寺嶋由芙が初ワンマンで起こした熱狂 “強さ”を秘めたソロアイドルはどこに向かう?

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 私はこの日の「#ゆーふらいと」で、ゆふぃすとが用意した400本の青いサイリウムが一斉に折られることを知っていた。それを知らない寺嶋由芙が、2015年の目標として「泣かないこと」を掲げているのも知っていた。どうなるのだろうか……と見守っていると、寺嶋由芙は涙ぐんだようにも見えたが、しっかりと最後まで歌いきった。少なからぬゆふぃすとは、一時期の寺嶋由芙が「#ゆーふらいと」になると感極まって泣いてしまっていたことを知っているはずだ。その寺嶋由芙が、この節目となるライヴでは「#ゆーふらいと」を歌いあげた。それは頼もしい寺嶋由芙の姿であり、同時に少しだけ寂しさも感じる光景であった。しかし誰もが知っている。同じ場所にはとどまれないことを。

 アンコールが起きると、ゆるキャラとの写真や「#ゆーふらいと」のアニメがスクリーンに映された。そしてアンコールの衣装は「#ゆーふらいと」のときのもの。最初のアンコールはカヴァー2曲で、マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」と岡村靖幸の「だいすき」だった。前者はPandaBoYが編曲したものだ。

 それでもおさまらないアンコールに、Tシャツ姿の寺嶋由芙が登場し、スクリーンに映された全国のゆるキャラからのメッセージ動画を見ていくことになった。ここまではゆるキャラを愛する「ゆるドル」らしい展開だ。

 ゆるキャラの映像が終わった後、寺嶋由芙が発表したのはメジャー・デビューだった。ファンから歓喜の声が湧きあがり渋谷WWWに響いた。しかし、常に最悪の事態を想定して、実現するまでは信用しないのが寺嶋由芙だ。そのため、ユニバーサルミュージックジャパンのEMI RECORDSマネージング・ディレクターの中村卓が映像で改めてメジャー・デビューを発表した。

 寺嶋由芙はメジャー・デビューを実感すると同時に、ゆふぃすとの祝福の声にも安堵したのだろう。バンドメンバーを再び呼び込むと、最後の楽曲としてヤマモトショウ作詞作曲の「ぜんぜん」が演奏された。『Yufu Terashima 1st Solo Live 「#Yufu Flight」』の最後で目にしたのは、これまでの寺嶋由芙のライヴで見たこともなかった熱狂だった。そして2時間45分にも及んだライヴは遂に終わりを迎えた。

 考えてみれば、寺嶋由芙の全曲が披露されたことはこれまで一度もなかったのだ。リミックス音源も、スクリーンに映像が映されている間に「猫になりたい!」の禁断の多数決によるリミックス、「カンパニュラの憂鬱」のアヒト・イナザワによるリミックスが流された。この日、唯一流されなかったのは「#ゆーふらいと」のShiggy Jr.によるリミックスぐらいだろう。

 ここまで、寺嶋由芙に楽曲提供した多数のミュージシャンの名前を書いてきたが、加茂啓太郎のディレクションによる音楽面の積み重ねがこの日のライヴを支えたことは疑いようもない。特に、多数の若手の起用や、シングルのカップリングでの遊び心、そして『好きがはじまる』『好きがはじまる II』という2枚の会場限定盤CDの存在は大きかった。メジャー・デビュー後も、加茂啓太郎が制作を担当することは心強い。

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