

西川:むしろプレイに合わせて歌詞を書いてるところがあるんで。曲として歌詞がつくことで世界観ができあがってる。

田中:歌詞を書く側からすると、曲とかプレイの方がストーリーを感じてるんで。歌詞を独立した読み物ととられるのは困るんですよね。楽曲のうちの一要素というか。歌がなくてもストーリーがあるものに、歌を入れるわけですから。ストーリーの一要素としてあればいいんじゃないかと、いつも考えてます。

ーー歌詞は曲の世界観を構成する、ひとつのピースであると。

田中:そうですね。

西川:歌詞が乗ることで世界観がはっきりしますよね。フォーカスされるというか。でもストーリー自体は、楽曲が持っているストーリーの方が強いと思います。

ーーそのバランスはバンド初期のころから変わらないわけですか。

田中:弱冠変わってはきてはいると思います。最初のころはもっと、いわゆるJ-POPやJ-ROCK的なものを目指してたと思いますけどね。多少売れようという気持ちもありましたし。

ーー(笑)今はないんですか。

田中:今もないわけじゃないんですけど(笑)、こういうスタンスの作り方で一石を投じられればいいな、ぐらいに思ってますね。売れる売れないというよりは。

ーーJ-POPやJ-ROCKのメインストリームから離れて存在してる感じはありますよね。

西川:ありますね、とっても。曲を作ってる時も思うし、歌詞を読んでもそう思いますね。非常に歌いづらい曲を作ってるなと。

ーーカラオケで歌いづらい(笑)。

田中:(笑)そりゃそうやなっていう。

西川:何回も聞いてるオレでも歌えないのに、普通の人がカラオケで絶対歌われへんなって(笑)。それってJ-POPやJ-ROCKから相当離れてますよね。

田中:もともとそういうところはあったと思うんですけどね。

ーーセッションで曲を作るようになって、より自由度が増して独自性が強くなって、容易に真似ができないものになっていった。

西川:別に孤高になろうと思ってやってたわけじゃないですけど(笑)。

(取材・文=小野島大/写真=竹内洋平)

■リリース情報
『BABEL, BABEL』
発売:2016年2月3日
【初回盤】(CD+DVD)¥4,000(税抜)
【通常盤】(CD)¥3,000(税抜)
<CD>
01.EAST OF THE SUN
02.Golden Dawn
03.SPF
04.Heavenly
05.BABEL
06.EVIL EYE
07.Faithful
08.Scarlet A
09.HESO
10.UNOMI
11.TOKAKU

■ライブ情報
「SOMETHING SPECIAL」
2月18日(木)東京・恵比寿LIQUIDROOM
GRAPEVINE×Schroeder-Headz
[Live Painting&Visual Effects]近藤康平・土井昌徳(HERE.)
2月19日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
GRAPEVINE×Suchmos
2月27日(土)大阪・梅田CLUB QUATTRO
GRAPEVINE×Suchmos

「GRAPEVINE tour 2016」
4月1日(金)東京・赤坂BLITZ
4月3日(日)新潟LOTS
4月9日(土)鹿児島CAPARVO HALL
4月10日(日)熊本B.9 V1
4月16日(土)兵庫・Kobe SLOPE
4月17日(日)静岡・Live House 浜松窓枠
4月23日(土)岡山YEBISU YA PRO
4月24日(日)香川・高松DIME
5月7日(土)神奈川・横浜Bay Hall
5月13日(金)長野CLUB JUNK BOX
5月14日(土)石川・金沢EIGHT HALL
5月22日(日)北海道・札幌ペニーレーン24
5月28日(土)広島クラブクアトロ
5月29日(日)福岡DRUM LOGOS
6月4日(土)岩手・盛岡Club Change WAVE
6月5日(日)宮城・仙台Rensa
6月11日(土)大阪・なんばHatch
6月12日(日)愛知・名古屋ダイアモンドホール
6月19日(日)東京・Zepp DiverCity

■GRAPEVINEオフィシャルHP
http://www.grapevineonline.jp/

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