「ロックバンド」と「お茶の間」は地続きに? レジーが“フェスから紅白へ”という新潮流を分析

Mステに見る「ロックバンド」と「お茶の間」の関係

 凛として時雨、MAN WITH A MISSION、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女。、the telephones、KANA-BOON、OKAMOTO’S、UNISON SQUARE GARDEN、[Alexandros]、Ken Yokoyama、キュウソネコカミ、9mm Parabellum Bullet、サカナクション、ザ・クロマニヨンズ、SHISHAMO。

 どこかのフェスの出演者発表のような並びだが、ここにずらっと挙げたのは「2015年の『ミュージックステーション』(以下Mステ)に出演したロックバンド」である。どちらかというとテレビよりは音楽雑誌の誌面上やライブハウスのステージが似合うこの手のアクトは近年少しずつMステに出演するようになってきていたが、2015年にその傾向はますます加速した。

 こういうタイプのバンドがMステに出演する日のツイッターはなかなか面白い。自分の好きな日本のバンドをプロフィールに多数記載しているアカウント(アカウント名には@と今後行くライブの情報が付与されていることもある)が「○○(その日出演するアーティスト)待機」というツイートを発し、ときにはそのバンドの前に出演するアイドルグループへの悪態をつく。お目当てのバンドの出番が終わると絶賛のツイートが呟かれ、感想と合わせてその日の画面のキャプチャがシェアされる。

 見たいバンドのために興味のないアクトにも耐え、ライブの感想を見た人の間で共有する。これはまさに、フェスに足を運んでいる人の行動パターンとして見受けられるものの一つである(好きなバンド以外に関心がないのも今どき感がある)。家でひとりテレビを見ていたとしても、ツイッターを筆頭とするSNSのおかげで「大勢でのライブ参戦」を疑似的に体験できるようになった。

 なぜMステは2015年になってロックバンドの出演により力をいれるようになったか。ここからは推測の域を出ないが、番組の作り手としても「同じようなタイプのグループのローテーションだけではバラエティ感を出せない」という気持ちが前提としてはあるはずである。それに加えて、「CDシングルのランキングは握手券の人気がわかるだけ」「結局何が売れている音楽なのかわからない」という世間の声に対して、日本を代表する音楽番組として答えを提示したいというプライドのようなものもあるのではないかと思う。ロックバンドの紹介VTRで「フェスで入場規制!」という表現を多用するのも、「この人たちはCDの売り上げとは異なる指標で人気があります」ということをわかりやすく示せるからだろう。

 出演するバンドサイドについては、「サカナクション以降」というタームが存在しているように思える。「メディア戦略もバンド活動の一環」というコンセプトでMステにも登場して間口を広げた彼らは、2013年には『NHK紅白歌合戦』(以下紅白)に出演するなど大きな成果を収めた。このあたりから、テレビは「バカにするもの、嫌がるもの」ではなくて「自分たちの影響力を行使するためにうまく活用するべきもの」というように認識が変わってきた印象がある。特に2015年にはこれまで「地上波には出ない」ことを(実質的に)公言していたKen Yokoyamaが「ロックバンドのかっこ良さを伝えたい」というモチベーションのもとにMステに出演するという大きな出来事もあったわけで、2016年以降もこの流れはしばらく続くのはないかと思う。

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