Real Sound×LINE MUSIC特別企画対談
SKY-HI×猪又孝、LINE MUSICとプレイリストの重要性を語る「ユーザーは"入口"がすべて」
<プレイリストがもたらす利点 音楽の"シェア"は新たな音楽の"通知">
日高:サブスクが一般的になればなるほど、音楽の楽しみ方のひとつに"プレイリスト"が加わるのは間違いなくて、僕も実際リスナーとしては、気になる選曲者や、信頼している選曲者のプレイリストはチェックします。その人のセンスに身を委ね、そこから何か発見する喜び。ミックスCDを聴いている感覚に近いかもしれませんね。
プレイヤーとしては、アルバムとしての完成度を考えながら、選曲者が作るプレイリストにも順応できる曲を作っていきたい、って考えるようになりますよね。
猪又:例えば、アルバムに12曲収録されるとしたら、12色のカラーがあるような作品、ということ?
日高:これからの時代は、CDやダウンロードもそうだけど、配信サービスも大きなチャンスになっていく。サブスクの可能性を踏まえた上での曲の作り方、というのも模索していかないといけないと思うんですよ。
猪又:そこまで考えて音楽を制作するのは大変だよね。純粋に"いい曲を作る"という大前提に加えて、売り方や届け方、聴かれ方まで考えなくちゃいけない時代、ってことだもんね。
日高:でも、逆に幸せとも感じますよ。そこまで突き詰められるというか、音楽も時代と共に変化してきているな、って感じるし。
猪又:逆転の思考法だ。聴き手のリアクションを想定せず、自分の世界を構築して、それを理解してもらうことが美学というアーティストもいると思うけど、CDの売り上げの衰退と共にSNSが発達して、音楽の作り方に大きな変化が表れたっていう。
日高:僕は聴き手への意識というのは、強烈にあるんですよ。友達界隈だけにかっこいいと思われる音楽を作るのであれば、趣味でやればいいし、聴き手への"届け方"はアーティストによってさまざまであって構わないと思うし。って、この話を続けるとサブスクから脱線していっちゃいますね(笑)。
猪又:では話を戻して、日高くんはサブスクをどう活用しているの? ちなみに僕はラジオ的な聴き方が多くて、ほかにも「あのアーティストの楽曲はどのアルバムに入ってたっけ?」「歌詞はどんな内容を歌っていたかな?」とか、仕事で使うことも多い。
日高:僕もプレイリストを頼りにラジオ的な感覚で聴くことが多いです。テーマを知った上で知らない曲が流れてくると、すぐ気になっちゃいますから。
猪又:逆にLINE MUSICの使い勝手に不服はある?
日高:いきなり不服を申せと(笑)。
猪又:各サブスクのサービスの問題だから仕方ないかもしれないけど、「このアルバムの楽曲はあるのに、あのアルバムがごっそり抜けてる」というのはあるよね。もちろん、ゆくゆくは解消される部分かと思うけど。
日高:サブスクが時代を牽引するサービスになっていくかもしれない一方で、「一曲でメイクマネーしたい」という人には向かないサービスかもしれない、ということですかね。そこで火がついて、いろんなメディアで話題になれば話は変わってくるので、チャンスにはつながる可能性は十二分にあると思いますけどね。
猪又:すると、すべてのサブスクのサービス条件が一緒だった場合、何が優れていたら、よりユーザーにとっては使い勝手がいいと感じると思う?
日高:やはりコンテンツ性でしょうね。他社になってしまうけど、アップルのRadioは魅力を感じます。さっき話した信頼できる選曲者同様、「このコンテンツを信じていれば、より音楽を楽しめる・好きになれる」という感覚ですかね。
猪又:僕は"検索性"と"シミラー・アーティスト"機能が向上すれば、より楽しめると思う。amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」は、あくまで予想の範囲内だけど、サブスクのシミラー・アーティストに至っては、予想外の楽曲も適度に選んでくれたら、新しい発見につながることもあるだろうし。
日高:"注目のプレイリスター"が登場する現象も起こりうる時代ですよね。そういう人が出てくれば、信頼して音楽を楽しめる一方で、「なぜこのプレイリスターは、この曲を選ばないんだ!」とかいう論争が起きて活性化につながるかもしれないし(笑)。
猪又:あとは、アーティスト名や曲名だけじゃなく、作詞・作曲・編曲、参加ミュージシャンなど、細かいクレジットにも対応した検索機能に特化してもらえたら......って、もはやそうなると、サブスクは音楽に特化した検索エンジンになるよね。
日高:ユーザーは"入口"がすべてですからね。僕のことをまったく知らないアーティストが、僕の音楽にたどり着くまでは困難な作業だし、そこをつなげられる何かが生まれたら、サブスクはもっと可能性が広がる。YouTubeが当たり前の時代になり、よく「ネット社会が音楽の権威を下げた」とか話題になるけど、僕はそうは思っていない。また、「ネットに音源をあげれば誰かに聴いてもらえる」というのも思い上がりでしかないと思う。YouTubeでPVを見る行為は、少なくともそのアーティストを"検索"してたどり着いてわけだし、それは一種の欲求であって、ネットにアップした音源を聴いてもらうには、どうやってそこまでたどり着かせるかが問題になってくるわけであって。
猪又:そう考えると、LINE MUSICのシェア機能が楽曲への最短経路になるかもしれないけど、僕はこの機能に関して、"シェア"というより、むしろシグナルの一種だと思ってるくらいで。
日高:LINEのアプリの普及率を考えると、"未読一件"が、新しい音楽と出会える可能性の一件、になるわけですもんね。
猪又:しかも生活に溶け込んでいるぶん、そのシグナルも重々しくなく、カジュアルなものに変換されるからね。カジュアルでもうひとつ付け加えるなら、"サブスク"という言葉に、実はちょっとした違和感があって。
日高:と、言いますと?
猪又:「着うた」という言葉って、その文字面からどんなサービスか見当が付いたと思うんだけど、"サブスク"って、いまいちピンとこなくない?
日高:確かに(笑)。音楽業界では当然のように言ってますけど、初めて耳にしたら、どんなサービスなのか、むしろサービスかどうかもわからない言葉かもしれませんよね。
猪又:そう。だから、業界が一致団結して、覚えやすいネーミングを命名することも、今後の課題なんじゃないかと。それによって、親しみやすさにつながることもあると思うしね。
日高:例えば......「歌箱」?
猪又:ちょっとブタ箱っぽいね(笑)。
日高:「歌広場」?
猪又:すでにあるね。
日高:「音広場」?
猪又:広場から離れようか(笑)。
日高:うーん、なかなか難しい問題ですね。......なんか戦略会議みたいになってきましたね。
猪又:著名なアーティストが歌詞に「サブスク」という言葉を使って、その曲が売れたら、サブスクという言葉は一気に根付く可能性は高いよね。
日高:「大声サブスクリプション」みたいな感じでしょうか。いくつかのアーティストは、その火付け役になろうと、すでにチャンスを伺ってるかもしれません(笑)。
(取材・文=リアルサウンド編集部/写真=竹内洋平)
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