兵庫慎司「ロックの余談Z」 第2回
奥田民生の新グッズ「老眼鏡(RGM)」が大人気 邦楽ロックファンの高齢化を今だからこそ考える
まあ、こうした高年齢化問題はロックに限ったことではなく、「お笑い芸人とその客」「演劇と客」「タレント全体(ビートたけしも明石家さんまも、タモリでさえ、どかーんと売れたのは今の有吉弘行よりも若い時だ)」はては「俺みたいな音楽とかのライター」にも言えることだし、そもそも日本全体が高齢化しているんだから……ということにもつながるが、そこまで話を広げると収拾がつかなくなるので、掘らずにおきます。
という、「新人バンドのファンも大人」「中高生ロック聴かない、ヘタすると大学生も聴かない」という状況に歯止めがかかったのは2,3年前からだろうか。もっともでかいのはSEKAI NO OWARIのブレイクだが、新世代のバンドたち、クリープハイプ、KANA-BOON、ゲスの極み乙女。、KEYTALK、グッドモーニングアメリカなどの登場により、再び高校生や大学生がライヴハウスに通うようになった(厳密に言うとクリープハイプはもうちょい世代上だし音楽性も違うんだけど、ファンが若いという意味でここではくくらせていただきます)。本当に、このあたりのバンドたちのおかげである。つくづく、足を向けて寝られません。
僕はロッキング・オン社をやめる前の数年間、夏のROCK IN JAPAN FESTIVALと冬のCOUNTDOWN JAPANの会場で、参加者に写真を撮らせてもらって、それをウェブ上にアップする担当だったので(フェスのクイックレポートの中の「AREA REPORT」というコーナーです)、「また平均年齢上がったなあ」「高校生とかいないよなあ」「いても親と一緒だよなあ」ということを、毎年現場でつくづく実感していた。それが2013年の暮れあたりから「あれ? 若返ってないか?」と感じ始め、2014年の夏に「どう見ても若返ってる」と確信し、2014年の暮れには「うわ、これ間違いなく若返った!」と興奮した。
お客さんに「誰と来たの?」と訊きながら写真を撮ってアップする、ということをやっていたのだが、男の子の3人組に声をかけて「同じクラスの友達同士です」「高校生?」「はい、高2です」と言われた時は、本当にうれしかったものです。
なぜそうした新世代のバンドたちは、10代をライヴハウスに呼び戻すことができたのか、について書き始めるとキリがないので、それについてはまたいずれ。
グッズで老眼鏡が売られる、という、かつてなら考えられないこの事実に「日本のロックの高齢化もここまで来たか!」とか言っておもしろがっていられるのは、今がそういう状況になったからです。
このまま上へも下へも、邦楽ロックファンの年齢層が広がり続けることを、切に望みます。
■兵庫慎司
1968年生まれ。1991年株式会社ロッキング・オンに入社、音楽雑誌の編集やライティング、書籍の編集などに関わる。2015年4月にロッキング・オンを退社、フリーライターになる。
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