「寺嶋由芙」というドキュメンタリー 彼女がステージ復帰後1年でたどり着いた場所とは?

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Photo by 加藤一華

 この1年間ほど、寺嶋由芙というアイドルの活動をドキュメンタリーのように見続けている。それは、所属していたグループを離れて、行くあてのなくなってしまった女の子が、自らつかんだチャンスとともに這いあがっていくドキュメンタリーだ。ときに、苦労を表に出さないストイックなアイドルとしての「寺嶋由芙」と、ひとりの生身の人間としての寺嶋由芙の間の葛藤を想像することもある。しかし、どんな想像をしてもそれを確かめる術はない。

 ひとつだけ言えることは、「寺嶋由芙」というドキュメンタリーを見てきたこの1年間はあっという間に過ぎ去ってしまった、ということだ。特に2014年8月2日の『TOKYO IDOL FESTIVAL 2014』のSKYステージや、9月21日の「おながわ秋刀魚収獲祭2014」で、夏の青空をバックにして歌う寺嶋由芙の姿は忘れられない。自分が立つ場と向かい合うことに関して、彼女は常にプロフェッショナルだ。

 10月11日、渋谷Gladで「ゆっふぃー」こと寺嶋由芙の自主企画ツーマンライヴ「#ゆっふるーむ『フレンズvol.2』」の昼夜公演が開催された。「vol.1」では、寺嶋由芙が「80デニールの恋」をカヴァーしている女性シンガーソングライターのゆり花が「friends」、つまり対バン相手として招かれたが、「Vol.2」に招かれたのはバンドじゃないもん!。彼女たちは9月21日に代官山UNITでのワンマンライヴを大成功させたばかりだ。しかもツーマンライヴ当日は、神聖かまってちゃんのドラムとしても活躍するリーダー、鈴姫みさこの誕生日ということもあり、熱気に包まれることが容易に想像できた。

 寺嶋由芙は2013年にBiSを脱退し、以降はソロアイドルとして活動してきた存在。9月17日に発売されたシングル『ツナガル!カナデル!MUSIC』がオリコン週間シングルランキングで14位になるなど、勢いに乗るバンドじゃないもん!を相手に、ソロアイドルの寺嶋由芙がどう立ち向かうのだろうかと、ある面で心配、そしてある面で期待していた。

 会場に入ると、バンドじゃないもん!のTO(トップヲタ)個人からみさこへ贈られた、猫の形の巨大な花が飾られていて度肝を抜かれた。しかも、ちゃんとみさこの顔と同じ位置にホクロがあるのだ。会場内には、みさこの衣装を着たもんスター(バンドじゃないもん!のヲタの総称)がいるなど、お祭りムードとなっていた。

 昼夜公演とも先攻はバンドじゃないもん!。6人のメンバーのうち、みさこがドラム、望月みゆがベース、甘夏ゆずがショルダーキーボードと、3人が楽器も演奏し、かと思うと楽器から手を離して恋汐りんご、七星ぐみ、天照大桃子と一緒に踊ったりもする。そのステージはかなり複雑な構成なのだが、それでいて見る側にとってはあくまでポップで楽しく、高いレベルで熱量が放たれ続ける。

 バンドじゃないもん!の楽曲はアレンジが随所で変わっており、特に「バンもん!のテーマ」のAメロにはベースラインが追加されており、フロアの盛りあがりを止めない構成に変化していた。みさこ、望月みゆ、甘夏ゆずのそれぞれの楽器のソロパートも。「バンドじゃないもん!」という名称のアイドルながらバンドでもある、というわけのわからなさが現在の彼女たちの大きな魅力になっている。

 4月6日に、甘夏ゆずと天照大桃子の加入が発表されたときは、「テラスハウス」に出演してきた天照大桃子ことちゃんもも◎の経歴ゆえに波紋を呼んだが、彼女をはじめとするバンドじゃないもん!による本気のステージはぜひ生で見てもらいたい。

 夜公演では、みさこの生誕祭も開催されたとのこと。筆者はその時間帯、所用があって残念ながら立ち会うことができなかったが(そして渡邊マネージャーから責められることになった)、感動的なセレモニーだったと伝え聞く。2011年のバンドじゃないもん!結成以来、唯一残るオリジナル・メンバーのみさこが、新しいメンバーのファンとともに祝われることは非常に嬉しい。

 そして後攻は昼夜公演ともに寺嶋由芙。バンドじゃないもん!の熱気の後にどう出てくるのだろうか……と考えていると、彼女はポニーテールスクライムの加藤綾太とともにステージに現れた。昼夜公演ともに冒頭の3曲はアコースティック・ギターをバックにした歌唱で、そのうち1曲ずつはカヴァー曲。昼公演はMr.Childrenの「口笛」。夜公演はスピッツの「楓」だったという。

 ふぇのたすのヤマモトショウが作詞作曲した「contrast」はレア曲とされるぶん、異様な盛りあがりに。セカンド・シングル「カンパニュラの憂鬱」では、ゆふぃすと(寺嶋由芙ファンの総称)によるゆるいサークルモッシュが展開された。一周できるとは限らない、半周であったりもする。そのぐらいのゆるさだ。

 そしてステージを見ながら、「なぜ寺嶋由芙は猫耳と尻尾を付けているのだろう?」と考えていたのは私だけではないはずだ。すると、12月17日にサード・シングル「猫になりたい」がリリースされることが発表された。そのため、寺嶋由芙はステージ上で「許してニャン!」などと言っては恥ずかしがる状況となったが、23歳のアイドルとして試練に立ち向かう姿、しかと見届けた。

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