Berryz工房が紡いできた音楽のグラデーション 全楽曲をジャンル分類で振り返る(前編)
R&B系
<コンテンポラリーR&B>
・あなたなしでは生きてゆけない [2004] ※シングル
・私がすることない程 全部してくれる彼 / 嗣永桃子・菅谷梨沙子 [2007]
・REAL LOVE / 菅谷梨沙子 [2008]
・Ah Merry-go-round / 清水佐紀・嗣永桃子 [2008]
・Shy boy [2012]
・恋愛模様 / 徳永千奈美・須藤茉麻・熊井友理奈・菅谷梨沙子 [2012]
・新しい日々 / 清水佐紀・嗣永桃子・夏焼雅 [2012]
・恋 いとしき季節 / 清水佐紀・夏焼雅・菅谷梨沙子 [2013]
・女の子にしかわかんない丁度があるの [2014]
R&B=リズム・アンド・ブルースは1940年代から続くジャンルだが、ここでは現代音楽チャートの主流である米国産現行R&Bという意味で使っている。中でも「あなたなしでは生きてゆけない」「REAL LOVE」「Shy boy」「女の子にしかわかんない丁度があるの」といったAKIRA編曲担当曲の先鋭さに注目したい。特にデビュー曲でもある「あななし」は、ネプチューンズ・サウンドを援用したかのようなバックトラックと、デビューしたての小・中学生少女たちの歌声が同居。演奏と歌のギャップに面白さを見出すのがアイドルポップスの本質のひとつだとするなら、このデビュー曲の狙いも明確に見えてくる。さらに10年後には、成長した歌声で同曲を聴くことができるという物語性まで加わり、「あななし」はBerryzにとっての最重要曲となった。個人的にも十指に入る。
<ヒップホップ>
・お昼の休憩時間。 [2005]
・図書室待機 [2006] ※カップリング
・友達は友達なんだ! [2010] ※シングル
・ちょっとさみしいな [2010] ※カップリング
・女のプライド [2011]
ヒップホップと言っても、ラップなどのわかりやすく戯画化された曲調のものではなく、ジャンル語源である「弾ける・躍動する」にもとづいた、跳ねたビートを持つ曲、ぐらいの意味でまとめた。「ちょっとさみしいな」「女のプライド」はヒップホップとのつながりも深いゴスペル色が強い楽曲。このカテゴリでの最優秀曲は「友達は友達なんだ!」だろう。個人的にも十指に入る。
<ソウル>
・秘密のウ・タ・ヒ・メ [2005] ※カップリング
・マジ グッドチャンス サマー [2008] ※カップリング
・この指とまれ! / 嗣永桃子・徳永千奈美・須藤茉麻 [2008]
・単純すぎなの私… [2011] ※カップリング
・Mythology 〜愛のアルバム〜 [2012]
・もう、子供じゃない私なのに… [2012] ※カップリング
iTunesのチャートカテゴリでは「R&B/SOUL」と、ひとまとまりにされるほど隣接ジャンルのソウル・ミュージック。本稿では、他の同種曲に比べ「よりエモーショナルな」ぐらいの感覚でまとめた。「イイキョク」と言い換えてもいい。どれも平均点以上。「Mythology 〜愛のアルバム〜」は松井寛編曲による流麗なサルソウル・サウンド。
<ファンク>
・スッペシャル ジェネレ〜ション [2005] ※シングル
・21時までのシンデレラ [2005] ※シングル
・我ら! Berryz仮面 / Berryz仮面 [2007] ※カップリング
・HAPPY! Stand Up [2008]
「ファンク」も定義が難しい。ファンキー度の強い曲を集めたらこの4曲になってしまった。「我ら! Berryz仮面」は特撮ソングのパロディであり、パーカッションの目立ち具合から『アクマイザー3』OP「勝利だ! アクマイザー3」あたりを連想した。「スッペシャル ジェネレ〜ション」は、つんく♂ライナーノーツによれば「日本人が親しみあるリズムをバックトラックに、情熱的に仕上げる」がコンセプトだとあるが、ファンキーな特撮ソングの影響も案外あるのではないだろうか。あるいは輸入ポップスだった時代の日本の歌謡曲テイストか。同曲は「ハロプロ楽曲大賞」2005年度の1位曲で、冒頭のタイトルコールを観客も一緒に行うのがお約束になっているのを含め、Berryzの代表曲のひとつである。
<ディスコ>
・愛のスキスキ指数 上昇中 [2007]
・ジンギスカン [2008] ※シングル
・行け 行け モンキーダンス [2008] ※シングル
・抱きしめて 抱きしめて [2009] ※シングル
・青春バスガイド [2009] ※シングル
・流星ボーイ [2009] ※シングル
・シャイニング パワー [2010] ※シングル
・Because happiness [2012]
・勇気をください! [2012] ※カップリング
「LOVEマシーン」のヒットからこっち、ディスコサウンドはハロプロ楽曲の基幹のひとつとなっている。Berryzでもディスコ濃度の高い曲は多いが、活動のターニングポイントでもあったのが、ディスコクラシックス「ジンギスカン」のカバーだろう。このすぐ次のシングルが「行け 行け モンキーダンス」だった(つんく♂ライナーノーツによれば「LOVEマシーン」と「行けモン」は、どちらもシャ乱Q「ラーメン大好き小池さんの唄」のオマージュシリーズとのこと)。このあたりの文脈が、後の「cha cha SING」、そしてBerryzのポリシーとしてよく言われる「真面目にふざける」精神へとつながっていったのではないだろうか。なお、「流星ボーイ」は「LOVEマシーン」と同じくダンス☆マン編曲による一曲。
<ドゥーワップ>
・笑っちゃおうよ BOYFRIEND [2006] ※シングル
・BOMB BOMB JUMP [2011]
リズミカルなスキャットによる「ドゥーワップ」、この要素が見られるのは以上の2曲。特に「笑っちゃおうよ BOYFRIEND」はポニーテールやスタンドマイクといったビジュアル面にも50sの意匠が施されている。
<モータウン>
・パッション E-CHA E-CHA [2004] ※カップリング
・ありがとう! おともだち。 [2005]
・ガールズタイムス [2011]
・なんだかんだで良い感じ! / 徳永千奈美・須藤茉麻 [2013]
・ロマンスを語って [2014] ※シングル
「モータウン」は元々はレーベル名だが、転じてジャンル名になった。その音楽性の元にはフィル・スペクターが作り上げた「ウォール・オブ・サウンド」がある。また、「ダッダッダーッ、ダッダッダダー」という、いわゆる「モータウン・ビート」も有名。これらの要素が色濃いBerryz楽曲がこの5曲だ。「ありがとう! おともだち。」「ロマンスを語って」のウィンター感ある2曲は続けて聴いて、9年の成長を感じ取りたい。(後編につづく)
■ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主宰。Twitter