寺嶋由芙が初ワンマンで起こした熱狂 “強さ”を秘めたソロアイドルはどこに向かう?

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 スクリーンが上がると、フロアに驚きの声が上がった。何の予告もなくステージには女性4人編成のバンドが現れたのだ。ギターに岡愛子(BAND A、BimBamBoom)、ベースになかむらしょーこ、ドラムにU(U sus U)。そしてキーボードは、これまでの寺嶋由芙の全シングル表題曲の作編曲を担当してきたrionos。彼女たちが奏で始めたのは「好きがはじまる」のイントロだった。

 寺嶋由芙がソロアイドルとしてステージに戻ってきたのは、2013年10月22日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催された「アイドル・フィロソフィー Vol.3」だった。あの日、寺嶋由芙が用意できたオリジナル楽曲はわずか4曲。そのステージで最後に歌われたのが、「今度は どこにも 行かないから」という歌詞の「好きがはじまる」だった。あの約1年4ヶ月前のステージがフラッシュバックした瞬間であり、復帰ステージの最後の楽曲が、この日の冒頭で歌われることに深い感慨を覚えた。緊張が声にも出ていた復帰ステージでの寺嶋由芙の姿はもうそこにはなかった。

 バンド演奏のパートは5曲。その最後は「好きがはじまる」を作詞作曲編曲したミナミトモヤが再び楽曲提供した「好きがこぼれる」だった。「ほら みて / わたしは ここにいるでしょ!」。寺嶋由芙はソロとして帰還して、そして約束通りどこへも行かずに、渋谷WWWに立ったのだった。

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 バンド演奏のパートでは「恋人だったの」、スピッツの「楓」のカヴァー、「初恋のシルエット」も披露された。ふぇのたすのヤマモトショウ作詞、rionos作編曲の「恋人だったの」は、往年の角川映画の主題歌を彷彿とさせるかのような80年代歌謡テイスト。延本文音が作詞、倉品翔が作曲、GOOD BYE APRILが編曲した「初恋のシルエット」は、甘くノスタルジックに初恋を歌うギターポップだ。

 寺嶋由芙とバンドがステージを去り、スクリーンが降りる。寺嶋由芙の衣替えの間に最初に流されたのは、2013年12月23日に赤坂元気劇場で開催された初の自主企画『ゆっふぃープレゼンツ「まじめなアイドルたちのクリスマス」』でデビュー・シングルのリリースを発表したときの映像だ。それ以降の日々のさまざまな映像が流されたが、2014年5月3日に山梨で開催された『YAMANASHI FEST’14』で、スピーカー台によじ登って暴風が吹く中で「#ゆーふらいと」を歌う映像は私も初めて見るものだった。この「まじめなアイドル」が不意に見せた無茶な一面もまた「寺嶋由芙」なのだ。

 寺嶋由芙が再び現れ、オリコン週間シングルランキング16位を獲得した「猫になりたい!」からオケによるステージはスタート。西浦謙助作詞、ハジメタル作編曲の「お願いバッカス」、岸田メル作詞、SAWA作曲の「ジュリエットのパラドックス」とポップナンバーが続く。セカンド・シングル「カンパニュラの憂鬱」を初めて聴いたときには、昨今のアイドルポップスの潮流を意図的に無視したラテンEDM歌謡に驚かされたものだ。そしてそのカップリング「80デニールの恋」は、もともとは下北沢のモナレコードで売られていたゆり花のCD「daughters」の収録曲。「ねえいま触ってもいいんだよ」という歌詞が23歳の寺嶋由芙に絶妙にフィットして、しかも不思議と上品である、というミディアム・ナンバーだ。渋谷WWWの最後部から、静かにケチャを送った。

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