1stアルバム『記憶の中と三秒の選択』インタビュー
ユビキタスが選択した、バンドが歩んでいく道「やっとここから新しい挑戦ができる」
「『もっとこうしたい、ああしたい』という気持ちがすごくある」(ヤスキ)
ーーサウンド的に、ハッとするようなアレンジがありますよね。
ヤスキ:はい、「キャッチする選択」「奇跡は僕の街で」とかは、僕らならではの遊び心ですね。僕はいろんなことがしたいタイプなんで、途中でレゲエっぽいフレーズを入れたり、ラウドにしたり、変拍子にしたり、要所要所にそういうのがあったほうがフックになってライブで映えるんじゃないかと思いまして。
ーーただ、そうした中でも、あくまで歌が中心というのはブレてないですよね。
ヤスキ:そうですね。気がつくとそこに帰ってきてるというか。ただ、昔は物語がない歌詞を書くのができてたんですけど、最近はちょっと苦手というか……気がつくと自分でも考えさせられるような歌詞になってますね。今回の作品は、自分を奮い立たせるような言葉があるし、あとは、今まではいろんな捉え方ができるように表現してたんですけど、今回は聴く人ひとりひとりと対話してるような曲がほとんどで……そこはすごく変化があったなって自分では感じてるんですけど。
ーーそこは自覚してるんですね。それはどんな変化なのか、自覚してます?
ヤスキ:曲の中の<君>はメンバーだったり、あとはもちろんお客さんを思うこともあるんですけど。今回は、たとえば音楽の神様に向かってたりして、目に見えないものを追いかけてたりするように、ちょっと変わってきました。あとは、今までは<愛>とか<恋>とか<好き>とか全然使わなかったのに、今回すごい使ってますね。
ーーそう、ラブソングが多いですよね。それはなぜなんでしょうか?
ヤスキ:何でなんでしょう(笑)……僕は、音楽は、楽曲として完璧であればいいって思っていて、だから3年前の自分はあったかみがないというか、人が聴いてくれるものなのに、それに対する感情がすごくドライやったんですよ。でもこのふたりと一緒にやることで、そこじゃない部分をいろいろ見せてもらえたというか。人間味のあるメンバーなので、そういうのに触れてきて、気がつくと、恋愛詞になってたりするんです。もしかしたら、自分が興味を持たれたくなってるのかもしれない。もっと気を惹きたい、というか。それがこういう言葉の使い方になっていますね。
ーーただ、ラブソングの形態でも、「この先どうしようか」「これでいいのか」とか、葛藤が見える曲が多いですね。あともうひとつ、アルバム・タイトルにある<選択>ですよね。何をどう選んで生きるのか、どう決断するのか、という気持ちが出てると思います。
ヤスキ:ああ……そうですね。『記憶の中と三秒の選択』というタイトルも、<記憶>が過去、<選択>がこれから僕らが歩んでいく道、みたいな意味でつけたんですけど。迷ってるというか……やっと初のフルアルバムですけど、まだこれから切り開いていかないといけないし……という部分ですよね。選択という言葉、この頃よく使ってるよね?
ニケ:うん、使ってる。
ヤスキ:「とりあえず、これでいいや」ってとりあえず思えることが、つねにないんですよ。貪欲というか、「もっとこうしたい、ああしたい」という気持ちがすごくあるので。だから「やっとここから新しい挑戦ができるかな」という作品ですね。
ーーイライラしてる気持ちも出てますね。「キャッチする選択」とか。
ヤスキ:これは完全にバンドに向けてというか、自分にムチ打つ曲を書いたんです。最後のほうの<期待が膨れてるんだ/失速して終われないんだ>とかは、完全に今、自分らの置かれてる状況とダブらせて書いた歌詞だったりします。ちょうど今回の曲がまだ全然できてない時に制作した楽曲なんで、「この曲からまた新しく爆発力出さなあかんで」っていうのを自分に言うかのように書いたんです。でもこういうふうに思ってる人、世の中にいっぱいいるんだなって思いましたね。これはシングル(「透明人間」)のカップリングでリリースしたんで、これを聴いたお客さんがツイッターとかから「すごくわかります」って声をくれたりしてますし。アップテンポなんですけど、「叱られてる気持ちになりました、ありがとうございます」「明日から頑張ろうと思います」とか(笑)。それが今回のアルバムの起爆剤になりましたね。でも曲がなかなかできなかったですね。イライラしてました。何でや? 何でできへんのやろ?っていう葛藤がすごくて。
ーー何でできなかったんだと思います?
ヤスキ:うーん、迷ってたんちゃいますか?(笑) あと、結成当初に比べて言葉をすごく選ぶようになったので、これでいいのか?と何回も書き直して、それでもできないことが続いたんですよ。その時期、納得いくライブができてなかったのかもしれないし……自分にうまく歯車が合わなくて。何してもしっくり来なかった時期です。
ーー「リフレイン」でも<いつも足りない>と唄ってますよね。全体的に「ここから何か手がかりをつかんで突破したい」という感覚が強いアルバムだと思うんです。
ヤスキ:あ、「リフレイン」は、ややこしいけど、言葉をリフレインしたかったんですよね。ライブメインで作りたい楽曲だったので、「もっとくれよ!」っていうイメージがすごくあって。それで<いつも足りない足りないよ>って唄ってるんです。
ーーああ、煽りの要素もあったんですね。じゃあ「ガタンゴトン」は?
ヤスキ:これは結成前からあった曲で、言葉も変わったんですけど。僕、電車があまり好きじゃなくて乗ってなかったんですけど、たまに乗った時に、疑似恋愛をイメージしたらどうなるんかな? こういうので出会いがあるのかな、と思って作ってみたんです。そういう曲ですね。
ーー<踏み出すか/踏み出さないか>というのは、そういうことなんですね。
ヤスキ:え? ああ、たしかに(笑)。でも……ここは今回変えた歌詞ですね。このあたりの何行かは、丸々変えてますね。
ニケ:ほんまや。昔送ってきたのとは違うもんな。
ヤスキ:書き換えた歌詞なんですよね。すごいですね……全部つながってますね。