モンスターコンピ『IN YA MELLOW TONE』のセールスなぜ安定? 多角的な発信方法を読む
2006年の設立以降、海外アーティストや日本のトラックメーカーを巻き込み、数多くのメロウなHIPHOP作を世に送り出し、リスナーの支持を得てきたGOON TRAX。同レーベルがカタログナンバー10番ごとにリリースするHIPHOPコンピレーション『IN YA MELLOW TONE』シリーズは累計32万枚を突破し、7月25日には最新作『IN YA MELLOW TONE 11』が発売された。
“世界中の無名アーティストを並べて作られたアルバム”としてリリースされている同シリーズだが、“1万枚売れればヒットの時代”に、なぜここまで安定したセールスを記録しているのだろうか。その答えはリスナーへの柔軟な届け方や制作手法にありそうだ。
同シリーズは、現在、株式会社KADOKAWAで映像事業局音楽戦略開発課 シニアマネージャー・A&Rプロデューサーを務める寿福知之氏が旗振り役となり、『myspace』などのサービスで新人を発掘するところからスタート。“日本人の心に響くHIPHOP”を意識してリリースした作品は、iTunesのHIPHOPカテゴリで毎回1位を記録したり、タワーレコードなどの店頭でも多く手に取られ、特に『ヴィレッジ・ヴァンガード』では半数以上である17万枚を記録していることが、5月29日放送のニュース番組『Nスタ』(TBS系)でも明かされている。
また、同シリーズは地方都市の若者にも“お洒落なドライブミュージック”として波及しており、筆者も地方のレコード店勤務時代に、『IN YA MELLOW TONE』が購入されていく様を相当数見届けてきた。同作をきっかけとしてサム・オックが亀田誠治の耳に届いたり、ROBERT DE BORONやre:plusなどもソロ作がコンピを追随するブレイクぶりを見せ、東大生ラッパー・RAqを発掘するなど、キュレーションメディアとしての側面も果たしていることも記憶に新しい。